東海道・山陽・九州新幹線で大減便が行われます。新型コロナウイルス感染拡大の影響ですが、新幹線としては異例の長時間停車が生じるなど、苦心のダイヤとなりました。
「のぞみ3本ダイヤ」に
JR東海、JR西日本、JR九州は、東海道・山陽・九州新幹線の定期列車について、2020年5月11日より減便を行うと発表しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響によるもので、東海道・山陽新幹線では、初めての定期列車運休に踏み込みます。
減便の対象となるのは主に「のぞみ」で、東海道新幹線では毎時3本程度に、山陽新幹線では毎時1~2本程度に運転本数が削減されます。「みずほ」「さくら」も一部列車が減便となります。「ひかり」「こだま」は、引き続き定期列車の全列車を運転します。
東海道新幹線を走る「のぞみ」の定期列車は、平日164本、土曜158本、平日152本ですが、減便後はこれを全て101本とします。2019年度の1日平均は230本ですので、比較すると約56%の削減率です。
2020年3月ダイヤ改正で、東海道新幹線は「のぞみ12本ダイヤ」が目玉でしたが、実際は「のぞみ3本ダイヤ」になってしまうわけです。通常の数%に落ち込んだ最近の乗車率を考えれば仕方ないとはいえ、なんとも寂しい限りです。
山陽新幹線でも「のぞみ」半減
山陽新幹線を走る「のぞみ」の定期列車は平日105本ですが、減便後は53本となります。削減率は約50%です。山陽新幹線では「みずほ」も削減し、平日16本が4本になり、削減率75%です。「さくら」は37本が25本となり、削減率32%です。
「みずほ」「さくら」の一部列車は新大阪~博多間の「ひかり」として運転します。そのため、山陽新幹線「ひかり」は本数が増えて、31本が37本になります。山陽・九州新幹線と直通する「みずほ」「さくら」はあわせて毎時1本程度となります。新大阪~博多間は、「のぞみ」「みずほ」「さくら」で毎時2本程度となります。
九州新幹線では、運転間隔や停車駅の調整のため、定期列車を運休する代わりに新規に臨時列車を設定します。「みずほ」は定期列車16本が4本となり、「さくら」は50本が34本に、「つばめ」は55本が45本となります。
5月11日以降の時刻表
5月11日以降の東海道・山陽・九州新幹線の時刻表の一部を見てみましょう。
一定の利便性を確保
12時台の列車を例に取ると、東京発の「のぞみ」号は09分発、30分発、51分発の3列車のみ。12時30分発の「のぞみ33号」は本来は博多行きですが、減便ダイヤでは新大阪止まりとなります。同様に、51分発の「のぞみ91号」は本来は広島行きですが、減便ダイヤでは新大阪止まりです。
東京駅12時30分発の「のぞみ33号」は新大阪駅で運転を打ち切りますが、同駅15時06分発の「さくら689号」に連絡します。この列車は、本来は「さくら561号」ですが、減便ダイヤでは「さくら689号」として走ります。博多駅では19分という長時間停車で時間調整をした後、博多以遠は、本来の「さくら563号」のスジで鹿児島中央に到着します。
こうした苦肉のダイヤで、東京~新大阪間は「のぞみ毎時3本」、新大阪~博多間は「のぞみ+さくらで毎時2本」という運転本数となります。東京~博多間については、「直通毎時1本、新大阪乗り換えで毎時2本」という運転本数となり、一定の利便性は確保している体裁を整えました。
「ひかり」「こだま」の定期列車のダイヤは変わりません。そのため、これらの列車は、途中駅で「空待避」が大量に発生しそうです。空待避とは、ダイヤ上設定されているものの実際には走っていない列車を通過待ちすることです。「のぞみ」通過待ちの時間分を停車する「空待避」が多くなりそうです。
列車番号はややこしく
ややこしくなっているのが、列車番号です。本来、東海道・山陽新幹線では、東京~博多間直通「のぞみ」に1~60号台の列車番号が付与されています。しかし、減便ダイヤでは、「のぞみ」の列車番号を変えずに一部区間運休としたため、1~60号台の「のぞみ」の一部が東京~新大阪間の運転になってしまっています。
東京~新大阪間を運転する「のぞみ」は、本来は200号台の列車番号が付与されています。しかし、200号台の「のぞみ」は、減便ダイヤでは、深夜と早朝を除き全便運休となりました。
おおざっぱにいうと、減便ダイヤでは「博多のぞみ」と「広島のぞみ」を残し、「新大阪のぞみ」を運休としました。車両・乗務員繰りと列車の運転間隔を考慮したのでしょう。新大阪以西を運休とした列車の番号を変更しなかったのは、すでに発売済みの指定席券もありますし、運行管理上の混乱を避けるためとみられます。
時刻表にない列車番号
山陽新幹線では、新大阪10時06分発の「さくら555号」が、減便ダイヤで「ひかり555号」として新大阪~博多間の運転に縮小するように、列車名を変えて列車番号を変えないケースがあります。一方、上記のように「さくら689号」という、本来の時刻表では見かけない列車番号に振り替えられているケースもあります。
この「600番台のさくら」は下り6本、上り8本ありますが、いずれも博多駅で長時間停車します。前後の「さくら」または「みずほ」の2本の列車のスジを博多駅でまとめるためですが、最長の「さくら685号」は博多駅で25分も停車します。
「さくら685号」の新大阪~博多間は本来「さくら541号」のスジ、博多~鹿児島中央間は「さくら543号」のスジです。二つの列車の新大阪発車は25分違い。つまり、本来、25分差で走る二つの列車を博多駅でつなげたことで、「25分間停車」という、新幹線としては異例の長時間停車が生じたわけです。
山陽新幹線と九州新幹線のそれぞれの運転間隔や停車駅のバランスを整えながら、直通客の利便性に配慮したダイヤなのでしょう。結果として、所要時間が犠牲になっていて、同列車の新大阪~鹿児島中央間は、通常より31分も余計にかかっています。
このように、前代未聞の東海道・山陽・九州新幹線の大減便ダイヤには苦心の跡がしのばれます。このダイヤの期間が長くならないことを祈りたいところです。(鎌倉淳)