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横浜環状鉄道

横浜環状鉄道(グリーライン延伸)

横浜環状鉄道は、鶴見から日吉、港北ニュータウン、中山、二俣川、東戸塚、上大岡、根岸を経て、元町・中華街に至る鉄道路線計画です。途中の日吉-中山間13.1kmが横浜市営地下鉄グリーンラインとして開業済みです。 したがって、横浜環状鉄道は、おもにグリーンラインの延伸計画です。元町・中華街~根岸間については、みなとみらい線の延伸として計画されています。 横浜環状鉄道は現時点では構想段階で、事業化や開業時期の予定などは決まっていません。 横浜環状鉄道延伸の概要 横浜環状鉄道は、鶴見から日吉、港北ニュータウン、中山、二俣川、東戸塚、上大岡、根岸を経て元町・中華街に至る鉄道路線です。このうち、日吉~港北ニュータウン~中山間が横浜市営地下鉄グリーンライン(横浜市高速鉄道4号線)として開業しています。 横浜環状鉄道は、このグリーラインを鶴見・二俣川方面に延伸する一方、みなとみらい線を根岸方面に延伸する構想です。 路線の建設の意義としては、以下のような点が挙げられています。 ・市域の主要な生活拠点を結び、横浜市の鉄道ネットワークのより一層の充実が図られる路線である。 ・横浜駅を中心とした放射状の鉄道路線を短絡し、災害等による輸送障害発生時の代替経路が確保される。 ・市域の主要な生活拠点を乗り換えなしでつなぐことにより、人の流れの増加、業務圏・商圏の拡大などが期待できる。 整備後は、日吉-鶴見が11分、中山-二俣川が11分、二俣川-東戸塚が9分、東戸塚-上大岡が8分、上大岡-根岸が6分、根岸-元町・中華街が9分で結ばれるとしています。ルートや途中駅などの詳細は未定です。   概算事業費と概算事業費 全体を整備した場合の概算事業費は、概算7,700億円と見積もられています。区間別の試算は以下の通りです。 日吉-鶴見(2021年度試算) ・想定利用客数:35,000人~49,000人/日 ・建設費:1,300億~1,400億円 中山-二俣川(2016年度試算) ・想定利用客数:25,000人~30,000人/日 ・建設費:1,400億~1,600億円 根岸-元町・中華街(2016年度試算) ・想定利用客数:18,000人~20,000人/日 ・建設費:1,400億~1,600億円 この試算は、鶴見-根岸間はグリーンラインのリニア式地下鉄を建設するという前提になっています。また、根岸-元町・中華街はみなとみらい線に乗り入れるとして、従来型鉄道での建設が想定されています。 したがって、横浜環状鉄道を全線で整備した場合、根岸が分界点となりそうです。 事業化の見通しは? 全区間において、現時点で事業着手の予定はありません。2022年3月14日の横浜市議会国際・経済・港湾委員会で、副市長は横浜環状鉄道の計画について、「計画として生きている状況」と説明したものの、「事業としてなかなか難しい。要するに、投資してもすぐなかなか黒字にならないという大変厳しい状況」と答弁しています。 また、2023年10月11日の横浜市議会決算第一特別委員会では、グリーラインの二俣川延伸について問われた副市長が「中山駅からズーラシアまで鉄道が整備されれば、来園者の増加あるいはグリーンラインの利用者増につながる可能性はある」としながら、「多額の事業費がかかるわりに乗るお客さんが少ない」「ズーラシアの入園者の方々も乗るだろうという前提でやってみてもちょっと厳しい」などと、事業性に課題があるとしました。 そのうえで、「例えば工事費をもっと安くできないか、あるいはもっと人が乗るように沿線でにぎわい施設とかまちづくりを進められないかといったこととセットで整理をしていかないとなかなか難しいというのが現状」と答弁しています。 横浜環状鉄道の沿革 横浜環状鉄道計画の前身となる地下鉄計画は、1966年の都市交通審議会答申第9号に掲載されています。4号線として「鶴見-末吉橋-勝田-元石川付近」が盛り込まれました。 その後、1985年の運輸政策審議会答申第7号では、「日吉から高田町を経由して港北ニュータウンに至る路線」「その先横浜線方面への延伸」、「東神奈川からみなとみらい21地区を経由して元町付近に至る路線」「その先根岸方面への延伸」、「根岸から上大岡、東戸塚を経由して鶴ヶ峰に至る路線」が盛り込まれました。 2000年の運輸政策審議会答申第18号では、これらを統合して、「横浜環状鉄道(仮称)の新設」として、元町-鶴見間について2015年までに整備着手が適当である路線として位置付けました。 このうち、日吉-中山間が2001年1月30日に着工され、2008年3月30日にグリーンラインとして開業しました。 しかし、この区間以外については、着工に向けた準備は進んでいません。横浜市ではブルーラインの新百合ヶ丘延伸のメドが経った後に、横浜環状鉄道の事業化に向けた詳しい調査をする方針のようです。 横浜環状鉄道のデータ 横浜環状鉄道データ 営業構想事業者 未定 ...
小田急多摩線延伸

