スカイマークの運賃水準がLCCに近づく。航空会社の「旅客収入ランキング」2017年版。全日空は安定の首位

2017年3月までの航空会社別「旅客収入」の統計がまとまりました。旅客収入では全日空が日本航空に約1.5倍の差を付け、人キロあたり旅客収入(イールド)でも首位に立ちました。客単価ではスターフライヤーがトップ。スカイマークの運賃水準はLCCに近づきました。

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国土交通省の旅客収入統計

航空会社の「旅客収入」に関する統計は、国土交通省の「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報」で公表されています。

この統計には、「旅客収入」「輸送人員あたりの旅客収入」「輸送人キロあたりの旅客収入」があります。ここでは、それらの2016年度(2016年4月~2017年3月)の数字をランキングにまとめて、順にみていきます。

なお、「日本航空」は、日本航空、ジェイエア及び2016年10月30日以降の北海道エアシステムの合計。「全日空」は、全日本空輸、ANAウイングスの合計です。小型機使用のフジドリームエアラインズやアイベックスなどは、この統計の対象外です。また、統計対象は国内線であり、国際線は対象外です。

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2016年度旅客収入ランキング

まずは、旅客収入ランキングを見てみましょう。( )内は前年度の数字です(以下同)。

【旅客収入ランキング】

1位 全日空 6,675億円 (6,749億円)
2位 日本航空 4,337億円 (4,331億円)
3位 スカイマーク 709億円 (703億円)
4位 ジェットスター 369億円 (391億円)
5位 日本トランスオーシャン 339億円 (343億円)
6位 エアドゥ 294億円 (280億円)
7位 ソラシドエア 247億円 (240億円)
8位 ピーチ 240億円 (230億円)
9位 スターフライヤー 231億円 (219億円)
10位 バニラ・エア 82億円 (78億円)
11位 春秋航空日本 27億円 (22億円)
計 1兆3,556億円 (1兆3,591億円)

旅客収入の総額は、会社の規模にほぼ比例します。そのため、全日空と日本航空の大手2社が3位以下に大きな差を付けていて、驚きはありません。大手2社のうち、日本航空は微増、全日空は微減となっています。中堅航空会社は堅調で、エアドゥとスターフライヤーがいずれも約5%の伸び率となっています。

LCCはピーチが4%増、バニラが5%増と堅調な一方で、ジェットスターは5%減と振るいませんでした。春秋航空日本は路線拡大で23%の大幅増となりましたが、もともとの規模が小さいので増加率の数字が大きく出やすい事情があります。

LCC各社の国内線収入の伸び率は、全体的には頭打ちであることが見て取れます。最近の日系LCCは国際線の拡大に力を入れており、国内線で急成長するような時期は終わったということなのでしょう。

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2016年度客単価ランキング

次に、輸送人員あたりの平均旅客収入を見てみます。いわゆる「一人あたりの客単価」です。コードシェアを実施している場合は、自社販売分の数字です。

【輸送人員あたり旅客収入ランキング】

1位 スターフライヤー 16,300円 (16,600円)
2位 日本航空 15,600円 (15,900円)
3位 全日空 15,500円 (15,800円)
4位 エアドゥ 14,100円 (15,400円)
4位 ソラシドエア 14,100円 (14,500円)
6位 日本トランスオーシャン 12,100円 (12,600円)
7位 スカイマーク 10,500円 (11,700円)
8位 ジェットスター 8,100円 (8,000円)
9位 バニラ・エア 7,700円 (8,100円)
10位 ピーチ 7,400円 (7,300円)
11位 春秋航空日本 6,100円 (6,600円)
平均 14,300円 (14,600円)

客単価では、ジェットスターとピーチ以外は全社が前年度割れとなりました。航空業界全体として、国内線の客単価は伸び悩んでいます。トップは高品質エアラインとして知られるスターフライヤーで、微減ながらも大手2社を抑えました。

中堅航空会社のうち、落ち込みが大きかったのはスカイマークとエアドゥで、約8~10%も客単価を落としています。主力となる東京~札幌、福岡路線でLCCと競合する影響でしょうか。一方、LCCはジェットスターとピーチが微増だった一方、バニラ・エアと春秋航空日本が微減です。

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2016年度イールドランキング

最後に、客単価に平均搭乗距離を勘案した単価をみてみましょう。「輸送人キロあたり旅客収入」という数字でわかります。簡単にいえば、1kmあたりの客単価で、航空業界では「イールド」といい、客単価より重要視される数字です。

【輸送人キロあたり旅客収入ランキング】

1位 全日空 17.3円(17.5円)
2位 スターフライヤー 17.0円(17.4円)
3位 日本航空 16.9円(17.1円)
4位 エアドゥ 15.1円(16.5円)
5位 ソラシドエア 13.5円(13.8円)
6位 日本トランスオーシャン 12.8円(13.4円)
7位 スカイマーク 10.0円(11.2円)
8位 ピーチ 7.8円(8.0円)
9位 ジェットスター 7.7円(7.7円)
10位 バニラ・エア 6.7円(7.0円)
11位 春秋日本 6.4円(6.8円)
平均 15.3円 15.7円

この数字の見方ですが、たとえばイールドの数字が「17」の航空会社では、1,000kmあたりで平均17,000円の収入があることになります。ちなみに、羽田~福岡間が約1,000km(1,041km)ですから、全日空や日本航空では、同区間の平均客単価が17,000円程度であろう、と推測できます(もちろん、実際は路線によって異なります)。

東京~福岡の大手航空会社の普通運賃は43,890円ですが、これを見ると、「普通運賃」がとても高く、そんな値段で乗っている人など、ほとんどいないであろうことが見て取れます。

イールドは航空会社ごとの運賃水準を示しますので、それぞれの会社の価格傾向がわかります。LCCの運賃は、大手航空会社に比べておおむね半額程度。フルサービスキャリアでは、スカイマークのイールドが低く、LCCに近い価格を提供していることが見て取れます。スカイマークのイールドはピーチの1.28倍で、前年の1.4倍より差が縮まりました。

イールドは、全体的に下落傾向です。燃油価格が下げ止まっていることを反映している側面もあり、必ずしも航空各社の経営悪化を示唆する内容ではありません。

平均運賃はいくらか?

利用者の視点でみると、自分の搭乗する区間の距離に航空会社のイールドを乗じれば、その区間の「平均運賃」の目安がわかります。

たとえば羽田~新千歳は894kmですので、ANAは15,466円、JALは15,108円が、平均運賃の目安です。これはスーパーシートやクラスJ運賃も含めた平均ですので、普通運賃の平均価格はもう少し安いとみていいでしょう。

2017年9月の運賃を調べみると、ANAは旅割21が21,690円~、旅割28が14,690円~です。JALは、特便割引21が22,290円~、先得割引が14,890円~となっています。イールドから計算すると、搭乗日28日前までにチケットを買わなければ、「平均運賃」よりも高く乗ることになる、という理屈になります。

LCCの激戦区、成田~新千歳も見てみましょう。この区間の距離は892km。ジェットスターの「平均運賃」は6,868円で、バニラエアなら5,976円と計算できます。これより安くチケットを買えれば「平均以下」となります。この金額の見方はさまざまでしょうが、筆者の感想としては、みなさん、かなり安く上手にLCCに乗っていると思います。

もちろん、こうした計算は正確ではありません。ただ、飛行機のチケットの価格を判断する際の、一つの目安にはなりそうです。(鎌倉淳)

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