東京メトロ南北線品川延伸

品川~白金高輪間

東京メトロ南北線の白金高輪~品川間の延伸構想です。当初は、「都心部・品川地下鉄構想」とも呼ばれていました。すでに事業着手しており、2022年3月に鉄道事業許可を受けています。開業予定時期は2030年代半ばです。

東京メトロ南北線延伸の概要

東京メトロ南北線延伸は、白金高輪駅と品川駅を結ぶ地下鉄計画です。

白金高輪駅には東京メトロ南北線と都営三田線が乗り入れており、2面4線のホームがあります。このうち外側2線が目黒方面に延びており、内側の2線が白金高輪止まりになっています。この内側2線を品川方面に延ばします。内側2線は南北線が使用していることもあり、品川延伸の際も南北線優先のダイヤが組みやすくなります。

2023年に公表された環境影響評価書によりますと、延伸線は白金高輪駅内側からの留置線を延ばし、目黒通りから白金台駅付近で東に向きを変え、都営浅草線高輪台駅をかすめた後、第一京浜(国道15号)に入り込む形で南方向に転じます。

途中駅は設けません。白金台駅や高輪台駅をかすめる部分も通りますが、既存駅と深さが倍くらい違うこともあり、駅を設けないという判断になったようです。

東京メトロ南北線品川延伸
画像:都市計画案及び環境影響評価書案のあらまし 東京都市計画 都市高速鉄道第7号線東京メトロ南北線の分岐線(品川~白金高輪間)計画について
南北線品川延伸
画像:環境影響評価書案の概要― 都市高速鉄道第7号線品川~白金高輪間建設事業 ―

路線の概要

品川駅は南北方向にホームを設置し、JR線や京急線と平行する形となります。ホームは島式1面2線で、8両編成に対応します。

計画区間は約2.8km。都市計画変更区間は2.5km。その差0.3kmは、白金高輪駅の既存の留置線部分に相当します。0.3kmは留置線を活用し、実際に建設するのが2.5kmということです。

工事予定期間は約10年を見込みます。開業予定は明確ではありませんが、工事が順調にいったとして、2030年代半ばになりそうです。

整備主体は東京メトロで、第1種鉄道事業者となります。上下分離の制度は用いません。

東京メトロ南北線延伸区間の運転計画

南北線品川延伸後の運転計画は、毎時最大上下各12本。つまりラッシュ時に5分間隔の運転です。終日で上下各195本を運転しますので、日中時間帯は毎時8本程度、つまり7.5分間隔になるとみられます。

品川発着の全ての列車がメトロ南北線(麻布十番方面)または都営三田線(三田方面)と直通運転をします。調査段階では、全時間帯で毎時12本と仮定し、南北線と三田線に半数ずつ乗り入れるのを基本としながら、日中時間帯は南北線方面を毎時8本、三田線方面を毎時4本と想定していました。

実際には、日中時間帯の運転は毎時8本にとどまりそうです。白金高輪折り返しが毎時8本(南北線、三田線各4本)あるので、これをそのまま品川方面に持ってくることになるかもしれません。その場合、南北線と三田線が半数ずつの乗り入れとなります。

新線区間の所要時間は4分程度で、品川~六本木一丁目間の所要時間は9分となります。品川~溜池山王間は12分程度になるでしょう。

東京メトロ南北線延伸の沿革

東京メトロ南北線延伸は、東京都が2015年7月10日に発表した『広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫』で、「都心部・品川地下鉄構想」(品川地下鉄)として、はじめて明記されました。

それを受けて、2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』では、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」と位置づけられました。

2019年3月に国土交通省の交通政策審議会が『東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査』の調査結果を発表。そのなかで、「都心部・品川地下鉄構想」の概要が初めて示され、「関係者間で事業化に向けたより具体的な検討が進められるべきである」と明記されました。

二つのルートを検討

2019年調査では、ルートは2つ検討されました。ひとつは、国道1号から東に折れ、整備中の環状4号の地下を抜けて、国道15号の地下を南に折れて、JR・京急線と平行に品川駅を配置するルート(Aルート)。もう一つは、国道1号を南に進み、柘榴坂の下を東へ向かい、国道15号やJR・京急線と直行する位置に品川駅を配置するルートです(Bルート)。

