ワーキングホリデーの対象国が拡大中です。2017年6月27日にチェコとの協定を締結し、協定締結国は20カ国に達しました。最近増えているのが東欧圏。また、南米初となるアルゼンチンも対象国に加わりました。
就労可能な長期ビザ
ワーキングホリデーは、就労可能な長期滞在が許される査証制度(ビザ)です。協定を結んだ相手国で1~2年程度の滞在が許され、その間に旅行、就学、就労が可能になります。ワーキングホリデービザが利用できるのは若者に限られ、おおむね18歳~30歳(一部25歳)が対象年齢です。
日本におけるワーキングホリデーの歴史は、1980年の対オーストラリアが最初。その後、1985年にニュージーランド、1986年にカナダと協定を結びました。しばらくはこの3カ国で定着していましたが、1999~2001年にかけて、韓国、フランス、ドイツ、イギリスとも相次いで協定を締結しています。
20カ国目はチェコ
その協定国が、最近になって急増しています。2015年にポーランド、ポルトガル、2016年にスロバキア、オーストリアと相次いで協定を締結。2017年にはハンガリー、スペイン、アルゼンチンと協定を結び、6月27日に締結したチェコを以て20カ国に到達しました。
現在のワーキングホリデー協定国は以下の通りです。
ワーキングホリデー協定国
【アジア・太平洋】
韓国
台湾
香港
オーストラリア
ニュージーランド
【ヨーロッパ】
イギリス
フランス
ドイツ
アイルランド
デンマーク
ノルウェー
オーストリア
ポーランド
ハンガリー*
チェコ*
スロバキア
スペイン*
ポルトガル
【北南米】
カナダ
アルゼンチン*
*は2017年になってからの協定締結。ビザ発給開始日などはご自身でご確認ください。
イタリア、ベルギーとも交渉中
最近の傾向として、東欧での協定が急増していることが挙げられます。2015年に東欧初のワーホリ対象国としてポーランドが登場し、以後、ハンガリー、チェコ、スロバキアが対象国になりました。東欧と隣接するオーストリアも加わっています。
一方で、中南米圏やアフリカ諸国との協定締結は進んでいません。その意味で、南米圏で初めてのワーキングホリデー協定国となったアルゼンチンは注目でしょう。2017年5月19日、2国間で協定が締結されました。
そのほか、外務省の報道資料を見ると、ワーキングホリデー協定締結を交渉している国としては、イタリア、フィンランド、アイスランド、イスラエル、ベルギーなどが確認できます。
人手不足とインバウンド促進の影響?
2014年の日本・イスラエル首脳会談時の外務省資料を見ると、「安倍総理から日イスラエル間の合意済みの直行便就航の実現を促すとともに,国会議員交流や教育交流の拡大,ワーキング・ホリデー制度導入の協議開始を提案し,ネタニヤフ首相はこれらを歓迎」と書いてあります。
つまり、ワーキングホリデー協定は日本側から提案しているようで、日本がワーホリ受け入れに積極的になっている様子がうかがえます。最近の日本は、若者の人手不足が深刻ですが、ワーホリは外国人の若者に期間限定で働いてもらえますし、インバウンドの取り組みにも適します。そうした国策が、ワーホリ締結拡大の背景にあるのでしょう。
アジアから受け入れて、英語圏に送る
それにしても、ワーホリ対象国がこれだけ増えると、海外旅行が好きな日本の若者にはうれしいでしょう。筆者が対象年齢だった時代は、オーストラリア、ニュージーランド、カナダの3カ国だけだったので、選び放題の現代の若者が、この点ではうらやましいです。
選択肢が増えたとはいえ、日本人のワーキングホリデー渡航先で人気なのは、依然としてオーストラリアで、年間1万人もビザを取得しているそうです。カナダも人気ですが、ビザ発給が6,500人に制限されており、近年は毎年上限に達しています。
イギリスももちろん人気ですが、こちらは1,000人しかビザ発給されないので、抽選に当たらなければビザがもらえません。
ワーホリビザ発給対象国ランキング
ちなみに、ワーキングホリデーは相互主義です。日本をワーホリで訪れる外国人も多いわけですが、その国籍別ランキングもご紹介しておきましょう。(2016年度データ)
1位 台湾 4,977
2位 韓国 3,818
3位 オーストラリア 1,118
4位 フランス 1,073
5位 イギリス 919
6位 ドイツ 642
7位 カナダ 527
8位 香港 307
9位 ニュージーランド 228
10位 デンマーク 125
日本人のワーホリ利用者は年間約2万人。これに対し、日本政府が発給したワーキングホリデービザは、1年間で約14,000件です。その過半数が台湾と韓国です。ワーホリに関しては日本は輸出超過で、「台湾と韓国から受け入れて、英語圏に送り出す」という形になっているようです。(鎌倉淳)