JR北海道2019年度の輸送密度と収支状況。新型コロナで業績悪化

函館線は8,000人割れ

JR北海道が2019年度の区間別輸送密度と収支状況を発表しました。北海道胆振東部地震から回復した一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、全体的に輸送密度、収支とも悪化しています。

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6年連続全区間で赤字

JR北海道は経営危機が表面化した2014年度から、区間別輸送密度や収支状況を公表しています。その2019年度分を公表しました。新幹線を含めたJR北海道の全路線を23区間に分けたものです。

道内23線区すべてが営業赤字です。上期には札幌圏が黒字となりましたが、通年では赤字となりました。全線区が営業赤字となるのは、線区別収支の公表を始めた2014年度から6年連続です。合計の赤字額は551億8300万円となり、過去最大となりました。

まずは、その数字を輸送密度順にランキングしてみましょう。黒字路線が一つもないので、営業損益は「営業損失」としてマイナス表記を省略しました。( )内は前年度です。

快速エアポート

JR北海道輸送密度ランキング2019年度版
路線名 区間 輸送密度 営業損失
札沼線 医療大学~新十津川 71(62) 275(281)
根室線 富良野~新得 82(94) 863(734)
日高線 鵡川~様似 104(119) 633(739)
留萌線 深川~留萌 137(145) 661(640)
根室線 釧路~根室 238(250) 1,108(1,115)
宗谷線 名寄~稚内 316(335) 2,505(2,622)
釧網線 東釧路~網走 372(380) 1,613(1,448)
根室線 滝川~富良野 386(419) 1,089(1,106)
室蘭線 沼ノ端~岩見沢 388(415) 1,108(1,228)
日高線 苫小牧~鵡川 528(462) 331(368)
函館線 長万部~小樽 618(625) 2,353(2,360)
石北線 上川~網走 710(779) 3,415(3,463)
石北線 新旭川~上川 1,047(1,117) 1,026(959)
宗谷線 旭川~名寄 1,336(1,393) 2,633(2,698)
富良野線 富良野~旭川 1,419(1,505) 1,015(1,066)
根室線 帯広~釧路 1,450(1,557) 4,061(3,895)
石勝・根室線 南千歳~帯広 3,246(3,529) 3,975(3,388)
函館線 函館~長万部 3,650(3,712) 6,766(6,602)
室蘭線 長万部~東室蘭 4,466(4,804) 1,757(1,645)
北海道新幹線 新青森~新函館北斗 4,645(4,899) 9,347(9,573)
室蘭線 室蘭~苫小牧 6,310(6,764) 2,748(2,474)
函館線 岩見沢~旭川 7,682(8,237) 3,642(3,615)
札沼線 桑園~医療大学 17,552(17,957) 2,260(2,755)
函館線 札幌~岩見沢 41,284(42,926)
千歳・室蘭線 白石~苫小牧 45,232(46,416)
函館線 小樽~札幌 45,565(47,039)
全線 4,926(5,108) 55,183(54,971)
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輸送密度改善は2区間のみ

輸送密度が改善したのは札沼線(北海道医療大学~新十津川)と、日高線(苫小牧~鵡川)のみです。札沼線は廃線前のさよなら乗車が理由とみられます。日高線は地元の乗車運動で鉄道通学が増えたことが功を奏したようです。

その他の区間では、輸送密度が軒並み悪化しました。大黒柱の札幌圏でも、快速「エアポート」の不振などにより数字を落とし、主要路線である函館線(岩見沢~旭川)では「幹線」の目安となる8,000人を割り込みました。宗谷線(名寄~稚内)は316人と、300人割れも視野に入る数字になっています。

輸送密度ランキングの順位の変動は、室蘭線(沼ノ端~岩見沢)と根室線(滝川~富良野)が入れ替わったくらいです。大きな順位変動はありません。

運賃値上げは奏功

収益面では、23区間のうち13区間で損失が縮小しました。2019年10月に運賃値上げを実施したことや、小雪で除雪費用が少なかったことが全体的な改善要因です。収益改善が大きかった路線は札幌圏と北海道新幹線で、そのほか、室蘭線(沼ノ端~岩見沢)や、宗谷線(名寄~稚内)、日高線(鵡川~様似:バス代行中)で、1億円以上の改善がみられました。

北海道新幹線は、車両の減価償却費が減ったこと、宗谷線は橋梁の修繕が終了したこと、日高線は土砂流出工事の修繕費が減少したことが大きな理由です。収支改善はこうした支出減による部分も大きいといえます。

一方、営業損失の拡大が目立つのは、石勝・根室線(南千歳~帯広)です。営業損失は39億7500万円と、前期に比べ5億8700万円増えました。運輸収入の減少に加え、トンネルや線路の修繕費がかさんだのが理由です。室蘭線(室蘭~苫小牧)も営業損失が27億4800万円と、損失幅が2億7400万円広がりました。

見通しは不明瞭

全体的には、2019年12月まで(第三四半期まで)は、北海道胆振東部地震からの回復や、新千歳空港アクセスの増加、運賃値上げなどにより、業績は好調でした。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、こうしたプラス分を全てはき出してしまったといえます。とくに、新千歳空港発着の国際線が全面運休となり、インバウンド収入が全くなくなったことは痛手です。

新型コロナの影響は2020年度にも続くとみられ、JR北海道の収益改善の見通しは不明瞭になっています。

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