小田急多摩線相模原延伸

小田急多摩線は、新百合ヶ丘-唐木田を結ぶ鉄道路線です。唐木田から先、相模原駅を経て上溝駅までの延伸計画があり、さらに愛川町方面から厚木市まで延ばす構想もあります。唐木田-上溝間については、2016年の国土交通省交通政策審議会答申198号に盛り込まれました。 唐木田-上溝間に、途中2駅(うち1駅が相模原駅)が設けられる計画です。相模原駅までの先行開業が見込まれています。開業予定時期は未定です。 小田急多摩線延伸の概要 小田急多摩線は1974年に新百合ヶ丘-小田急永山間が開業し、1990年に唐木田まで延伸されました。これを上溝まで延伸しようというのが小田急多摩線の延伸計画です。 小田急多摩線延伸は、相模原市と町田市が要望しており、両市は2014年5月26日、多摩線延伸推進に関する覚書を取り交わし、中央新幹線開業が予定される2027年までの実現を目指すことで合意しました。 2016年に8月には「小田急多摩線延伸に関する関係者会議」(関係者会議)を設置。小田急、JR、学識経験者などを交え、2019年2月まで7回にわたり延伸の採算性などを検討しました。その結果をまとめた報告書が2019年5月に公表されています。 ルート詳細 小田急多摩線の延伸ルートは下図の通りです。 唐木田駅の先にある小田急唐木田車庫の東側2線を延伸し、町田市に入り、小山田地区付近に「中間駅」を設置。さらに返還された米軍相模総合補給廠跡を縦断し、相模原駅で横浜線と交差します。 相模原駅は地下で、地下道でJR横浜線の相模原駅と接続します。 その先は県道503号の下を通り相模線上溝駅に到達します。上溝駅は高架で、JR相模線と平行に駅を設置し、改札口の位置も揃えます。   運行形態と所要時間 総延長は8.8km、設計最高速度は100km/hで、開業した場合、小田急多摩センター-上溝が約8分、新宿-相模原が48分、新宿-上溝が51分で結ばれるとしています。 急行運転も想定しており、ピーク時の急行は唐木田駅と中間駅を通過します。オフピーク時の急行は両駅にも停車し、多摩センター~上溝間は各駅停車となります。 運転本数は、ピーク時に毎時9本(急行3本、各停6本)、オフピーク時に毎時6本(急行3本、各停3本)と想定しました。10分間隔をベースとし、ラッシュのみ急行を20分間隔で追加設定する形です。 多摩センター駅での追い越しを可能にするために、同駅を2面4線化します。また、多摩センター駅の唐木田寄りに引き上げ線も設置します。 輸送人員と建設費 2033年に開業すると仮定して、想定輸送人員は2033年に1日あたり73,300人、2045年に67,100人となっています。想定輸送密度は2033年に50,500人キロ、2045年に46,000人キロです。 概算建設費は1,300億円で、単年度資金収支で黒字転換まで11年、累積資金収支は黒字転換まで42年です。費用便益比については、開業後30年が1.2、50年が1.4です。 費用便益比は基準となる1.0を上回るものの、累積資金収支は基準となる40年を下回りませんでした。このため、報告書では、相模原駅の位置を変更し乗り換え利便性を改善する案と、相模原-上溝間の建設を先送りして唐木田-相模原間を先行開業する段階的整備案を検討。段階的整備案では、累積資金収支が26年となり、劇的に改善することがわかりました。 この報告書を受けて、相模原市の本村賢太郎市長は「唐木田―相模原の先行整備を軸に検討を進める」との姿勢を示しました。相模原先行開業での事業化方針を明らかにしたわけです。 相模原までの開業時期は未定ですが、報告書では建設期間を約6年と想定していて、2033年開業と仮定しています。ただし、相模原市は行財政改革のメドが付く2027年度までは事業着手をしない方針を示していて、調査のみにとどめています。 また、相模原先行整備案が浮上したため、相模原-上溝間の延伸時期は見通せなくなりました。 上溝から先、愛川町に入り、相模川西岸を本厚木まで延伸する構想もあります。ただ、上溝以遠は構想段階で、ルートや事業費などの詳細案は出ていません。 小田急多摩線延伸の沿革 多摩センター開業まで 1958年、小田急電鉄は、小田原線鶴川駅を起点とし、横浜線矢部駅、相模線上溝駅などを経由して津久井郡城山町(現・相模原市緑区)へ至る21.4Kmの「城山線」の免許申請を行いましした。この路線は結局実現しなかったのですが、小田急の上溝乗り入れの原点は、この城山線にあるともいえます。 多摩ニュータウンの開発が決まると、1964年に、小田急は喜多見駅を起点とし、稲城本町、多摩(多摩センター)、横浜線橋本駅を経由し城山町へ至る30.5Kmの新線建設免許を申請しました。これは、喜多見-稲城本町、稲城本町-城山間に分けて認可されます。 しかし、喜多見付近の住民から反対運動が起き、1967年に喜多見-多摩センター間の計画を放棄し、新たに新百合ヶ丘-多摩センター間の免許を受けました。この時点で、小田急多摩線は、新百合ヶ丘-多摩センター-橋本-城山に至る路線として計画されていたわけです。 1975年に小田急多摩線は小田急多摩センターまで開業します。しかし、多摩センター以西は京王相模原線と競合することもあり、小田急は1987年に小田急多摩センター-城山間の免許を失効させました。 さらなる延伸へ 城山延伸をあきらめた小田急は、多摩センターから南西方向への延伸を試みます。1990年3月に唐木田まで延伸し、唐木田駅の先に車両基地を設置しました。車両基地には留置線とは別に本線用線路が数百メートルほど敷かれ、さらなる延伸に備えた形となっています。 町田市、相模原市でも、小田急多摩線の延伸を求める声は強く、2000年の運輸政策審議会答申第18号で「唐木田から横浜線・相模線方面への延伸」が「今後整備を検討すべき路線」として盛り込まれました。 2006年8月には、ルート上にある在日米軍相模総合補給廠の一部返還が決定。これを受け、町田市、相模原市では、2006年11月に「小田急多摩線延伸検討会」を設立し、小田急などの協力を得て延伸の検討を進めました。2011年には、両市による「小田急多摩線延伸実現化検討調査」の結果をまとめ、これを公表しました。 唐木田から上溝に至る経路は、このときにおおむね決まり、途中駅も3駅とされています。 リニア開業を視野に 2012年7月に、検討会メンバーに学識経験者、国、東京都、神奈川県、多摩市を加えた「小田急多摩線延伸計画に関する研究会」を設置し、より深度化された検討を実施。2014年3月に調査結果を「小田急多摩線延伸計画に関する研究会報告書」としてまとめ、これを公表しています。 2014年5月には、町田市と相模原市が、協力して小田急多摩線延伸の取組みを進めることについて覚書を交わし、リニア中央新幹線の橋本駅開業する2027年度を開業目標としました。 2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』では、小田急多摩線の延伸(唐木田~相模原~上溝)が「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として盛り込まれています。 答申198号では、収支採算性の確保などの課題が示され、これに関する意見交換・検討を行うため、町田市、相模原市などでは「小田急多摩線延伸に関する関係者会議」を2016年8月に新たに設置。課題の解決に向け検討し、その報告書が2019年5月に公表されました。その内容は上記の通りです。 上溝より先、愛川、厚木方面への延伸については、2009年7月に相模原市、厚木市、愛川町及び清川村により「小田急多摩線の延伸促進に関する連絡会」が設立され、検討が進められることになりました。2014年10月には取組状況報告を公表。JR相模線上溝駅から本厚木駅方面に延伸するルートについて、今後検討の深度化を図っていくこととしました。 小田急多摩線延伸のデータ 小田急多摩線延伸データ 営業構想事業者 小田急電鉄 ...
埼玉高速鉄道延伸

