都営大江戸線大泉学園町延伸

光が丘~大泉学園町~東所沢

都営地下鉄大江戸線は、都内を回る環状部と、都庁前~光が丘間の放射部で構成されます。このうち、放射部の終点光が丘駅から、大泉学園町や東所沢まで延伸する計画があります。これが大江戸線の延伸計画です。

大江戸線は東京12号線と表記されるので、「東京12号線延伸」とも呼ばれます。大泉学園町までの事業化に向けた準備が進められていますが、開業予定時期は未定です。

都営地下鉄大江戸線延伸の概要

都営地下鉄大江戸線(東京12号線)のうち、都庁前~光が丘間の放射部を、大泉学園町を経て東所沢まで延伸しようというのが、大江戸線の延伸計画です。

区間は大きく二つに分かれます。光が丘~大泉学園町間の練馬区内と、大泉学園町~東所沢間の埼玉方面です。このうち、練馬区内の光が丘~大泉学園町間の整備が先行しています。

都営大江戸線延伸地図
画像:東京都練馬区

光が丘~大泉学園町

光が丘~大泉学園町間4.0kmについては、すでに導入空間となる道路(都市計画道路補助230号線)の整備が進んでいます。この整備が完了すれば、地下鉄建設への障害はなくなります。

想定されている駅は、土支田駅(仮称)、大泉町駅(仮称)、大泉学園町駅(仮称)の3駅です。

土志田駅は、地蔵通りとの交点付近で、高松幼稚園西バス停前に駅前広場予定地が確保されています。

大泉町駅は、外環道との交点付近で、もみじやま公園の南側です。

終点の大泉学園町は、大泉学園通りとの交点付近で、ヤマダデンキの横に駅前広場予定地が確保されています。西武池袋線大泉学園駅から北2kmほど離れていますので、西武線とは接続しません。

2016年に交通政策審議会が公表した「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」によれば、光が丘~大泉学園町の想定輸送密度は49,200~50,300人/日。総事業費は900億円とされました。費用便益比は2.0~2.1で、累積資金収支は19年で黒字に転換します。

大泉学園町~光が丘

大泉学園町~東所沢間はまだ構想段階です。

2019年3月に公表された「都市高速鉄道12号線延伸に向けた基礎調査報告書」によりますと、基本ルートの距離は約8.6km。大泉学園町~東所沢の所要時間は約13分です。

想定されている駅は、新座中央、清瀬北部、東所沢の3駅です。

具体的な駅位置は、新座中央駅は新座市馬場付近を想定しています。清瀬北部駅は旭が丘団地付近です。

東所沢駅は、武蔵野線東所沢駅に隣接し、同線と接続する構想です。

基本ルートは地上区間が2.9km、地下区間が5.7kmの約8.6kmで、総事業費は1273 億円です。高架橋主体にした場合は1142 億円、全線地下にした場合は1464 億円です。

都営大江戸線東所沢延伸
画像:都市高速鉄道12号線延伸に向けた基礎調査報告書

基本ルートのほかに、経由地の異なる南側経由ルートも想定されています。大泉学園町から東所沢までを直線的に結ぶルートで距離は約8.1kmと短く、総事業費は1121 億円に抑えられます。

ただし、南側経由ルートの場合、路線が西武池袋線側に寄りすぎて鉄道不便地域の解消につながらないため、報告書では否定的なニュアンスで扱われています。

2016年に交通政策審議会が公表した「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」によれば、大泉学園町~東所沢の想定輸送密度は28,200~28,800人/日。総事業費は1400億円とされました。費用便益比は0.8~0.9で、累積資金収支の黒字転換は見込めません。

東所沢までの事業性には難があるため、大泉学園町から新座市内まで一駅のみ延伸し、新座市内に車両基地を設ける案もあります。

いずれの区間も、実際に建設された場合、運営は大江戸線の既存開業区間である東京都交通局が担うとみられます。開業予定時期は未定です。

都営大江戸線延伸の沿革

2000年の運輸政策審議会答申第18号では、光が丘~大泉学園町間について「2015年までに整備着手することが適当である路線」とされました。また、大泉学園町~武蔵野線方面間については、「今後整備について検討すべき路線」として位置付けられました。

2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」では、光が丘~大泉学園町~東所沢間の延伸が「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として答申されています。

この答申を受け、東京都は2020年度「鉄道新線建設等準備基金」を創設。大江戸線延伸は対象6路線の一つに入りました。

2023年2月21日には、東京都の小池百合子都知事が都議会で、大江戸線の大泉学園延伸について検討会を設置することを表明。事業化に向けて、収支採算性などを調査することを明らかにしました。これにより、大泉学園町までの延伸は実現へ向け、一歩を踏み出しました。

一方、東所沢までの延伸に関しては、沿線自治体が2018年度に「都市高速鉄道12号線延伸に向けた基礎調査」をおこない、報告書を2019年3月に公表しました。

この調査は延伸に向けた課題を整理した段階で、概算整備費などは示したものの、費用便益比などには踏み込んでいません。

都営大江戸線延伸データ

都営大江戸線延伸データ
営業構想事業者 東京都交通局
整備構想事業者 東京都
路線名 都営大江戸線
区間・駅 光が丘~大泉学園町 3駅
大泉学園町~東所沢 3駅
距離 約4.0km(光が丘~大泉学園町)
約8.6km(大泉学園町~東所沢、基本ルート)
想定輸送密度 49,200~50,300(光が丘~大泉学園町)
28,200~28,800(大泉学園町~東所沢)
総事業費 900億円(光が丘~大泉学園町)
1400億円(大泉学園町~東所沢)
費用便益比 2.0~2.1(光が丘~大泉学園町)
0.8~0.9(大泉学園町~東所沢)
累積資金収支 33~36年(光が丘~大泉学園町)
発散(大泉学園町~東所沢)
種別 第一種鉄道事業
種類 普通鉄道
軌間 1,435mm
電化方式 直流1500V
単線・複線 複線
開業予定時期 未定
備考

※総事業費などは『鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果』(2016年、交通政策審議会より)

都営大江戸線延伸の今後の見通し

答申第198号では、光が丘~大泉学園町については、導入空間となりうる道路整備が進んでいることを理由に、「事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき」と前向きな表現になっています。

一方、大泉学園町~東所沢間については、事業性に課題があるとしたうえで、「事業性の確保に必要な沿線開発の取組等を進めた上で、事業主体を含めた事業計画について十分な検討が行われることを期待」と、消極的な表現になっています。

前述のとおり、練馬区内では地下鉄の導入区間として都市計画道路が先行して整備中で、その地下に大江戸線と途中駅が収まる予定です。そのため、この道路整備が完了すれば、大江戸線の大泉学園町までの延伸にはメドが立ちます。

2023年度には、東京都内に事業着手へ向けた検討会が設けられ、実現へ向け大きく前進しました。練馬区では推進基金を設けており、2024年度で80億円に達していて、費用面の手当も進んでいます。

こうしたことから、事業化への可能性はかなり高いといえるでしょう。開業予定時期は未定ですが、建設期間を10年とすれば、2040年ごろが一つのメドになるでしょう。

一方で、大泉学園町~東所沢間は、いまのところ構想の域を出ていません。沿線自治体の新座市などの動きを見ても、まずは大泉学園町までの延伸事業着手を見てからという印象です。毎年のように、国交省へ要望をしているものの、実現へ向けて機運が高まっているようにはみえません。