只見線「上下分離方式」での運転再開案をJRが提示。85億円かけて復旧し、毎年2億円の赤字負担を続けられるのか

JR東日本は、2011年から不通が続く只見線の会津川口~只見間27.6kmについて、運転再開後に発生する赤字の一部を沿線自治体で負担することを条件とする、鉄路での復旧案を示しました。この件でJRが鉄道復旧案を提示するのは初めてです。

内容は、両駅間の鉄道施設の維持・管理費を沿線自治体が支出し、JRが運行する「上下分離方式」で、運営費の4分の3を地元が負担するという内容。はたして現実的なのでしょうか。

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運営費2億8000万円で500万円の収入

この復旧案は、2016年6月18日に会津若松市で開かれた第3回只見線復興推進会議検討会で示されたものです。

朝日新聞福島版2016年6月19日付によりますと、検討会では、JRから、不通区間における代行バスの収支と、不通前の鉄道収支状況が説明されました。代行バスの収支(2015年度)は、収入約300万円、運営費約5300万円。一方、鉄道の収支(2009年度)は、収入約500万円、運営費約2億8000万円、その他の経費が約5000万円でした。

鉄道復旧した場合、バス転換より赤字が大きく膨らむとしたうえで、上下分離方式が示されたとのことです。

只見線写真:福島県

2億1000万円を地元が負担

JRが提示した上下分離方式では、会津川口~只見間にある線路や踏切、橋梁などの鉄道施設と土地を、JRが沿線自治体に無償で譲渡します。その上で、JRが地元から運行委託を受けてこれまで通り列車を運行します。

この案では、運営費2億8000万円のうち、維持・管理費と除雪費など2億1000万円を沿線自治体が負担し、運行にかかる人件費や車両の維持・補修費など7000万円はJRが負担します。運営費の4分の3を地元が負担することになります。復旧区間の運営費は赤字額とほぼ同じですから、4分の3の赤字補填を行うと解釈できます。

復旧工事費も膨らむ見込み

復旧工事そのものについては、当初、JRは約85億円と試算していました。ただ、算定から3年が過ぎており、この金額も膨らむ見込みとのことです。この復旧費85億円についても、JRは地元自治体に応分の負担を求める構えです。

福島民報2016年6月19日付によりますと、JRによる鉄道復旧案提示を受け、福島県と沿線市町村は、鉄路による復旧で生じる負担額や支出割合などの具体的な検討に入り、復旧後の鉄道を活用した地域振興策も取りまとめるとのことです。

報道を見る限り、鉄道復旧案に対して、地元は前向きな姿勢を見せているようです。復旧費用85億円の分担に関しても、JRの負担分を20~30億円程度にするスキームも検討されていますので、JR東日本の体力なら、あながち実現不可能というわけではなさそうです。

本当にこの案で只見線の復旧をして今後も営業運転をする場合、地元自治体は毎年2億円以上の赤字補填を続けることになります。復旧費を含めた総額では、今後10年で70~80億円の税金が投入されることになりかねません。それだけの価値が只見線にあるのかは、意見が分かれるところでしょう。(鎌倉淳)

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