埼玉高速鉄道岩槻延伸

埼玉高速鉄道は、赤羽岩淵~浦和美園間14.6kmを結ぶ鉄道路線で、赤羽岩淵から東京メトロ南北線に直通運転しています。終点の浦和美園から岩槻市を経て蓮田市まで延伸する計画があります。 埼玉高速鉄道は地下鉄の「東京7号線」と表記されるので、「地下鉄7号線延伸」とも呼ばれます。開業予定時期は未定です。 埼玉高速鉄道線延伸の概要 埼玉高速鉄道(地下鉄7号線)を、岩槻市、蓮田市まで延伸しようというのが、埼玉高速鉄道の延伸計画です。2014年(平成26年)の『地下鉄7号線延伸に関する報告書』で概要がまとめられています。 それによると、浦和美園駅~岩槻駅間の7.2kmが「先行整備区間」とされています。途中駅(いずれも仮称)として、埼玉スタジアム駅、中間駅の2駅を設置します。岩槻駅では、東武野田線(アーバンパークライン)と連絡します。 埼玉スタジアム駅は、サッカーの試合が行われるときのみ営業する臨時駅との位置づけでしたが、常設駅にする方向です。また、中間駅の位置は、目白大学岩槻キャンパス付近が想定されているようです。 浦和美園~岩槻間のほとんどが高架構造ですが、岩槻駅周辺のみ地下路線となります。 岩槻~蓮田間は「計画検討区間」とされ、途中に中間駅を設置することが検討されています。経路や中間駅の位置は未定ですが、大規模団地のアーバンみらい付近に中間駅を設けるルートが有力で、総延長は6.5kmとなります。蓮田駅では、JR宇都宮線と連絡します。 いずれの区間も、実際に建設された場合、運営は埼玉高速鉄道が担うとみられます。現時点では、事業性に課題があり、計画内容の精査をおこなっています。 埼玉高速鉄道延伸の沿革 2000年の運輸政策審議会答申第18号では、浦和美園~岩槻~蓮田について「2015年までに開業が適当である路線」とされました。 これを受け、2003年には、埼玉県、さいたま市、岩槻市が「地下鉄7号線に関する基本的考え方」を4原則2課題として整理。2005年には「埼玉高速鉄道検討委員会」が岩槻駅で東武野田線への直通運転を検討、大宮ルートと春日部ルートの2方向の案が議論されました。 しかし、東武野田線の設備などの事情で、乗り入れは不可能との結論が出て、東武野田線岩槻駅地下部に駅を建設する方向でまとまりました。 2011年度には、埼玉県とさいたま市による「地下鉄7号線延伸検討委員会」が設置され、2012年3月に提言をまとめました。「B/Cと採算性は一般的な目安に届いていない」とし、「採算性を改善させ、B/Cを向上させるための延伸実現に資する方策」の検討が必要という結論になっています。   検討委員会は同時に「沿線地域の活性化・開発を進めることで、プロジェクトの評価を高めることは可能」としました。これを受けて、さいたま市は同年4月に「地下鉄7号線延伸実現方策検討会」を設置して課題を整理。最終的に、2012年10月に、さいたま市は事業着手を延期し、沿線のまちづくりを進めて、5年後の着手を目指すこととなりました。 2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』では、浦和美園~岩槻~蓮田間の延伸が「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として盛り込まれています。ただし「事業性に課題がある」とし、「事業性の確保に必要な需要の創出に繋がる沿線開発や交流人口の増加」などが求められました。 これを受け、さいたま市では、「地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会」を設置して協議を実施。2018年2月に、浦和美園~岩槻間について、「沿線開発と快速運転を行えば、B/Cと採算性が基準に達する」という結論を得ています。快速列車の想定停車駅は以下の通りです。 このとき、浦和美園~岩槻間の総事業費は860億円が見込まれました。 この報告後、さいたま市では中間駅のまちづくりの方針などを定め、事業化への準備を進めました。2021年6月には、清水勇人市長が「2023年度中に鉄道事業者に対する要請を行う」と市議会で表明。事業化への準備を進めることを明らかにしました。 しかし、その後、詳細な調査をおこなうと、資材の高騰などで建設費が増加することが明らかになります。2024年1月に、市側は工事費が860億円から1300億円に膨らむことを市議会特別委員会に報告。概算工期についても、れまで7年とされていたところ、昨今の人手不足が今後も恒常的に継続すると仮定した場合、18年程度となるとしました。 こうした調査結果をうけ、さいたま市は事業化要請を断念。整備計画、収支計画、運行計画について「課題解決」が必要とし、鉄道・運輸機構と埼玉高速鉄道に対し「技術的な協力・支援」を要請しました。両者はこれを受諾して、計画内容の精査をおこなっています。 埼玉高速鉄道線延伸のデータ 埼玉高速鉄道線延伸データ 営業構想事業者 埼玉高速鉄道 整備構想事業者 未定 路線名 埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線 区間・駅 浦和美園~埼玉スタジアム~中間駅~岩槻~蓮田 距離 浦和美園~岩槻7.2km 岩槻~蓮田6km 想定利用者数 20,200~27,500人/日(浦和美園~岩槻) 総事業費 1,300億円 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 未定 種類 普通鉄道 軌間 1067mm 電化方式 直流1,500V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 都市鉄道利便増進事業 ※データはおもに『地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会 報告書』(2017年度)より。総事業費は2024年のもの。 埼玉高速鉄道線延伸の今後の見通し 埼玉高速鉄道は盲腸線になっており、岩槻まで接続させることには意味があります。大宮から浦和美園まで鉄道だけでアクセスが可能になり、さいたま市内の鉄道のミッシングリンクを埋めることができるからです。したがって、さいたま市として意義のある事業といえます。 そのため、2000年の運輸政策審議会答申第18号以来、埼玉県、さいたま市は、埼玉高速鉄道の岩槻延伸に関して、強い意欲で望んできました。ただ、浦和美園エリアの人口がなかなか増えず、採算面の課題をクリアすることができないうえ、埼玉高速鉄道の経営難もあり、延伸着工には踏み切れませんでした。 埼玉県などは、2015年に埼玉高速鉄道に対し、事業再生ADRという私的整理に踏み切り、経営再建にメドを付けました。さらに2016年の交通政策審議会答申第198号答申を受けて、ようやく検討に入る段階に至りました。 2018年には、さいたま市が設けた「地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会」で、浦和美園~岩槻間について、「沿線開発と快速運行をすれば採算が取れる」との試算を得ました。試算内容を精査すると帳尻あわせの感もぬぐえませんが、事業化に向けて一つの弾みになったのは事実でしょう。 2021年には、清水市長が、埼玉高速鉄道への事業化要請をする姿勢を明らかにしたことで、事業着手への期待が高まりました。その後、建設費の高騰などで再検討を迫られていますが、浦和美園~岩槻間に限れば、いずれ着工に漕ぎ着ける可能性が高いといえます。とはいえ、直近の建設費の高騰を考えると、採算性のカベは厳しく、まだ不透明感は深いともいえます。 岩槻~蓮田間は、いまのところ構想の域を出ていません。ミッシングリンクを埋める意義も小さい路線なので、さいたま市には、着工へ向けた情熱もみられません。 郊外型ニュータウンの人口減少が始まっているいま、岩槻~蓮田間の事業化はかなり困難というのが正直な印象です。

