東西交通大宮ルートは、大宮-さいたま新都心-浦和美園を結ぶ鉄道新線計画です。中量輸送機関の導入を構想しています。
具体的な計画は進んでおらず、構想段階です。実現の見通しはついておらず、開業予定時期も未定です。
東西交通大宮ルートの概要
さいたま市は、東西方向の軌道系交通機関が貧弱です。とくに、埼玉スタジアム2002に近い浦和美園地区は、大宮、浦和などさいたま市の中心部と隔絶しています。この状態を解消するために構想されているのが、東西交通大宮ルートです。
2016年交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」では「まちづくりが進められている大宮駅周辺地区と浦和美園地区とのアクセス利便性の向上」を期待する路線とされました。同時に、「収支採算性に課題がある」とも指摘されており、「沿線開発や交流人口の増加に向けた取組」などを求められています。
実際のルートは未定です。198号答申時には、LRTを想定したモデルルートとして4案が示されました。
もっとも多くの利用者が見込めるのはルート1案で、大宮駅から埼玉新都市駅に南下し、東へ向かいます。首都高速埼玉新都心線の延伸区間を活用することから「高速道路活用ルート」と名付けられています。
ルート1の総延長は12.0km、総事業費は410億円、輸送密度は7,800人、費用便益比は1.26と見積もられました。大宮~浦和美園間に13個の停留所を設置し、28分30秒で結びます。
段階的整備へ
答申後、さいたま市では地域公共交通協議会東西交通専門部会を設置して、東西交通の導入に向けた議論を開始します。
その資料によると、LRTを採算に乗せるには1日40,000人
程度の利用者が必要で、東西交通大宮ルートでは満たせないとのこと。「モデルルート沿線の現状の移動ニーズではBRT・路線バスの導入が採算ライン」として、まずはBRTの導入を検討しています。
そのうえで、将来的なLRT導入を視野に入れます。いわば「段階的整備」で、第1ステップを「需要創出・利用促進段階」と位置づけ、「既存バス改善や路線バスサービスの充実」を図ります。
つづく、第2ステップを「LRT等の導入段階」と位置づけ、「BRT(専用軌道)、LRTなどを想定」するとしています。
要するに、現時点では、「大宮、さいたま副都心と浦和美園を結ぶバスを強化する」という方針です。したがってLRT計画は遠い将来の構想にとどまり、開業予定目標なども掲げられていません。
東西交通大宮ルートの沿革
東西交通大宮ルートは、2000年の運輸政策審議会答申第18号で「今後整備について検討すべき路線」とされ、「大宮~さいたま新都心~県営サッカースタジアム」が盛り込まれました。
続く2016年の交通政策審議会答申第198号では、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」とされ、「大宮~さいたま新都心~浦和美園」が盛り込まれました。
2017年に改定された「さいたま市都市交通戦略」にも盛り込まれています。2019年からは、さいたま市が「地域公共交通協議会東西交通専門部会」を設けて検討を開始しています。
東西交通大宮ルートデータ
営業構想事業者 | 未定 |
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整備構想事業者 | 未定 |
路線名 | 未定 |
区間・駅 | 大宮~浦和美園 |
距離 | 約12.0km(モデルルート1) |
想定輸送密度 | 7,800人/日 |
総事業費 | 410億円 |
費用便益比 | 1.26 |
累積資金収支黒字転換年 | — |
種別 | 未定 |
種類 | 未定 |
軌間 | 未定 |
電化方式 | 未定 |
単線・複線 | 未定 |
開業予定時期 | 未定 |
備考 | — |
※路線データは「さいたま市地域公共交通協議会東西交通専門部会」の令和5年度資料から。LRTモデルルート1を抽出。
東西交通大宮ルートの今後の見通し
東西交通大宮ルートは、現時点では構想段階で、今後の見通しは立っていません。
さいたま市では、将来的なLRT整備を見据えつつ、まずは路線バスの強化などによる段階的整備を打ち出しています。
まずはBRTとして運行を開始できないか、と模索しているわけです。ただ、専用走行路などを確保するほどの道路空間はなく、実現したとしても、当面は一般道の走行にとどまるとみられます。
「段階的整備」というのは、「鉄道は無理」ということとほぼ同義です。したがって、鉄道や軌道としての東西交通大宮ルートの実現のメドは立っていません。