JR九州「輸送密度ランキング」を初公開。トップは鹿児島線小倉~博多、最下位は肥薩線人吉~吉松

JR九州が路線・区間別の輸送密度を初めて公表しました。トップは鹿児島線小倉~博多間で、8万人を超えています。一方で、最下位は肥薩線の人吉~吉松であることが明らかになりました。22路線61区間の全輸送密度を、ランキング形式でご紹介しましょう。

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JR九州が「路線別ご利用状況」を初公表

JR九州は、2017年7月31日に、同社として初めて路線別の利用状況(輸送密度、平均通過人員)を公表しました。同社の22路線を61区間に分けて、区間別に輸送密度を明らかにしています。

さっそく、JR九州の61区間について、輸送密度の多い順にランキングにしてみましょう。単位は、1日あたり人キロです。

JR九州811系

JR九州・輸送密度ランキング8,000人以上

まずは、輸送密度8,000人以上の区間です。旧国鉄時代には、幹線と地方交通線を分類する際の、一つの目安が輸送密度8,000人とされましたので、輸送密度8,000人以上は、いわば「幹線相当」の区間です。

輸送密度8,000人以上

鹿児島本線・小倉~博多 82,866
鹿児島本線・博多~久留米 68,589
筑肥線・筑前前原~姪浜 43,961
篠栗線・吉塚~篠栗 31,962
長崎本線・鳥栖~佐賀 31,420
日豊本線・小倉~中津 29,003
九州新幹線・博多~熊本 25,657
鹿児島本線・門司港~小倉 23,605
長崎本線・佐賀~肥前山口 21,430

長崎本線・諫早~長崎 19,032
山陽本線・下関~門司 18,506
日豊本線・中津~大分 14,503
篠栗線・篠栗~桂川 14,303
九州新幹線・熊本~鹿児島中央 11,950
鹿児島本線・鹿児島中央~鹿児島 11,811
日豊本線・国分~鹿児島 11,214
鹿児島本線・熊本~八代 10,670
豊肥本線・熊本~肥後大津 10,655

鹿児島本線・久留米~大牟田 9,414
筑豊本線・折尾~桂川 8,585
長崎本線・肥前山口~諫早 8,647
指宿枕崎線・鹿児島中央~喜入 8,332

輸送密度1位は鹿児島本線小倉~博多で、博多~久留米が続きます。この区間は一体的に運用されており、小倉~博多~久留米が、JR九州の最重要区間であることがわかります。それ以外でも、福岡市を中心としたエリアは、輸送密度3万人キロ以上が続きます。

佐賀県東部も高い輸送密度を保っています。人口密度が比較的高いエリアであることと、在来線特急が健在な点が理由でしょう。同じく在来線特急が走る日豊本線も、大分以北で高い輸送密度を保っています。

一方で、在来線特急がほぼなくなった鹿児島本線の久留米~大牟田間は、1万人を割り込んでいます。

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JR九州・輸送密度ランキング4,000人以上

続いて、輸送密度4,000~8,000人の区間です。「幹線」「地方交通線」の分類では「地方交通線」になる輸送量ですが、路線廃止対象にはならない水準です。

輸送密度4,000~8,000人

香椎線・香椎~宇美 7,697
鹿児島本線・川内~鹿児島中央 7,385
鹿児島本線・大牟田~熊本 7,000
佐世保線・肥前山口~佐世保 6,697
日豊本線・延岡~南宮崎 6,204
筑肥線・唐津~筑前前原 5,755
日豊本線・大分~佐伯 5,617
大村線・早岐~諫早 5,253
長崎本線・喜々津~浦上 4,823
香椎線・西戸崎~香椎 4,394
筑豊本線・若松~折尾 4,304
豊肥本線・三重町~大分 4,018

福岡市から少し離れたエリアや、県庁所在地周辺の路線がランクインしました。香椎線や筑豊線などは、福岡近郊なのに輸送密度が4,000人を少し上回る程度でなので物足りないですが、香椎線は国鉄末期より輸送量が増えており、筑豊線も桂川~原田を除けば国鉄末期に比べ微減にとどまります。その点では安心でしょう。

JR九州・輸送密度ランキング2,000人以上

旧国鉄時代に輸送密度4,000人未満の路線は「特定地方交通線」に分類され、該当路線は、原則として国鉄・JRから切り離されました。そのなかで、「第二次特定地方交通線」レベルが輸送密度2,000~4,000人の路線です。旧国鉄では、この水準の路線の多くは切り離され、第三セクター鉄道やバス転換となりました。JR九州では8区間が該当します。

