JR九州の青柳俊彦社長は、2020年7月豪雨で被災し一部区間で不通が続いている久大線について、2020年度内に全線復旧させる方針を明らかにしました。一方で、深刻な被害を受けた肥薩線については、復旧の見通しが立っていないままです。
JR九州が20億円負担
JR久大線は久留米~大分間141.5kmを結ぶ路線です。2020年7月の豪雨で被災し、豊後森~庄内駅間41.3kmで不通が続いています。このうち、由布院~庄内間については、すでに年度内に運転再開する方針が示されていました。
残る豊後森~由布院間では、第二野上川橋梁を流出するなど大きな被害が出ました。このため、JR九州と大分県が復旧方法などについて協議を進めてきましたが、このほど、2020年度内に復旧する方針がまとまり、青柳社長が10月28日の記者会見で明らかにしました。
復旧費用は久大線全体で約20億円を見込み、全額、JR九州が負担するとしています。青柳社長は「大事な路線であり、早くつなげることがJR九州にとっても地元の皆さんにとっても非常に大事。一刻も早く復旧させたい」と述べました。2020年度内ですので、2021年春までに久大線が全線で復旧することになります。
被災した鉄道路線の復旧を補助する改正鉄道軌道整備法の適用については、収入が多いため対象外との認識を示しました。久大線の2019年度の旅客収入は路線全体で約21億円です。同法での補助金適用基準は「復旧に要する費用が対象路線の年間収入以上であること」ですので、今回はギリギリで満たさないようです。
肥薩線は見通し立たず
これで、2020年7月豪雨のJR九州被災路線のうち、肥薩線を除く全線が復旧することになります。その肥薩線ですが、被害が甚大で復旧見通しが立っていません。
背景として、氾濫した球磨川の今後の治水方針が定まっていないため、路線をどう復旧させるか決めることができないという事情があります。青柳社長も、「治水方針が決まらないと復旧費用や方法も決まらない」として、現状で復旧の検討が進んでいないことを明かしました。
治水方針が決まったとしても、肥薩線の復旧工事は路線を作り直すのに近い工事が必要で、少なくとも100億円以上かかるとみられています。年間収入3億円程度の路線ですので、JR九州が単独で負担するには巨額すぎ、地元との調整に相当の時間がかかりそうです。