宇都宮ライトレール教育会館前延伸

宇都宮ライトレール(ライトライン)は栃木県宇都宮市と芳賀町を結ぶLRT(路面電車)です。 JR宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地14.6kmを結びます。さらに、宇都宮西口、東武宇都宮駅を経て教育会館前までの延伸が計画されています。 宇都宮ライトレール延伸の概要 宇都宮ライトレールは、宇都宮市と芳賀町を結ぶLRT路線です。JR宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地の約14.6kmが2023年8月に開業しました。 JR宇都宮駅西口方面の延伸計画は、宇都宮駅東口から大谷観光地付近までが検討され、教育会館前までの約5kmが整備区間とされました。   JR東北本線を高架で越えて、宇都宮市中心部西側にLRTを延伸します。   JR宇都宮駅西口から教育会館前まで、12箇所の停留所が計画されています。ただし、停留所の最終的な配置は未決定です。   教育会館前までの延伸は、2025年度に軌道事業の特許申請をおこない、2030年代前半の開業を目指します。 さらに、東武宇都宮線に乗り入れる計画もあります。東武宇都宮駅ビルの建て替えにあわせたタイミングで東武線に乗り入れ乗り入れられるように線路を接続する構想です。 2017年5月に栃木県経済同友会の地域振興委員会が提言した「トチギの未来夢計画」では、東武宇都宮駅でのLRT乗り入れ計画のイメージ図が記されています。 ただし、東武直通はまだ構想段階で、具体的な計画はありません。 宇都宮ライトレール延伸の沿革 宇都宮市では、東西の公共交通機関がバスしかなく、渋滞により定時性が確保できないなどの課題がありました。これを克服するため、新交通システムとしてLRT導入が検討され、2007年度に事業化に向けた本格的な調査が行われました。 導入に関しては賛否両論ありましたが、2013年3月、宇都宮市の「東西基幹公共交通の実現に向けた基本方針」で、LRT導入の方針が正式に示されました。 LRTの事業化に向けて詳細検討を行うため、「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」が設置されました。2015年11月には第三セクターの宇都宮ライトレール株式会社が設立され、事業が本格的にスタートします。 2016年に軌道法の特許を申請し、2016年9月に認可。2017年9月に工事認可を申請、2018年3月に着工しています。開業予定は2022年3月とされましたが、1年あまり遅延し、最終的に2023年8月26日に開業しました。 開業の前後に、宇都宮市では、早くも宇都宮駅西口方面への延伸事業に着手します。2022年8月22日の第34回芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会では「JR宇都宮駅東口停留場~宝木町1丁目・駒生1丁目付近(教育会館付近)」までの約5kmを整備区間と設定することを明らかにしました。 2024年2月1日の宇都宮市議会に公表した資料では、宇都宮駅東口~教育会館までに12箇所の停留所を設置する「イメージ」を公表。2025年度に軌道事業の特許申請するスケジュールとしています。開業予定は2030年代前半です。 宇都宮ライトレール延伸のデータ 宇都宮ライトレール延伸データ 営業構想事業者 宇都宮ライトレール 整備構想事業者 宇都宮市 路線名 未定 区間・駅 宇都宮駅東口~教育会館前 距離 約5km 想定利用者数 -- 総事業費 約400億円 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 軌道事業 種類 軌道 軌間 1067mm 電化方式 直流750V 単線・複線 複線 開業予定時期 2030年代半ば 備考 社会資本整備総合交付金 ※データはおもに『第34回芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会資料』より。 宇都宮ライトレール延伸の今後の見通し 宇都宮ライトレールの駅東側開業区間は、想定以上の利用者を記録して順調です。これを受け、駅西側の教育会館方面への建設も加速しそうです。 開業済区間の利用状況が良好なため、教育会館方面への延伸に対する反対の声は小さく、順調に実現する可能性が高そうです。順調にいけば、開業予定は2030年代半ばです。 将来的な東武鉄道への乗り入れは何ともいえませんが、東武百貨店建て替えのタイミングでの実現性は小さくありません。東武百貨店は2030年代ごろの建て替えが見込まれていますので、教育会館までの開業後に事業着手となるかも知れません。
ひたちなか海浜鉄道湊線延伸

