大阪モノレール線(本線)は、大阪空港駅から門真市駅まで21.2kmを結ぶ路線です。1990年に千里中央~南茨木間が開業し、1997年に大阪空港~門真市間が開業しました。
現在、門真市~瓜生堂間(仮称)の8.9kmの延伸に着手していて、2033年ごろに開業する予定です。
大阪モノレール延伸の概要
大阪モノレール本線の延伸計画区間は、門真市~瓜生堂の8.9kmです(未設駅は仮称、以下すべて)。途中、松生町、門真南、鴻池新田、荒本の4駅を設置します。軌道は中央環状線に沿って建設しますが、荒本駅付近のみ東側にせり出し、東大阪市道上を走り、東大阪市役所に隣接する形で駅を設けます。終点瓜生堂の北には、中央環状線の未利用地を使って車庫を設置します。
門真南駅では地下鉄鶴見緑地線と接続。鴻池新田ではJR学研都市線と接続。荒本駅では近鉄けいはんな線と接続。瓜生堂では近鉄奈良線と接続します。瓜生堂に近鉄の駅はありませんが、モノレール延伸にあわせて設置される予定です。また、荒本~瓜生堂間に車両基地を設けます。
延伸開業後、門真市~瓜生堂間は17分、瓜生堂~大阪空港は55分で結ばれます。開業後の運行系統や本数について明確な資料はみつかりませんでしたが、既存の大阪モノレール本線の全列車が瓜生堂まで乗り入れるとみられます。
開業予定は2029年度とされていましたが、2024年4月に、4年の延期を発表。2033年頃に後ろ倒しとなりました。
総事業費と費用便益比
延伸区間の需要予測は1日5万3000人(全区間1日16万9000人)です。事業費は事前評価時に1,050億円、2022年の再評価時に1,113億円、2024年の再々評価時に1,864億円と見積もられました。このうちインフラ部が1,442億円、インフラ外部が422億円です。
インフラ部分については、国が791億円、大阪府や東大阪市などの自治体が651億円負担し、車両などのインフラ外部422億円を大阪高速鉄道が負担します。
費用便益比は、2024年の再々評価時に1.23(30年)~1.42(50年)です。
大阪モノレール延伸の沿革
大阪モノレールは、伊丹空港と堺の工業地帯を結ぶという構想の路線です。そのため、現在着手している延伸区間は、当初構想の範囲内です。
1989年の運輸政策審議会答申第10号では、大阪国際空港~門真間が「2005年までに整備することが適当である区間」、門真~茨田~荒本・堺方面と大阪国際空港~伊丹付近~武庫之荘方面が「今後路線整備について検討すべき区間・方向」として示されました。
2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「京阪神圏において、中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として、門真市~瓜生堂のみが盛り込まれ、延伸区間が絞られました。しかし、財政状況が厳しいなか、大阪モノレールの既存区間の経営状況を見極めるということで、計画は凍結状態になってしまいます。
公共交通戦略の位置づけから合意へ
建設へ向け動き出したのは、2012年6月。大阪府戦略本部会議が大阪モノレール延伸を検討することを決めます。2013年4月から事業化に向けた検討を開始し、2014年1月に『大阪府公共交通戦略』で「今後、事業実施の可否について、個別に検討が必要な路線」と位置付けました。
その後、事業負担割合について自治体との協議に移り、2015年7月に東大阪市と合意。着工への環境が整いました。2016年1月15日に行われた大阪府の戦略会議で、大阪モノレール延伸の事業化を意思決定。2019年度の着工、2029年度の開通を目指すとしました。
2019年3月にに都市計画決定、軌道法特許取得、2020年3月に都市計画事業認可取得、同4月に軌道法工事施行認可取得と進み、着工に至っています。
当初、松生町駅の設置予定はありませんでしたが、2021年3月には、門真市~門真南間に松生町駅を設置することで、大阪府、門真市、守口市、大阪モノレールが合意しました。
事業は順調に進んでいるように見えましたが、2024年4月に、事業費の増加と開業時期の後ろ倒しを発表。2029年度の開業が2033年度ごろになる見通しになりました。事業費はインフラ部が約786億円が約1,442 億円になるという、大幅な増額でした。
その他の区間
大阪モノレールには、瓜生堂~堺間の建設計画が残っています。2017年6月には、堺市、八尾市、松原市が、連盟で大阪府に対し、「大阪モノレール計画の堺方面へ延伸に関する要望書」を提出しました。しかし、建設についての議論は進んでいません。
なお、大阪モノレールには、彩都線の彩都西~山手台車庫駅の延伸計画もありましたが、2017年1月に計画中止が決まっています。2019年3月19日に正式に計画廃止となりました。
大阪モノレール延伸のデータ
営業構想事業者 | 大阪高速鉄道 |
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整備構想事業者 | 大阪府(インフラ部) 大阪高速鉄道(インフラ外部) |
路線名 | 大阪モノレール線 |
区間・駅 | 門真市~瓜生堂(5駅新設) |
距離 | 約8.9km |
想定利用者数 | 約53,000人 |
総事業費 | 約1,442億円(インフラ部) |
費用便益比 | 1.23~1.42 |
累積資金収支黒字転換年 | — |
種別 | 軌道事業 |
種類 | 跨座式モノレール |
軌間 | — |
電化方式 | 直流1500V |
単線・複線 | 複線 |
開業予定時期 | 2033年度頃 |
備考 | 社会資本整備総合交付金(インフラ部) |
※データはおもに『事業再々評価書』(2024年度)より。
大阪モノレール延伸の今後の見通し
2016年度に事業化が決定し、2020年に事業着手しており、導入空間もほぼ確保されています。開業予定は2033年度ごろと後ろ倒しされましたが、門真市~瓜生堂間がいずれ開業することは間違いありません。
大阪モノレールは、さらに堺市方面への建設計画も残っています。しかし、瓜生堂~堺間に事業化に向けた動きはまだなく、建設のメドは立っていません。また、彩都線延伸は、2017年に計画断念が決まっています。