東武伊勢崎線と東京メトロ日比谷線の直通で、「THライナー」という通勤ライナーが登場します。わかっていることの全詳細をまとめてみました。
ロング・クロスシート車を投入
「THライナー」は、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)久喜駅~東京メトロ日比谷線霞ケ関・恵比寿駅間を運転する座席指定列車です。上りは恵比寿行き、下りは霞ケ関始発です。2020年6月6日に運転を開始します。
車両は東武鉄道70000系をベースに新造した、ロング・クロスシート転換車両70090型を使用します。「THライナー」として運転するときはクロスシートの全車指定席となります。東上線の「TJライナー」と同じような形態と考えればいいでしょう。
内装では、ハイバック仕様の座席を採用。「TOBU FREE Wi-Fi」を提供し、各座席にコンセントやドリンクホルダー、荷物フックを用意します。
ロゴは70090型の「赤」と「黒」に、日比谷線の「シルバー」を組み合わせ、「T」から「R」まで一本の白いラインを通しました。伊勢崎線と日比谷線とを直結し、東武沿線と都心を一直線につなぐ疾走感を表現しています。
「THライナー」の停車駅
「THライナー」の注目点は、途中の停車駅でしょう。下図の通り発表されました。
新越谷~上野間がノンストップで、越谷は通過。北千住駅も客扱いはありません。上野以南の日比谷線内も通過運転で、仲御徒町、小伝馬町、人形町、八丁堀、築地、東銀座、日比谷は通過します。日比谷通過はやや意外感がありました。
「THライナー」運転時間帯、列車本数
「THライナー」の運転時間帯、列車本数は以下の通りです。
【平日】
・上り(恵比寿方面)
久喜発 6時台、8時台 各1本(計2本)
・下り(久喜方面)
霞ケ関発 18時台~22時台 毎時1本(計5本)
【土休日】
・上り(恵比寿方面)
久喜発 8時台、9時台 各1本(計2本)
・下り(久喜方面)
霞ケ関発 16時台~20時台 毎時1本(計5本)
朝の上りが2本、夕方・夜の下りが5本です。平日と休日で運転本数は同じですが、運転時間帯に1~2時間のズレがあります。
詳細な時刻表、料金、ダイヤ改正等の詳細情報は、決まり次第発表します。
商標出願済み
「THライナー」のネーミングの由来は、「TOBU」「HIBIYA」の頭文字にありますが、それだけではなく、「TOKYO」と「HOME」(自宅)をダイレクトに結ぶ通勤ライナーという意味が込められているそうです。
東武鉄道は「TH LINER」の商標を、2019年3月22日に出願しています。このとき、同時に「HiBiTo」「Smart Liner」の商標も出願していますが、列車名に採用されたのは「THライナー」となりました。
商標登録については、こちらで記事しています。
「TH LINER」など商標出願。東武・日比谷線ライナーの列車名に3つの案
梅島~西新井間に渡り線
東武伊勢崎線は北千住~北越谷間で複々線ですが、内側の緩行線と外側の急行線をつなぐ渡り線がありません。そのため、緩行線を走る日比谷線直通列車は、複々線が終わる北越谷まで追い越しができず、これまで伊勢崎線内での通過運転はありませんでした。
そうした前例を覆し、「THライナー」は、初めて日比谷線直通列車が伊勢崎線内で通過運転をします。「THライナー」最大のトピックスはここにあるといっていいかもしれません。
当然、緩行線と急行線をつなぐ渡り線が必要になり、現在、梅島〜西新井間で工事を実施しています。北千住からやや離れた位置の渡り線となりますが、北千住~小菅間には荒川を渡る鉄橋があるために渡り線を作ることができず、線形なども考慮のうえ、次の急行停車駅である西新井付近に作ることになったようです。
つまり、「THライナー」は上りを例に取ると、西新井通過後に、急行線から緩行線に転線することになります。梅島、五反野、小菅の各駅は緩行線で駅ホームをかすめて通過します。
「日比直特急」はできるか
梅島~西新井間に渡り線ができることで、東武伊勢崎線ではより柔軟な日比谷線直通列車を設定することが可能になります。
東武鉄道では、中期経営計画で「特急車両の地下鉄乗入れに向けた検討」も掲げています。この「地下鉄」が半蔵門線ではなく日比谷線を指すのであれば、将来的に、日光・鬼怒川方面の特急が日比谷線に乗り入れる可能性も出てきました。梅島~西新井間に渡り線ができることで、それが実現可能になります。
東武鉄道は、「スペーシア」の後継となる新型特急を開発中ですが、それが日比谷線直通に対応した仕様になるのかが、次の注目点として残ります。「THライナー」は「日比直特急」の呼び水になるのでしょうか。(鎌倉淳)