ひたちなか海浜鉄道湊線延伸

ひたちなか海浜鉄道湊線は、茨城県ひたちなか市を走る地方鉄道です。勝田~阿字ヶ浦間14.3kmを結び、これを国営ひたち海浜公園西口前まで延伸する計画があります。計画は二段階で進められ、最初の区間は2030年春の開業を目指しています。 ひたちなか海浜鉄道港線延伸の概要 ひたちなか海浜鉄道湊線は、かつては茨城交通の路線でした。2008年に第三セクター化され、現路線名となっています。勝田~阿字ヶ浦間14.3kmを結ぶ非電化路線です。 一時は廃止も議論されたローカル私鉄ですが、第三セクター後に経営が持ち直し、阿字ヶ浦駅の先にある国営ひたち海浜公園までの延伸案が浮上しました。 ルート案は総延長約3.1km。阿字ケ浦駅から北上し、海浜公園の南側外周に沿って進み、公園中央口を超えて公園西口付近を終点とする案です。 当初は一括開業の予定でしたが、物価上昇などの影響を受けて、工事を二段階に分けることを決定。国営ひたち海浜公園の南口付近に新駅を整備し、そこまでの区間1.4kmを先行して開業する方針に変更しました。 終着駅は、海浜公園西口の翼のゲート付近に設置され、バスターミナルも併設される計画です。物産品販売や飲食を提供できる観光拠点の整備も見込んでいます。周囲にはアウトレットモールやホームセンター、家電専門店などの大規模ショッピングセンターがあり、買い物にも便利な立地です。 概算事業費とスキーム 概算事業費は、当初約65億円とされましたが、2018年2月に約78億円に見直され、さらに先行開業区間約59億円、残りの区間が約67億円の、計126億とされました。鉄道事業再構築事業として国の支援を仰ぐ予定です。 2024年度中に鉄道事業再構築実施計画を策定し、2025年度以降に先行区間で事業着手します。先行区間の開業予定は2030年春です。   ひたちなか海浜鉄道湊線延伸の沿革 ひたちなか海浜鉄道湊線は、もともと茨城交通の運営でした。延伸計画の古い歴史は定かではありませんが、現実的な計画として浮上したのは、2013年2月27日のひたちなか市長の記者会見が初めてとみられます。市長は「延長をこれから検討する」旨の発言をし、2013年度予算で調査費が計上されました。 2014年2月には、延伸ルート4案を公表。2016年4月18日に、そのうちのひとつに絞ったことを発表しました。2016年12月には、2024年度運行開始とするスケジュール案も公表しています。 2020年8月11日に国土交通省に事業許可を申請。2021年1月15日に第一種鉄道事業が許可されました。このときは運行開始予定を2024年度とし、22年1月までの工事施工認可申請を目指しました。 しかし、新型コロナウイルスの影響で関係者との協議が遅れ、同月に期限延長を国に申請。2023年3月末が新たな期限でしたが、それにも間に合わず、再度延期しました。 その後、2023年12月12日に、ひたちなか市が議会で二段階開業案を公表。海浜公園南口まで1.4kmを先行整備する方針を明らかにしました。着工後、約5年での開業を見込みます。このときは、2024年度に着手し順調にいけば2029年度末(2030年春)に開業するとしました。 ひたちなか海浜鉄道湊線延伸のデータ ひたちなか海浜鉄道湊線延伸データ 営業構想事業者 ひたちなか海浜鉄道 整備構想事業者 ひたちなか海浜鉄道(みなし上下分離) 路線名 湊線 区間・駅 阿字ヶ浦~国営ひたち海浜公園南口~同西口 距離 3.1km(南口までの1.4kmを先行整備) 想定利用者数 -- 総事業費 約126億4100万円(第1工区59億2300万円、第2工区67億1800万円) 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 第一種鉄道事業事業 種類 普通鉄道 軌間 1067mm 電化方式 非電化 単線・複線 単線 開業予定時期 2030年春(先行開業区間) 備考 鉄道事業再構築事業(社会資本整備総合交付金) ひたちなか海浜鉄道湊線延伸の今後の見通し 湊線の延伸計画は、浮上してから数年でとんとん拍子に話が進みました。ひたちなか市では、当初、2018年度の事業許可取得を目指すスピード展開でしたが、結局、事業許可申請は2020年8月にずれ込み、許可が下りたのは2021年1月15日となりました。 それに続く工事施工認可申請は2022年1月と見込まれていましたが、間に合わずに2023年3月に延期。それにも間に合わず、再延期となっています。2023年12月に一部区間先行開業案を公式発表して、ようやく工事着手の見通しが立ちました。 延伸エリアは地方の再開発地域でもあり、土地取得のハードルも高くないことから、工事着手すれば完成は早いと見込まれています。順調にいけば、着工から5年後の開業とされていて、海浜公園南口までの開業は視野に入りました。 しかし、当初計画の全区間については、事業費が当初予定の2倍にまで膨れあがっていて、実現は見通せなくなっている印象もあります。
