JR各社が2020年お盆の特急列車の利用状況を発表しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、各列車とも激減となっています。そのなかで、孤軍奮闘をしたのが「サンライズ出雲・瀬戸」です。
JR在来線特急の利用者数の詳細をランキング形式で見ていきましょう。一部快速列車も掲載しました。
お盆の利用状況
JR各社は列車利用状況の統計を「年末年始」「ゴールデンウィーク」「お盆」の3期のみ発表します。当サイトでは、JR各社が発表した「お盆の利用状況」の情報をまとめて、「お盆の在来線特急利用者数」をランキングにまとめてみました。
2020年8月7日~17日の10日間の統計です。
JR在来線特急利用者数ランキング2020年お盆版
順位 | 列車名 | 計測区間 | 利用者数 (万人) |
対前年比 (%) |
GW前年比 (%) |
---|---|---|---|---|---|
1 | あずさ・かいじ・富士回遊 | 八王子~相模湖 | 10.9 | 28 | 6 |
2 | ひたち・ときわ | 我孫子~土浦 | 8.2 | 24 | 7 |
3 | かもめ・みどり等 | 鳥栖~肥前山口 | 7.2 | 26 | 5 |
4 | マリンライナー | 児島~宇多津 | 7.1 | 38 | 12 |
5 | ひたち・ときわ | 土浦~水戸 | 7.0 | 22 | 6 |
6 | サンダーバード | 京都~敦賀 | 6.6 | 26 | 4 |
7 | ソニック等 | 小倉~行橋 | 5.6 | 31 | 5 |
8 | あずさ | 甲府~上諏訪 | 5.3 | 27 | 4 |
9 | カムイ・ライラック・オホーツク・宗谷 | 札幌~岩見沢 | 4.7 | 46 | 11 |
10 | 踊り子・サフィール踊り子 | 横浜~熱海 | 3.9 | 41 | 2 |
11 | ひたち・ときわ | 水戸~高萩 | 3.3 | 24 | 6 |
11 | しおかぜ・南風など | 岡山~児島 | 3.3 | 24 | 5 |
13 | 北斗、すずらん | 東室蘭~苫小牧 | 3.0 | 40 | 6 |
14 | くろしお | 和歌山~簑島 | 2.9 | 39 | 5 |
15 | わかしお | 東京~蘇我? | 2.7 | 43 | 13 |
16 | しおかぜ・いしづち | 多度津~伊予三島 | 2.4 | 29 | 8 |
17 | きのさき・まいづる | 二条~亀山 | 2.2 | 34 | 5 |
17 | しなの | 名古屋~多治見 | 2.2 | 24 | 5 |
19 | しらさぎ | 米原~敦賀 | 2.0 | 21 | 5 |
20 | ひたち・ときわ | 高萩~いわき | 1.9 | 30 | 8 |
20 | しおかぜ | 児島~宇多津 | 1.9 | 23 | 6 |
20 | おおぞら・とかち | 南千歳~トマム | 1.9 | 54 | 9 |
23 | しなの | 松本~長野 | 1.7 | 31 | 8 |
24 | こうのとり | 大阪~三田 | 1.6 | 46 | 10 |
25 | しおさい | 東京~千葉? | 1.5 | 40 | 14 |
25 | 宇和海 | 松山~宇和島 | 1.5 | 48 | 15 |
27 | やくも | 岡山~新見 | 1.4 | 24 | 6 |
27 | 南風・しまんと | 多度津~阿波池田 | 1.4 | 33 | 8 |
27 | 南風 | 児島~宇多津 | 1.4 | 30 | 8 |
30 | やくも | 岡山~新見 | 1.2 | 22 | 6 |
31 | うずしお | 高松~徳島 | 1.1 | 42 | 17 |
32 | いなほ | 新潟~村上 | 0.9 | 17 | 5 |
33 | しまんと・あしずり | 高知~窪川 | 0.7 | 50 | 10 |
33 | ひだ | 美濃太田~下呂 | 0.7 | 16 | 2 |
35 | スーパーはくと | 姫路~上郡 | 0.6 | 21 | — |
35 | ひたち・ときわ | いわき~原ノ町 | 0.6 | — | — |
35 | さざなみ | 東京~蘇我? | 0.6 | 47 | 8 |
35 | 草津 | 高崎~渋川 | 0.6 | 35 | 2 |
35 | しらさぎ | 名古屋~大垣 | 0.6 | 22 | 5 |
40 | スーパーはくと | 智頭~鳥取 | 0.5 | 19 | 3 |
40 | 日光・きぬがわ等 | 大宮~栗橋 | 0.5 | 32 | 2 |
40 | はるか | 日根野~関西空港 | 0.5 | 5 | — |
40 | ひたち・ときわ | 原ノ町~仙台 | 0.5 | — | |
40 | サンライズ出雲・瀬戸 | 静岡~浜松 | 0.5 | 82 | 12 |
40 | ふじがわ | 富士~富士宮 | 0.5 | 36 | 7 |
46 | 成田エクスプレス | 東京~成田空港 | 0.4 | 2 | 1 |
46 | しらゆき | 直江津~長岡 | 0.4 | 34 | 8 |
48 | はまかぜ | 姫路~寺前 | 0.3 | 42 | 5 |
48 | 南紀 | 松阪~紀伊長島 | 0.3 | 22 | 7 |
48 | ふじさん | 御殿場~山北 | 0.3 | 39 | 2 |
51 | つがる | 弘前~青森 | 0.2 | 26 | 4 |
51 | リゾートしらかみ | 秋田~青森 | 0.2 | 36 | — |
51 | スーパーいなば | 智頭~鳥取 | 0.2 | 25 | 5 |
