滋賀県の信楽高原鉄道が、廃線・廃止になる可能性が高まってきました。
信楽高原鉄道は、2013年の台風18号による被害で橋脚などが流失し、運休が続いています。これについて、地元滋賀県甲賀市の中嶋武嗣市長は、10月2日の定例会見で、「存続そのものを決断しなければならない」と述べました。信楽高原鉄道の廃線も視野に入れた発言です。
中嶋市長は、「大変、残念だが、復旧の見通しがたたない」とした上で、「安全性を考えた場合、80年前に造られた橋脚を全て点検、改修することも必要」と付け加えました。
中嶋市長は9月26日に、太田昭宏国土交通相に信楽高原鉄道の再開支援を要請しています。しかし、鉄道の復旧について、鉄道軌道整備法では事業費を国と自治体が25%、事業主が50%と規定しています。信楽高原鉄道は2013年4月から上下分離方式に移行しており、甲賀市は第3種鉄道事業者になっています。そのため、復旧には、甲賀市は地元自治体として25%、事業主として50%、計75%を負担しなければなりません。国や滋賀県などの支援を得られなければ復旧費用をまかなうのは困難で、中嶋市長の発言はこうした制度上の問題を前提にしたとみられます。
甲賀市によりますと、流失した杣川(そまがわ)鉄橋(延長95.69m)の橋脚1基の被害額は少なく見積もって約3億5000万円。この鉄橋に橋脚は5基あり、点検、改修となると膨大な費用が予想されます。復旧にかかる金額の総計は現時点でははっきりしません。
中嶋市長は「住民が『乗って残そう信楽線』と守ってきた鉄道で、乗るから何とかして、との強い熱意も理解できる。国や県に支援を求め、第一義的には復旧、運行再開の手段を考えたい」として、復旧・運転再開への道を探ります。しかし、その一方で、「費用対効果を視野に入れ、利用者の意向も含め判断したい。詳細な調査結果次第では、鉄道存続について苦しい決断をしないといけない」などと、厳しい見通しも付け加えました。
今後、JR西日本に調査と技術支援を要請する方針で、最終的な決断の時期については、JR西日本の調査が終了してからになりそうです。その時期は不明です。
甲賀市の調査では、信楽高原鉄道の被害は杣川鉄橋の橋脚1本と橋桁2本のほか、線路盤陥没やのり面崩壊、土石流入など24カ所に及びます。鉄橋以外にも復旧へのハードルは高いといえるでしょう。衝突事故をも乗り越えてここまで存続してきた信楽高原鉄道ですが、本当の正念場を迎えています。