なにわ筋線

JR・南海なにわ筋線

JR・南海なにわ筋線は、大阪駅(うめきた)からJR難波駅、南海新今宮駅へ至る鉄道新線です。JRと南海が共同で営業します。開業予定は2031年春です。 なにわ筋線の概要 なにわ筋線は、大阪市のなにわ筋の地下に建設中の鉄道路線です。新大阪駅とJR難波駅・南海汐見橋駅を結ぶ地下鉄路線として検討が進められてきましたが、2017年5月23日に北梅田駅(当時の仮称)と、JR難波駅・南海新今宮駅を結ぶ計画として事業化されることが決まりました。 ルートは、大阪駅(うめきた地下ホーム)から、地下構造でなにわ筋に向けて南西に進み、JR大阪環状線福島駅付近でなにわ筋の地下に入ります。その後、地下構造のまま、なにわ筋を南下し、西本町駅の立地する中央大通の南で2方面に分岐し、JR難波駅と南海新今宮駅にそれぞれ接続します。 JR難波駅へはそのまま地下構造で接続し、南海新今宮駅へはパークス通の大阪市浪速区敷津東3丁目付近で地上に移行し、高架構造で南海本線へ合流する路線計画となっています。総延長は7.4kmです。   途中駅として、中之島駅、西本町駅、新難波駅(いずれも仮称)の3駅を設けます。このうち、新難波駅は南海のみが使用します。いずれの駅もホームは2線です。 中之島駅では京阪中之島駅と連絡します。また、南海新難波駅で市営地下鉄、南海、近鉄の各駅と連絡します。西本町駅での他線連絡はありません。 開業すると、新大阪~関西空港間が、JR49分、南海50分で結ばれます。大阪~関西空港間は、JR44分、南海45分です。   整備主体と営業主体 なにわ筋線は、第三セクターの関西高速鉄道が整備主体となり、JR西日本と南海電鉄が営業主体となる上下分離方式です。 北梅田~西本町間がJR・南海の共同営業区間、西本町~JR難波がJR単独営業区間、西本町~新今宮が南海の単独運行区間です。 運行計画とダイヤ なにわ筋線は、大阪駅から先、梅田貨物線の地下線を経由して新大阪駅まで乗り入れます。 なにわ筋線開業後のダイヤは未発表ですが、事業計画によると、旅客列車の運転本数は1日最大560本とされています。 6両、8両、9両編成を想定し、JR、南海とも特急(優等)、普通列車がそれぞれ乗り入れます。最高速度は110km/hです。 整備費用と採算性 なにわ筋線は国土交通省の地下高速鉄道整備事業費補助を活用して建設されます。 総事業費は3,297億円で、国、自治体、鉄道事業者が3分の1ずつ負担します。自治体の負担分約1,180億円については、府市で590億円ずつ折半します。 2023年の再評価時の資料では、費用便益比は30年間で1.49、50年間で1.66です。単年度営業収支黒字転換年は16年、累積資金収支黒字転換年は40年で、事業採算性は確保できるとしています。 年間で26.4万人の利用を予測します。 なにわ筋線の沿革 新大阪駅から梅田、中之島を経て難波を結ぶ「なにわ筋線」構想は、1980年代から存在していました。2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として盛り込まれています。 近畿開発促進協議会の2007年6月の協議では、なにわ筋線を「大阪都心を南北に縦断する都市交通線として重要である」と位置づけました。 しかし、大阪を南北に貫く地下鉄線は、すでに御堂筋線、谷町線、四つ橋線、堺筋線と4路線もあり、なにわ筋沿いには繁華街も少ないことから採算性が疑問視され、なかなか具体化しませんでした。 風向きが変わったのは、2008年に橋下徹が大阪府知事に就任してからです。橋下は、大阪の都市軸を東西に広げるためのインフラ整備の一環として、なにわ筋線の建設に前向きな姿勢を見せます。関西空港への直通を前提に「関空活性化に不可欠」と国に働きかけ、国土交通大臣(当時)の金子一義が関空へのアクセス改善策として検討を表明しました。 2009年4月17日には、JR西日本や関西大手私鉄5社・大阪府・大阪市・関西経済界の首脳が懇談会を開催して、「なにわ筋線」の必要性について合意しています。しかし、その後も採算性の問題がついてまわり、事業の具体化はなかなか進みませんでした。 ところが、LCCの関空就航が相次ぎ、インバウンドによる外国人観光客が関西空港に集まるようになると、関西空港の利用者が急増。なにわ筋線の必要性が高まり、議論が進展します。2017年5月23日に、JR、南海、大阪府市の4者に阪急を加えた5者の間で、なにわ筋線建設を進めていくことで一致し、計画概要が明らかにされました。 2018年2月にはアセスメントの環境影響評価方法書が公表され、事業の詳細が明らかにされています。2020年8月に事業認可され、2021年10月に着工しました。開業予定は2031年春としています。 なにわ筋線のデータ なにわ筋線データ 営業構想事業者 JR西日本、南海電鉄 ...
阪急なにわ筋・新大阪連絡線

