北陸新幹線敦賀延伸、事業費増の衝撃。1kmあたり約150億円に

新大阪延伸は大丈夫?

北陸新幹線の金沢~敦賀間の開業が予定の2023年春から1年半程度遅れる見通しとなりました。事業費はさらに約2880億円も膨らむ見通しです。1kmあたり約150億円の事業費となり、今後の新幹線整備にカゲを落とすかもしれません。

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2024年秋に後ろ倒し

北陸新幹線の金沢~敦賀間は、2012年6月に認可されました。当時の開業予定は2026年春でしたが、2015年1月に政府・与党の申し合わせにより3年前倒しされ、2022年度末(2023年春)となっています。

しかし、石川県境の加賀トンネルなどで工事が遅れているほか、入札不調、不落が相次いだため、開業の遅れが懸念されていました。これについて、2020年11月11日に、国土交通省が与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)会合で、開業が1年半遅れるとの見通しを正式に報告しました。新たな開業予定時期は2024年秋ごろとなります。

北陸新幹線W7系

2800億円増

それにともない、建設費も増加。総事業費は現在の見込みよりおよそ2880億円膨らむ見通しです。金沢~敦賀間の建設費は、当初1兆1858億円とされました。ところが、2018年に資材や人件費の高騰などを理由に約2260億円膨らみ、総事業費は1兆4121億円になっています。

さらに2880億円も増えるとなると、当初予定から約5000億円増えて約1兆7000億円になります。同区間の工事延長は約114.6kmなので、1kmあたりの建設費が148億円に達することになります。約150億円です。

北陸新幹線長野~金沢間の総事業費は1兆6988億円(実績値)。工事延長は約231kmなので、1kmあたりの建設費は74億円です。つまり金沢~敦賀間は、長野~金沢間の2倍の建設費がかかることになります。

開業遅れの報道が注目を集めやすいですが、この事業費増も衝撃ではないでしょうか。

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見積もりの甘さ

ちなみに、2012年に作成された国土交通省の「収支採算性及び投資効果に関する詳細資料」によりますと、北陸新幹線金沢~敦賀間の総便益は7601億円です。2019年に作成された北陸新幹線(金沢・敦賀間)事業に関する再評価の「総括表」によりますと、同区間の便益は1兆2294億円です。

いずれにせよ、総事業費が1兆7000億円となると、費用便益比が1を下回る可能性が高く、その場合は鉄道の新規建設基準を下回ることになります。結果論とはいえ、見積もりの甘さを指摘されても仕方がないでしょう。

新大阪延伸は大丈夫?

心配なのは、今回の「結果」が今後の新幹線建設に及ぼす影響です。北陸新幹線は敦賀~新大阪延伸が計画されていますが、総事業費は2兆1000億円と試算されています。1kmあたり約147億円です。

金沢~敦賀間でさえ1kmあたり148億円かかるのに、京都、大阪の大都市を貫く新幹線がそれと同水準の建設単価でできるのかは、大いに疑問でしょう。「資材や人件費の高騰など」が理由なら、新しい物価水準で建設費を再検討する必要がありそうです。

ちなみに、長崎新幹線の鳥栖~武雄温泉間は、フル規格で約6200億円と試算されていて、1kmあたり121億円です。武雄温泉~長崎間は約6197億円で、1kmあたり94億円でしたので、それよりは高く見積もっていますが、この金額で収まるかどうか。佐賀県の費用負担という難題もあるだけに、より慎重な試算が求められそうです。

いずれにしろ、新幹線の建設単価がこれだけ高くなると、今後の整備にもカゲを落としそうです。(鎌倉淳)

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