JR・南海なにわ筋線

大阪~JR難波、南海新今宮

JR・南海なにわ筋線は、大阪駅(うめきた)からJR難波駅、南海新今宮駅へ至る鉄道新線です。JRと南海が共同で営業します。開業予定は2031年春です。

なにわ筋線の概要

なにわ筋線は、大阪市のなにわ筋の地下に建設中の鉄道路線です。新大阪駅とJR難波駅・南海汐見橋駅を結ぶ地下鉄路線として検討が進められてきましたが、2017年5月23日に北梅田駅(当時の仮称)と、JR難波駅・南海新今宮駅を結ぶ計画として事業化されることが決まりました。

ルートは、大阪駅(うめきた地下ホーム)から、地下構造でなにわ筋に向けて南西に進み、JR大阪環状線福島駅付近でなにわ筋の地下に入ります。その後、地下構造のまま、なにわ筋を南下し、西本町駅の立地する中央大通の南で2方面に分岐し、JR難波駅と南海新今宮駅にそれぞれ接続します。

JR難波駅へはそのまま地下構造で接続し、南海新今宮駅へはパークス通の大阪市浪速区敷津東3丁目付近で地上に移行し、高架構造で南海本線へ合流する路線計画となっています。総延長は7.4kmです。

なにわ筋線
画像:大阪市


 
途中駅として、中之島駅、西本町駅、新難波駅(いずれも仮称)の3駅を設けます。このうち、新難波駅は南海のみが使用します。いずれの駅もホームは2線です。

中之島駅では京阪中之島駅と連絡します。また、南海新難波駅で市営地下鉄、南海、近鉄の各駅と連絡します。西本町駅での他線連絡はありません。

開業すると、新大阪~関西空港間が、JR49分、南海50分で結ばれます。大阪~関西空港間は、JR44分、南海45分です。

なにわ筋線
画像:関西高速鉄道

 

整備主体と営業主体

なにわ筋線は、第三セクターの関西高速鉄道が整備主体となり、JR西日本と南海電鉄が営業主体となる上下分離方式です。

北梅田~西本町間がJR・南海の共同営業区間、西本町~JR難波がJR単独営業区間、西本町~新今宮が南海の単独運行区間です。

運行計画とダイヤ

なにわ筋線は、大阪駅から先、梅田貨物線の地下線を経由して新大阪駅まで乗り入れます。

なにわ筋線開業後のダイヤは未発表ですが、事業計画によると、旅客列車の運転本数は1日最大560本とされています。

6両、8両、9両編成を想定し、JR、南海とも特急(優等)、普通列車がそれぞれ乗り入れます。最高速度は110km/hです。

整備費用と採算性

なにわ筋線は国土交通省の地下高速鉄道整備事業費補助を活用して建設されます。

総事業費は3,297億円で、国、自治体、鉄道事業者が3分の1ずつ負担します。自治体の負担分約1,180億円については、府市で590億円ずつ折半します。

2023年の再評価時の資料では、費用便益比は30年間で1.49、50年間で1.66です。単年度営業収支黒字転換年は16年、累積資金収支黒字転換年は40年で、事業採算性は確保できるとしています。

年間で26.4万人の利用を予測します。

なにわ筋線の沿革

新大阪駅から梅田、中之島を経て難波を結ぶ「なにわ筋線」構想は、1980年代から存在していました。2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として盛り込まれています。

近畿開発促進協議会の2007年6月の協議では、なにわ筋線を「大阪都心を南北に縦断する都市交通線として重要である」と位置づけました。

しかし、大阪を南北に貫く地下鉄線は、すでに御堂筋線、谷町線、四つ橋線、堺筋線と4路線もあり、なにわ筋沿いには繁華街も少ないことから採算性が疑問視され、なかなか具体化しませんでした。

風向きが変わったのは、2008年に橋下徹が大阪府知事に就任してからです。橋下は、大阪の都市軸を東西に広げるためのインフラ整備の一環として、なにわ筋線の建設に前向きな姿勢を見せます。関西空港への直通を前提に「関空活性化に不可欠」と国に働きかけ、国土交通大臣(当時)の金子一義が関空へのアクセス改善策として検討を表明しました。