51 | スーパーおき | 新山口~増田 | 0.2 | 29 | 4 |
51 | いなほ | 酒田~秋田 | 0.2 | 26 | 4 |
51 | スーパーいなば | 上郡~岡山 | 0.2 | 25 | 5 |
57 | サンライズ出雲 | 岡山~新見 | 0.1 | 76 | 13 |
57 | うずしお | 児島~宇多津 | 0.1 | 29 | 12 |
59 | はまかぜ | 岩美~鳥取 | 41人 | 68 | 6 |
60 | 伊那路 | 豊川~本長篠 | 0 | 0 | 8 |
上記のランキングは、JR各社から広報発表された数字をまとめたものです。JR各社によって、区間選定の基準などがばらばらであることをご承知おきください。計測区間が不明の列車の区間については、「?」を付けています。
お盆の対前年比のほか、比較のため2020年ゴールデンウィークの対前年比も掲載しました。ゴールデンウィークとお盆を比較することで、新型コロナウイルス感染症の影響からどの程度回復したかがわかります。JR西日本の一部列車はゴールデンウィークの発表をしていませんので「–」で示しています。
今年は全体に利用者が非常に少ないため、ランキング下位では、百人単位の四捨五入が順位に影響している場合も多いです。四捨五入の単位が発表元の各社・支社により異なることもあり、1万人以下のランキングの細かい順位の違いにあまり意味がない点も、ご留意ください。
なお、「伊那路」は「0」となっていますが、2020年7月豪雨で飯田線の一部区間が運休中のため、運転を取りやめています。
「あずさ、かいじ、富士回遊」が首位
さて、JR各社の利用状況の調査期間は、2020年8月7日~17日の10日間です。2020年のお盆は、中日の15日が土曜日になったことで、日並びとしては長い連休を取りにくい人もいたようです。が、2020年に限っては、新型コロナウイルス感染症の影響により、曜日並びなどあまり関係なく、各特急とも利用者数を大きく減らしました。
そのなかで首位に立ったのは、中央東線特急「あずさ、かいじ、富士回遊」で、全列車で唯一の10万人越えです。中央東線特急が夏休みに強いのは毎年のことで、新型コロナ禍でも変わりませんでした。
2020年3月に東日本大震災以来9年ぶりに全線復旧した常磐線特急「ひたち、ときわ」が2位に付けています。在来線特急の「両横綱」といえる中央線と常磐線特急が、利用者数を激減させながらも、例年通りの強さをみせました。
北海道の特急が堅調
3位「かもめ、みどり等」に続き、4位に入ったのは瀬戸大橋線の快速「マリンライナー」。在来線特急が大きく利用者を減らすなか、対前年度比38%と比較的堅調でした。もちろん「マリンライナー」は快速なので、他の特急とは同列には扱えませんが、近距離の在来線輸送は比較的回復が早かったことを裏付けています。
9位には函館線特急「カムイ、ライラック、オホーツク、宗谷」が入りました。対前年比46%と堅調です。北海道の特急は「おおぞら、とかち」の54%を筆頭に、どの列車も対前年比では40%~50%と堅調な数字となっています。
ただ、これには理由があり、2019年は台風10号がお盆に日本列島を縦断し、北海道にも影響を及ぼし、鉄道利用者が少なかったのです。2020年の対前年比が高いのは、その反動です。
房総特急や四国・九州の特急も同様で、対前年比の数字は比較的堅調ですが、2019年の利用が低調だったため、その反動が数字に表れている側面があります。
「サンライズ」の存在感
新型コロナ禍での利用状況の傾向をつかむには、対前年比だけでなく、対ゴールデンウィーク比もあわせて見た方がいいかもしれません。多くの列車で、対GW比では3~4倍程度の回復となっていますが、そのなかで目を引くのが「サンライズ出雲・瀬戸」(静岡~浜松)です。
対前年比82%、対GW比で6.8倍となっていて、新型コロナ禍で各線とも苦しむなか、孤軍奮闘した列車といえるでしょう。個室寝台という形態が、感染症拡大のなかで存在感を示したといえます。
観光特急も回復
対GW比だけならば、「踊り子、サフィール踊り子」「草津」「日光、きぬがわ」といった観光特急が高い数字となっていて、実に16~20倍に回復しています。「GO TOキャンペーン」の後押しもあってか、夏休みの旅行に出かける人もそれなりいたことを裏付けています。
「くろしお」「きのさき、まいづる」「こうのとり」といった近畿圏の近距離特急も、対GW比で5~6倍と堅調です。これらの特急は観光特急と都市間特急の両側面を併せ持ちます。
意外な健闘をみせたのが「宇和海」。15,000人あまりを輸送し、「南風、しまんと」(多度津~阿波池田)の約14,000人を上回りました。
例年、「宇和海」は「南風、しまんと」より2~3割利用者数が少ないので、この逆転は意外です。理由として考えられるのが、「宇和海」は同一県内のみを走る特急ということ。新型コロナ禍で、県境をまたぐ移動が避けられるなか、同一県内の短距離特急が気を吐いた、といえるのかもしれません。
空港特急は大不振
不振をきわめたのが空港特急です。「はるか」が対前年比5%の5,000人、「成田エクスプレス」が同2%の4,000人となりました。両列車とも飛行機の利用者激減を受けて減便していますが、国際線の比重が高い「成田エクスプレス」により大きな影響が出たようです。
そのほか、「ひだ」も対前年比16%と不振です。これは、2020年7月豪雨で高山線沿線に被害が出たため、沿線への外出が手控えられたことが影響しているとみられます。高山線じたいは7月23日に全線復旧していますが、旅行の予約などには影響があったとみられます。