輸送密度2,000~4,000人

久大本線・久留米~日田 3,867
日豊本線・南宮崎~都城 3,795
日南線・南宮崎~田吉 3,615
日田彦山線・城野~田川後藤寺 2,595
指宿枕崎線・喜入~指宿 2,477
久大本線・由布院~大分 2,387
唐津線・久保田~唐津 2,264
久大本線・日田~由布院 2,027

県庁所在地からやや離れているものの、過疎区間とも言い切れないエリアが入りました。特急運転区間も多く含まれています。

これらの区間は、国鉄末期に比べて輸送量が激減しているわけではありません。利用者が増えている区間もあり、比較的安定している路線が多いと言えます。
   

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JR九州・輸送密度ランキング2,000人未満

旧国鉄時代に第一次特定地方交通線レベルとされた、輸送密度2,000人未満の路線です。路線整理を進めるJR北海道では、輸送密度2,000人未満の線区を「輸送サービスを鉄道として維持すべきかどうか検討」を要する路線と定義しました。

その意味では、今後、存廃について検討がなされる可能性のある路線と言えます。

輸送密度1,000~2,000人

宮崎空港線・田吉~宮崎空港 1,740
日豊本線・都城~国分 1,487
三角線・宇土~三角 1,374
後藤寺線・新飯塚~田川後藤寺 1,328
日南線・田吉~油津 1,193
日豊本線・佐伯~延岡 1,049
唐津線・唐津~西唐津 1,026

輸送密度1,000人未満

豊肥本線・豊後竹田~三重町 954
肥薩線・吉松~隼人 758
筑豊本線・桂川~原田 512
肥薩線・八代~人吉 478
吉都線・吉松~都城 466
指宿枕崎線・指宿~枕崎 301
日田彦山線・田川後藤寺~夜明 299
筑肥線・伊万里~唐津 236
日南線・油津~志布志 222
豊肥本線・宮地~豊後竹田 154*
肥薩線・人吉~吉松 108
豊肥本線・肥後大津~宮地(運休中)

*長期間運転を見合わせていた区間については、その期間を除いた実績で算出しています。

輸送密度がもっとも低かったのが、肥薩線の人吉~吉松間。続いて、豊肥本線宮地~豊後竹田間の2区間が輸送密度200人以下です。豊肥本線は熊本地震の影響などを受けているので、今回の検討からは除外するとして、肥薩線の人吉~吉松間はかなり少ない数字です。

現実問題として、肥薩線の人吉~吉松間は、熊本~鹿児島をJR九州の路線でつなぐ区間ですし、景勝路線としても知られています。そのため、そう簡単に廃止が検討されることはなさそうです。ただ、108という数字はいかにも少なく、楽観はできないでしょう。

盲腸線でもっとも輸送密度が低かったのが日南線・油津~志布志の222です。1日10往復でこの利用者数は、かなり少ないといえます。筑肥線・伊万里~唐津間の236も厳しい数字でしょう。

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北海道や四国より恵まれているが

JR九州の路線別輸送密度を見て感じることは、JR北海道や四国といった他の3島会社に比べれば、相当恵まれている、という点です。

九州には政令指定都市が3つあり、それ以外の県庁所在地も人口30~60万人を抱えて高い拠点性を備えています。そのため、県庁所在地を中心に、ローカル線でもそれなりの輸送量がある点が、北海道や四国と異なります。

また、福岡県を中心とした北部九州エリアの在来線で高い輸送密度を保っており、ドル箱となっています。ただ、トップとなった鹿児島線小倉~博多間の輸送密度82,866は、JR東日本なら川越線(大宮~川越:88,483)や、外房線(千葉~茂原:86,393)レベルに過ぎません。

同じくドル箱となる九州新幹線も、博多~熊本の25,657は北陸新幹線の長野~上越妙高(24,187)と同水準、熊本~鹿児島中央の11,950は、東北新幹線・八戸~新青森の 12,300に及びません。大きな黒字を期待するには物足らない数字です。

小さいドル箱、多い過疎区間

総じて、JR九州の「ドル箱」は大きくありません。一方で、過疎区間は多くあり、輸送密度の少ない路線には、維持にお金のかかる山岳路線が数多く含まれます。

JR九州の青柳俊彦社長は、公表にあたり、「路線を廃止するために出したわけではない」としています。そのため、輸送密度公表が、ただちに存廃論に繋がることはなさそうです。

ただ、小さなドル箱で多くの過疎路線を支えきるのは困難です。そのため、JR九州としては、輸送密度が極端に低い路線の沿線自治体に対して、利用促進に向けた施策を求めてくるとみられます。難しい課題ですが、これをきっかけに、ローカル線の盛り上がりに繋がることを願いたいところです。(鎌倉淳)

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