2009年4月17日には、JR西日本や関西大手私鉄5社・大阪府・大阪市・関西経済界の首脳が懇談会を開催して、「なにわ筋線」の必要性について合意しています。しかし、その後も採算性の問題がついてまわり、事業の具体化はなかなか進みませんでした。

ところが、LCCの関空就航が相次ぎ、インバウンドによる外国人観光客が関西空港に集まるようになると、関西空港の利用者が急増。なにわ筋線の必要性が高まり、議論が進展します。2017年5月23日に、JR、南海、大阪府市の4者に阪急を加えた5者の間で、なにわ筋線建設を進めていくことで一致し、計画概要が明らかにされました。

2018年2月にはアセスメントの環境影響評価方法書が公表され、事業の詳細が明らかにされています。2020年8月に事業認可され、2021年10月に着工しました。開業予定は2031年春としています。

なにわ筋線のデータ

なにわ筋線データ
営業構想事業者 JR西日本、南海電鉄
整備構想事業者 関西高速鉄道
路線名 なにわ筋線
区間・駅 大阪~JR難波、南海新今宮
距離 約7.2km
想定利用者数 約264,000人/日
総事業費 3,297億円
費用便益比 1.49~1.66
累積資金収支黒字転換年 40年
種別 第二種鉄道事業
種類 普通鉄道
軌間 1,067mm
電化方式 直流1500V
単線・複線 複線
開業予定時期 2031年
備考 地下高速鉄道整備事業費補助

※データはおもに『なにわ筋線鉄道整備事業に関する再評価総括表』(2023年度)より

なにわ筋線の今後の見通し

なにわ筋線は大阪~JR難波、南海新今宮間を結ぶ路線ですが、南はJR阪和線、南海本線に乗り入れて、それぞれ関西空港まで直通運転することが決まっています。北は東海道線支線(梅田貨物線)を経由して新大阪まで乗り入れることが決まっており、線形的に、新大阪から先は、普通列車はおおさか東線に乗り入れる可能性が高そうです。

なにわ筋線には、JRの特急「はるか」と南海特急「ラピート」が走ることも決定的になっています。そのため、なにわ筋線開業後は、新大阪~北梅田~関西空港が、JR「はるか」と南海「ラピート」の両者で運行されることになります。

報道によると、両特急は共同運行される方向だそうです。となると、南海「ラピート」もJR新大阪駅に乗り入れるのでしょう。両特急が30分ごとに交互運行し(あわせて15分間隔)、新大阪~大阪~関西空港を結ぶ形になりそうです。

さらに阪急電鉄もなにわ筋線構想に絡んでおり、北梅田~十三~新大阪の新線を独自で建設する予定です(阪急新大阪・なにわ筋連絡線)。この阪急新線は1,067mm軌で建設され、なにわ筋線を経て南海と直通運転することが見込まれています。

なにわ筋線開業後のダイヤは未発表ですが、上述したように、運転本数は1日最大560本とされています。1日18時間営業と仮定して計算すると、平均毎時31本となり、16往復程度の運行本数になります。となると、4~5分間隔くらいの運転本数を想定していることになります。

おそらく両社とも、日中時間帯に毎時6~8往復くらいの枠を持つことになるのでしょう。有料特急がそのうち2往復を使い、無料の一般列車が4~6往復を使うとなると、両社がそれぞれ10~15分間隔で一般列車を運行することになりそうです。

そうなると、たとえばJRは快速と各駅停車が20~30分間隔、南海は急行と普通が20~30分間隔で、それぞれ設定される形になります。ただし、これは筆者の予想に過ぎないことを、ご了承ください。

【参考資料】
なにわ筋線について(大阪市2017年)』(PDF)
なにわ筋線環境影響評価書(一部)』(PDF)
なにわ筋線再評価総括表』(PDF)