阪急なにわ筋・新大阪連絡線

阪急電鉄の十三~新大阪間の鉄道新線計画が、阪急新大阪連絡線です。また、十三~大阪(うめきた)間の新線計画が、阪急なにわ筋連絡線です。なにわ筋連絡線は、JR・南海のなにわ筋線に乗り入れて、関西空港まで列車が走る構想です。 両路線は計画の生い立ちは異なりますが、将来は一体的な計画になるとみられます。そのため、このページでは、両路線を一体的に「阪急なにわ筋・新大阪連絡線」として扱います。 阪急なにわ筋・新大阪連絡線の概要 現在の阪急電鉄は新大阪駅への路線を持っていませんが、十三~新大阪間の2.1kmに新線を建設する計画があります。これが「新大阪連絡線」です。 新大阪連絡線を大阪駅(うめきた)まで延伸し、なにわ筋線とつなげるのが、「なにわ筋線」です。十三~大阪間の2.5kmです。 阪急新大阪連絡線となにわ筋連絡線は、一体として運用されることが見込まれています。すなわち、新大阪~十三~北梅田間約4.6kmの新線です。そこで、ここでは「阪急なにわ筋・新大阪連絡線」として紹介します。   想定ルート なにわ筋連絡線も新大阪連絡線も、ルートは未定です。ただ、新大阪連絡線は古くから建設計画があったので、一部で線路用地が確保されています。山陽新幹線の新大阪駅から新神戸方にかけて、線路の北側に空き地がありますが、それが新大阪連絡線の線路用地です。 したがって、新大阪連絡線の想定ルートは、この空き地を活用するとみられます。とはいえ、一部は新幹線の引き上げ線として使われていて、高架が張りだしていることもあり、いまさら阪急に転用できません。そのため、阪急新大阪連絡線は、用地の地下を走ることになりそうです。阪急宝塚線との交点付近で南に折れて、十三駅地下に収まる形になるでしょう。 なにわ筋連絡線は、十三駅から国道176号線の地下を南下し、うめきたエリアのJR大阪地下駅(北梅田)に合流する形になるとみられます。   この路線は阪急電鉄としては初の1,067mmという狭軌での建設を予定しています。これにより、なにわ筋線との直通運転を実施し、新大阪から十三、北梅田、南海本線を経て関西空港への乗り入れが行われる予定です。 阪急新大阪連絡線、なにわ筋連絡線とも、事業化へ向けたスケジュールなどは未発表です。なにわ筋線の開業予定が2031年春なので、それより早くなることはありません。大阪~十三~新大阪の一括開業を目指すのか、それとも大阪~十三間で先行開業するのかなども含めて未定です。 費用便益比と採算性 2018年4月に発表された『近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査結果』では、なにわ筋連絡線の建設費は約870億円、輸送人員は1日約9.2万~10.2万人、費用便益比は1.7~1.8、累積黒字化は24~31年目と試算されました。新大阪連絡線の建設費は約590億円で、輸送人員1日約5.5万人、費用便益比は1.4、27年目の累積黒字化です。 同じ試算で、なにわ筋連絡線と新大阪連絡線を同時に整備した場合、建設費は約1,310億円とされました。輸送人員は、なにわ筋連絡線が1日約11.4~13.1万人、新大阪連絡線が約4.7~5.6万人です。費用便益比は1.7~1.9で、13~16年目に累積黒字化します。 阪急なにわ筋・新大阪連絡線の沿革 新大阪連絡線の沿革 阪急電鉄は新大阪駅への路線を持っていませんが、かつて、阪急京都線を新大阪経由にする計画がありました。東海道新幹線の建設が決定したのを受けて、阪急京都線を十三~新大阪~淡路と新線経由にする構想を打ち立てたのです。これが「新大阪連絡線」で、ほかに新大阪~神崎川(阪急神戸線)を結ぶ構想もありました。 阪急は、新大阪連絡線について1961年に事業免許を取得し、用地の買収や準備工事に着手しました。国鉄もこれに対応し、東海道・山陽新幹線の高架橋脚には、新大阪連絡線の開業に備えて橋脚を斜めに配置するなどの準備がなされています。用地に関しては、阪急宝塚線との分岐付近から新大阪駅まで、新幹線の北側に並行して東西に細長く用地買収が行われました。 当時の計画では、阪急京都線の特急や急行を新大阪経由に移し、崇禅寺回りは普通列車専用とする予定でした。しかし、実際には、新大阪連絡線はなかなか進展しませんでした。 1989年の運輸政策審議会答申第10号では、十三~淡路間が「2005年までに工事を着手することが適当な区間」とされました。下図のように、新大阪から十三を経てなにわ筋線に流れ込む経路がすでに描かれています。   西梅田・十三連絡線への展開 しかし、答申後、大きな動きはありませんでした。2002年12月6日に、阪急電鉄は新大阪~淡路間と神崎川~新大阪間の免許廃止申請を提出し、2003年3月1日に両区間が正式に廃止となりました。これにより、免許が有効なのは十三~新大阪間(2.350km) のみとなりました。 一方、2004年10月の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として、「大阪市交3号線延伸 西梅田~北梅田~十三 2.9km(大阪市交3号線西梅田駅から阪急十三駅へ延伸する路線)」が盛り込まれました。これは、四つ橋線を十三駅まで延伸することで阪急各線と接続させるものです。ただし、新大阪連絡線(十三~新大阪)は盛り込まれませんでした。 2006年5月には、阪急ホールディングス(当時)の角和夫社長が阪神電気鉄道との経営統合に関連して「新大阪、十三、北ヤード、西梅田をつなぐ路線も可能」とコメント。この頃、新大阪から梅田エリアへつながる路線構想について、阪急で検討が進められていたようです。 2006年12月8日には、阪急電鉄・大阪市・国土交通省が都市鉄道等利便増進法に基づく大阪市営地下鉄四つ橋線の西梅田~十三間の新線(西梅田・十三連絡線)に関する原案を固めたとの報道がありました。報道した朝日新聞によりますと、建設主体を鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行い、阪急と大阪市交が営業を担当するとしています。新大阪連絡線との相互乗り入れの可能性についても報道されました。   2008年4月10日には、国土交通省による『「速達性向上施策における事業スキームの検討に関する調査」結果 - 西梅田・十三連絡線(仮称)の事業実現化方策に係る深度化調査 - 』が発表されました。 これによりますと「西梅田・十三連絡線」(西梅田~十三)の建設費が約950億円、「西梅田・十三連絡線+新大阪連絡線」(西梅田~十三~新大阪)の建設費が1,350億円とされ、新大阪まで建設した場合、1日17万人の需要を予測しました。費用便益比は2.9で、累積資金収支は第三セクターが整備主体の場合で33年目に黒字化、鉄道・運輸機構の場合は22年目に黒字化という結果でした。 これは「四つ橋線の新大阪乗り入れ」という事業で、採算面では良好な結果となりましたが、技術面では、四つ橋線を延伸する場合、阪神電鉄の線路が障害となり、西梅田駅から北梅田方向へそのまま北進することはできません。阪神電鉄の下を交差する場合は大工事になるため、実現性には疑問符が付けられました。 なにわ筋線への接続へ 2008年に橋下徹が大阪府知事に就任し、なにわ筋線の建設に前向きな姿勢を見せると、西梅田・十三連絡線は、なにわ筋線との接続へと方向性が変化していきます。2014年度に策定された大阪府の 公共交通戦略」では、「今後、事業実施の可否について、個別に検討が必要な路線」として、⻄梅⽥十三新大阪連絡線が「新大阪アクセス」として盛り込まれました。 2017年5月23日には、JR、南海、阪急、大阪府市の5者の間で、なにわ筋線建設を進めていくことで一致。なにわ筋線計画に阪急が加わり、「阪急なにわ筋連絡線」の計画が、初めて公式に明らかにされました。 このときのプレスリリースでは、「北梅田駅北側で阪急十三方面に分岐する路線(なにわ筋連絡線)について、国と連携しながら整備に向けた調査・検討を進めます」とされました。新路線に「なにわ筋連絡線」という仮称が与えられ、本格的に検討されることになったわけです。 ただ、その後、なにわ筋連絡線に関して目立った動きはみられません。2019年の大阪府「公共交通戦略」改定でも「今後、事業実施の可否について、個別に検討が必要な路線」の表記は変わりませんでした。 阪急の首脳からは、なにわ筋線との同時開業(2031年春)を目指すといったコメントが報道で伝えられたりしていますが、2024年時点で着工に至っておらず、工事期間を考えれば難しいでしょう。 阪急なにわ筋・新大阪連絡線のデータ 阪急なにわ筋・新大阪連絡線データ 営業構想事業者 阪急電鉄 ...
阪急大阪空港線

