JR北海道が「単独で維持困難な路線」を公表した問題で、北海道の鉄道作業部会がまとめる鉄道のあり方に関する報告書案の内容がわかりました。
それによりますと、具体的な路線名の明示はなかったものの、稚内、網走、根室への鉄路の維持を想定しているようです。日本経済新聞が報じました。
2030年に向け路線を6つに分類
JR北海道は、2016年11月に「単独で維持が難しい路線」として10路線13線区を公表。これを受けて、北海道では、知事の諮問機関である北海道運輸交通審議会の鉄道作業部会で、この問題を検討する「鉄道ネットワーキングチーム」を設け、議論を重ねてきました。
作業部会では1月30日に開く最終会合で報告書案の概要をとりまとめる予定ですが、日本経済新聞北海道版2017年1月28日付が、その概要を報じました。それによりますと、報告書の内容として、北海道新幹線が開業する2030年の鉄道路線のあり方について、現在のJR北海道の路線を以下の6つに分類して方針を挙げています。
1 札幌市と中核都市等をつなぐ路線→維持されるべき
2 広域観光ルートを形成する路線→地域で検討
3 国境周辺・北方領土隣接地域の路線
・宗谷地域→維持が必要
・北方領土隣接地域→鉄道の役割を十分考慮すべき
4 広域物流ルートを形成する路線→総合的に対策を検討
5 地域の生活を支える路線→地域で検討
6 札幌市中心の都市圏の路線→道内全体の鉄道網維持に資する役割を果たすべき
稚内、網走への路線維持を示唆
日経によると、1の「中核都市をつなぐ路線」として想定しているのは、宗谷線(名寄-稚内間)と石北線(旭川-網走間)とのこと。宗谷地域は3の「国境周辺」にも該当しており、稚内への鉄路の維持は強く示唆されたといえます。
石北線も沿線に中核都市として北見を擁しており、維持に前向きと言えそうです。
3の「北方領土隣接地域」は根室への路線とみられます。この「役割を十分考慮すべき」との表現も、存続に前向きと受け取れます。
釧網線、富良野線は存続に後ろ向き?
2の「広域観光を形成する路線」は、釧網線が該当しそうですが、「地域で検討」は、「地元自治体が負担するなら残す」という表現と受け取れますので、存続にやや後ろ向きな印象です。
同じく「地域で検討」となっているのが、5の「地域の生活を支える路線」です。留萌線、日高線などが該当しそうですが、これも地元負担を求めている印象です。富良野線は2か5か微妙ですが、いずれにしろ「地域で検討」に分類されそうです。
室蘭線は微妙
4の「広域物流ルートを形成する路線」は、室蘭線の長万部-東室蘭間や、沼ノ端-岩見沢間(室蘭東線)が該当しそうです。北海道新幹線開業後の将来像ですから、函館-長万部間は第三セクターに移管されています。
「総合的に対策を検討」とは、存続可能性はあるものの、JR北海道が維持する必要はない、という表現にみえます。
長万部-東室蘭は、貨物列車を維持するため存続を示唆したように受け取れます。ただ、室蘭東線については、「総合的に対策を検討した結果」として、道東からの貨物列車をすべて道路輸送に移す決断をする、という意味にも受け取れ、微妙です。
札幌圏は黒字を
6の「札幌市中心の都市圏の路線」は、千歳線や函館線の小樽-札幌間、学園都市線などを念頭に置いているとみられます。
「道内全体の鉄道網維持に資する役割を果たすべき」との表現は、このエリアで黒字を生み、他のエリアの赤字補填に使うべき、という趣旨にも受け取れます。が、おそらくは大きな意味はなく、「札幌圏の鉄道路線は問題がない」という程度のことだと思います。
上下分離には否定的
報告書案では、「上下分離方式」についても言及しています。「自治体に負担を求めることは現実的に難しい」としており、否定的な姿勢です。
そのうえで、「公共交通ネットワーク全体の将来像をまとめるため、道が主導的な役割を果たすよう求めた」とのことです。
誰がそれを負担するのか?
おおざっぱにまとめると、札幌圏を中心に小樽、旭川、室蘭への路線、および石勝・根室、石北、宗谷の各線は維持する一方、それ以外の路線についてはバス転換も容認するような内容に読み取れます。
報告書案が示す「2030年の北海道の鉄道網」は、現実的な落としどころに近いとは思います。ただ、人口希薄地帯への路線網の維持について、誰が負担するのかは、難しい問題として残りそうです。(鎌倉淳)