輸送人員を予想したところ、Aルートが1日13.4万人、Bルートが7.8万人となり、他路線との乗換移動距離が比較的短いAルートの方が多くなることが示されました。

東京メトロ南北線品川延伸
画像: 東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査

費用便益比と採算性

品川地下鉄の需要推計や事業性については、Aルートの場合で輸送人員が1日13.4万~14.3万人、費用便益比が2.5~3.1、収支採算性(累積資金収支)は16~19年目に黒字転換します。メトロの既存線の減収の影響を考慮した場合、24~28年目の黒字転換です。したがって、社会経済条件に拠らず、目安とされる開業後40年以内には累積赤字が解消される結果となっています。

品川地下鉄の整備により、南北線(目黒→白金台)の混雑率は17ポイント緩和し、銀座線(新橋→虎ノ門)は7ポイント緩和すると予想しています。新橋駅で銀座線に乗り換えて溜池山王方面に向かっていた旅客が、品川地下鉄経由で南北線に流れるという見通しで、これらの減収を考慮しても、24~28年目には黒字転換するということです。

また、事業費800億円(建設費763億円、車両費37億円)、建設期間は10年間を要すると見積もられました。

答申371号

こうした結果を受け、2021年7月に交通政策審議会答申第371号『東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について』がまとめられ、東京メトロ南北線の白金高輪~品川間と、有楽町線の豊洲~住吉間の延伸について、それぞれ整備を進めるのが適切と示されました。これにより、事実上、東京メトロ南北線延伸が決まりました。

答申371号では、延伸について、国や東京都が建設費を補助し、東京メトロに建設・運営を求めるべきとしました。一方で、国と都がそれぞれ保有する東京メトロ株の半分を売却し、上場する方向性も示しました。要は、東京都が東京メトロ株上場を認め、株を放出する代わりに、メトロが南北線と有楽町線の延伸を自力で建設するという取引をさせたわけです。

これを都、メトロが受け入れ、南北線の品川延伸が、有楽町線の住吉延伸とともに、実現することになりました。

答申371号では、事業費1600億円、輸送密度7.3~7.5万人、費用便益比1.2、累積資金収支25~16年と試算されました。

2022年1月28日に南北線品川~白金高輪間2.5kmと有楽町線豊洲~住吉間4.8kmの延伸について、鉄道事業許可を国土交通大臣に申請。2022年6月には東京都が都市計画の素案を公表しました。2023年6月には、東京都が環境影響評価書を公表しています。

鉄道事業申請時の事業費は1310億円と見積もられています。2022年に公表した「地域公共交通利便増進実施計画(東京メトロ南北線の分岐線(品川~白金高輪))」によれば、1日15万人の利用を見込みます。

東京メトロ南北線品川延伸データ

東京メトロ南北線延伸データ
営業構想事業者 東京メトロ
整備構想事業者 東京メトロ
路線名 南北線
区間・駅 白金高輪~品川
距離 2.5km(全体で2.8km)
想定輸送人員 7.33万~7.58万人/日
総事業費 1310億円
費用便益比 1.2
累積資金収支 25~26年
種別 第1種鉄道事業
種類 普通鉄道
軌間 1067mm
電化方式 1500V
単線・複線 複線
開業予定時期 2030年代半ば
備考 都市鉄道整備事業費補助、財政投融資

※総事業費は鉄道事業申請時(2022年)のもの。費用便益比などは『東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について』の参考資料(2021年)による。このときの想定総事業費は1600億円。

東京メトロ南北線延伸の今後の見通し

都心部・品川地下鉄構想は、2015年に東京都が提案した新しい計画です。構想自体には無理はなく、リニア中央新幹線の起点となる品川の重要性は今後高まることからも、品川への地下鉄建設は必要であるという認識は衆目の一致するところ。そのため、計画は順調に進んでいます。

すでに、2022年に鉄道事業許可を申請して、2023年には環境アセスにも着手しており、いずれ完成することは間違いなさそうです。

懸念があるとすれば、導入道路となる環状4号線の進捗状況でしょう。工事期間は、2032年度までとされていて、これが遅れると、南北線の工事にも影響を与えそうです。

路線全体の距離は2.5kmと短いので、着工してしまえば開業まで長い時間はかからないと思われます。しかし、都心の工事に遅延は付きものなので、2030年代半ばという予測の確度については、なんともいえません。