横浜環状鉄道は、鶴見から日吉、港北ニュータウン、中山、二俣川、東戸塚、上大岡、根岸を経て、元町・中華街に至る鉄道路線計画です。途中の日吉-中山間13.1kmが横浜市営地下鉄グリーンラインとして開業済みです。
したがって、横浜環状鉄道は、おもにグリーンラインの延伸計画です。元町・中華街~根岸間については、みなとみらい線の延伸として計画されています。
横浜環状鉄道は現時点では構想段階で、事業化や開業時期の予定などは決まっていません。
横浜環状鉄道延伸の概要
横浜環状鉄道は、鶴見から日吉、港北ニュータウン、中山、二俣川、東戸塚、上大岡、根岸を経て元町・中華街に至る鉄道路線です。このうち、日吉~港北ニュータウン~中山間が横浜市営地下鉄グリーンライン(横浜市高速鉄道4号線)として開業しています。
横浜環状鉄道は、このグリーラインを鶴見・二俣川方面に延伸する一方、みなとみらい線を根岸方面に延伸する構想です。
路線の建設の意義としては、以下のような点が挙げられています。
・市域の主要な生活拠点を結び、横浜市の鉄道ネットワークのより一層の充実が図られる路線である。
・横浜駅を中心とした放射状の鉄道路線を短絡し、災害等による輸送障害発生時の代替経路が確保される。
・市域の主要な生活拠点を乗り換えなしでつなぐことにより、人の流れの増加、業務圏・商圏の拡大などが期待できる。
整備後は、日吉-鶴見が11分、中山-二俣川が11分、二俣川-東戸塚が9分、東戸塚-上大岡が8分、上大岡-根岸が6分、根岸-元町・中華街が9分で結ばれるとしています。ルートや途中駅などの詳細は未定です。
概算事業費と概算事業費
全体を整備した場合の概算事業費は、概算7,700億円と見積もられています。区間別の試算は以下の通りです。
日吉-鶴見(2021年度試算)
・想定利用客数:35,000人~49,000人/日
・建設費:1,300億~1,400億円
中山-二俣川(2016年度試算)
・想定利用客数:25,000人~30,000人/日
・建設費:1,400億~1,600億円
根岸-元町・中華街(2016年度試算)
・想定利用客数:18,000人~20,000人/日
・建設費:1,400億~1,600億円
この試算は、鶴見-根岸間はグリーンラインのリニア式地下鉄を建設するという前提になっています。また、根岸-元町・中華街はみなとみらい線に乗り入れるとして、従来型鉄道での建設が想定されています。
したがって、横浜環状鉄道を全線で整備した場合、根岸が分界点となりそうです。
事業化の見通しは?
全区間において、現時点で事業着手の予定はありません。2022年3月14日の横浜市議会国際・経済・港湾委員会で、副市長は横浜環状鉄道の計画について、「計画として生きている状況」と説明したものの、「事業としてなかなか難しい。要するに、投資してもすぐなかなか黒字にならないという大変厳しい状況」と答弁しています。
また、2023年10月11日の横浜市議会決算第一特別委員会では、グリーラインの二俣川延伸について問われた副市長が「中山駅からズーラシアまで鉄道が整備されれば、来園者の増加あるいはグリーンラインの利用者増につながる可能性はある」としながら、「多額の事業費がかかるわりに乗るお客さんが少ない」「ズーラシアの入園者の方々も乗るだろうという前提でやってみてもちょっと厳しい」などと、事業性に課題があるとしました。
そのうえで、「例えば工事費をもっと安くできないか、あるいはもっと人が乗るように沿線でにぎわい施設とかまちづくりを進められないかといったこととセットで整理をしていかないとなかなか難しいというのが現状」と答弁しています。
横浜環状鉄道の沿革
横浜環状鉄道計画の前身となる地下鉄計画は、1966年の都市交通審議会答申第9号に掲載されています。4号線として「鶴見-末吉橋-勝田-元石川付近」が盛り込まれました。
その後、1985年の運輸政策審議会答申第7号では、「日吉から高田町を経由して港北ニュータウンに至る路線」「その先横浜線方面への延伸」、「東神奈川からみなとみらい21地区を経由して元町付近に至る路線」「その先根岸方面への延伸」、「根岸から上大岡、東戸塚を経由して鶴ヶ峰に至る路線」が盛り込まれました。
2000年の運輸政策審議会答申第18号では、これらを統合して、「横浜環状鉄道(仮称)の新設」として、元町-鶴見間について2015年までに整備着手が適当である路線として位置付けました。
このうち、日吉-中山間が2001年1月30日に着工され、2008年3月30日にグリーンラインとして開業しました。
しかし、この区間以外については、着工に向けた準備は進んでいません。横浜市ではブルーラインの新百合ヶ丘延伸のメドが経った後に、横浜環状鉄道の事業化に向けた詳しい調査をする方針のようです。
横浜環状鉄道のデータ
営業構想事業者 | 未定 |
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整備構想事業者 | 未定 |
路線名 | 未定 |
区間・駅 | 鶴見-日吉-港北ニュータウン-中山-二俣川-東戸塚-上大岡-根岸 -元町・中華街 |
距離 | 約40km |
想定利用者数 | 35,000~49,000人/日(日吉~鶴見) 25,000~30,000人/日(中山~二俣川) 18,000~20,000人/日(元町・中華街~根岸) |
総事業費 | 1,300~1,400億円(日吉~鶴見) 1,400~1,600億円(中山~二俣川) 1,400~1,600億円(元町・中華街~根岸) |
費用便益比 | — |
累積資金収支黒字転換年 | — |
種別 | 未定 |
種類 | 普通鉄道 |
軌間 | 1435mm、1067mm |
電化方式 | 直流750V第三軌条、直流1,500V |
単線・複線 | 複線 |
開業予定時期 | 未定 |
備考 | — |
※データはおもに横浜市ウェブサイトより。
横浜環状鉄道の今後の見通し
横浜環状鉄道は、過去の鉄道計画をつなぎ合わせたような構想で、現在の想定経路のまま完成するかどうかすら定かではありません。そのなかで、現時点で実際に建設が想定されている区間は、横浜市が試算を行った「鶴見-日吉」「中山-二俣川」「元町・中華街-根岸」の3区間です。
このうち、最も有力なのは、想定利用者数が多い鶴見-日吉間、次いで中山-二俣川間です。現状のグリーラインを両方向に延伸する形になります。とくに、鶴見-日吉間は沿線の人口密度も多いことから、実現可能性は高い区間と言えます。
ただ、横浜市は「鉄道を軸とした交通体系について」という資料で、ブルーラインの新百合ヶ丘延伸を「優先度の高い路線」と位置づけており、グリーンラインの延伸は、そのメドが立ってから調査に取りかかる姿勢を示しています。
したがって、横浜市営地下鉄グリーンラインの鶴見、二俣川延伸は、実現するにしても相当先になるとみられます。ブルーラインの新百合ヶ丘延伸は2030年代半ば以降の開業とみられていますので、グリーンラインの事業着手は2040年ごろにならざるを得ず、開業は早くても2050年ごろかもしれません。
元町・中華街-根岸は、みなとみらい線の延伸という形です。想定利用者数が1万人台にとどまるため、実現性は見通せません。沿線で大規模な再開発などがおこなわれない限り、事業着手への道は厳しそうです。