阪急大阪空港線

阪急電鉄の曽根駅~大阪空港駅間約4.0kmの鉄道新線計画が、阪急大阪空港線です。阪急宝塚線の曽根駅から、大阪空港(伊丹空港)まで線路をつなぐ構想です。 阪急大阪空港線の概要 阪急宝塚線曽根駅付近から分岐して、大阪空港に至る鉄道新線を建設する計画があります。これが阪急大阪空港線です。 ルート詳細は明らかではありませんが、曽根駅の北で宝塚線から分岐し、府道99号線の地下を西へ進み、阪神高速道路に沿って大阪空港ターミナル付近の地下に新駅を作るルートが基本線と考えられます。   曽根駅には引上線がありますので、分岐部はそれを転用する構想とみられます。また、曽根駅~岡部駅間には、高架化する際に残された地上線用地が残っており、そこを使えば地下に潜るスペースを確保できそうです。距離は約4kmです。 阪急大阪空港線が実現すれば、梅田~大阪空港間が乗り換えなしで移動でき、所要時間は現行の蛍池乗り換え(大阪モノレール利用)より、約6分短縮します。 概算事業費と費用便益比 2018年4月に公表された、国土交通省の『近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査』結果によりますと、車両費を含まない概算の建設費は約700億円と見積もられています。 予想される輸送人員は1日2万5,000人。費用便益比は1.4とまずまずですが、収支採算性では40年間で黒字転換する可能性は低いとされました。そのため、実現には「採算性の向上策の検討が必要」と指摘されています。 阪急大阪空港線の沿革 大阪空港(伊丹空港)への鉄道路線建設構想は古くからありました。阪急宝塚線と大阪空港ターミナルは、直線距離で1㎞を切る部分もあり、新線建設として、そう困難な距離でありません。阪急のほかにも、JR伊丹駅からJR宝塚線を分岐させてつなぐという構想もありました。 しかし、今に至るまで実現していません。理由として、伊丹空港は騒音問題などを抱えて廃港が取りざたされてきたことが大きいです。廃港しないとしても、増便の余地が限られているため、鉄道を敷いても利用者増が期待できないという理由もあります。それに加え、鉄道事業者間の利害調整の難しさもありました。 そうした状況下で、2017年に北梅田と関西空港をつなぐなにわ筋線の建設が決定し、阪急も「なにわ筋接続線」を建設する方向が固まりました。その関連路線として、梅田・十三と伊丹空港を直結する大阪空港線プロジェクトも動き出します。 阪急は、梅田・十三と直結する大阪空港線の建設の検討を開始。阪急の意向を受けて、国土交通省も、なにわ筋線関連路線の1つとして調査を実施しました。その結果、2018年4月に『空港アクセス鉄道ネットワーク調査』が公表され、上記の試算が明らかにされました。 2021年度に公表された阪急阪神ホールディングスの長期ビジョン(2040年に向けて)では、「検討・協議中の路線」として、大阪空港線が記されています。一方、中期経営計画には盛り込まれておらず、現時点で建設に向けた具体的な動きもありません。 2022年3月の豊中市議会では、都市基盤部長が「大阪空港線につきましては、これまで阪急電鉄、大阪府、豊中市の3者で勉強会を行い、需要や効果、技術面などについて意見交換を行ってきました。現在、阪急電鉄が引き続き検討を進めていると聞いておりますが、具体化の際には、阪急電鉄をはじめ、国、府、空港関係者等と協議・調整を進めてまいりたいと考えております」と答弁。 鉄道会社と行政の意見交換にとどまる段階で、具体化へ向けて動き出している段階ではないことを示唆しました。 阪急大阪空港線のデータ 阪急大阪空港線データ 営業構想事業者 阪急電鉄 ...
大阪メトロ夢洲駅

大阪メトロ中央線夢洲延伸・森之宮旅客化

大阪メトロ中央線は、コスモスクエア駅から長田駅まで17.9kmを結ぶ路線です。コスモスクエア~夢洲間3.2kmを延伸する工事が進められています。そのほか、森之宮検車場への側線を旅客化する計画もあります。 大阪メトロ中央線延伸の概要 夢洲延伸 大阪メトロ中央線の延伸計画区間は、コスモスクエア~夢洲間の3.2kmです。海底トンネル「夢咲トンネル」を挟むため途中駅はありません。 開業予定は2025年1月19日です。 運行計画は未定ですが、現状の中央線で使われている第三軌条集電方式の車両がそのまま乗り入れ、6両編成で運転します。現在の中央線のコスモスクエア発着の列車が、ほぼ全て夢洲発着になる予定です。現在の中央線ダイヤに即すと、ラッシュ時は約3~5分間隔、日中は7分30秒間隔(毎時8本)で運転されることになります。 夢洲駅は1面2線の島式ホームが配置されます。   中央線の夢洲延伸(コスモスクエア~夢洲)は、北港テクノポート線(コスモスクエア~夢洲~舞洲~新桜島)の南ルートと位置づけられています。鉄道の単独事業ではなく、港湾整備事業によりインフラ外部を整備し、インフラ部を開発者負担と合わせて整備する形です。 建設費用は「夢咲トンネル」などに444億円が執行済みで、南ルート分の残事業費が250億円とされてきました。この250億円が今回の延伸で直接的にかかる費用です。ただし、2022年の事業再評価時に上振れし、346億円となりました。 費用便益比は、2018年度再評価時に、南ルートの残事業分で5.88と算出され、2022年再評価時には3.97となっています。 森之宮側線客化 森之宮検車場の新駅計画は、森ノ宮駅から検車場までの側線(引き込み線)を営業線にして旅客化し、検車場北端付近に新駅を設けるものです。営業距離は1.1km程度です。 検査場付近に再開発計画があり、2025年には大阪公立大学が森之宮キャンパスを開設します。大阪メトロも商業施設の建設を検討しています。新駅を設け、中央線が乗り入れることで、再開発エリアのアクセス向上を図ります。開業は2028年春の予定です。 新駅のデザインも、すでに公表されています。卵形の曲線的なデザインが特徴的です。駅舎内部は開放的な雰囲気です。   中央線は、万博開催時までに夢洲まで延伸し、開催中は最小運行間隔を現行の3分45秒から2分30秒にまで短縮して輸送力を強化します。そのため、夢洲延伸で3編成、輸送力増強で10編成、計13編成を増備する計画です。増備した13編成を留置するため、森之宮検車場の既存の保守施設を移転または撤去し、留置線を整備します。 増備した車両は、万博終了後に改造のうえ、他路線へ転用します。転用後、留置線を撤去して、その跡地に新駅を設置します。留置線に出入りするための側線を営業路線にするため、線路設備や信号設備を強化します。こうした段階を踏んで、2028年春に新駅が開業する見通しです。   大阪メトロ中央線延伸の沿革 大阪南港のコスモスクエアのある人工島を咲州、その北にある島を夢洲、さらに北にある島を舞洲といいます。これらの人工島をつなぐ鉄道を敷く構想は、1983年に「テクノポート大阪計画」が発表されたころから具体化し始めたようです。大阪湾岸を大規模開発する計画で、アクセス路線として、当時の地下鉄中央線の終点だった大阪港と、「ニュートラム」の終点だった中ふ頭とを結ぶ路線計画が浮上します。 1989年の運輸政策審議会第10号答申では、大阪港~海浜緑地(コスモスクエア)~中ふ頭間が「南港テクノポート線」として、2005年までに整備することが適当な路線として盛り込まれました。そのほか、海浜緑地(コスモスクエア)~北港南(夢洲)~北港北(舞洲)間が「北港テクノポート線」として、2005年までに整備に着手することが適当な路線とされました。「北港テクノポート線」は、さらに北港北から此花方面が「今後路線整備について検討すべき方向」として盛り込まれています。   この時点では、大阪港~コスモスクエア~中ふ頭をすべて新交通システム「ニュートラム」で建設する構想でした。しかし、1990年代に入ると、南港と北港の開発を目指す大阪市が、大阪港~コスモスクエア間について地下鉄中央線の延伸とする方針に変更。「北港テクノポート線」の海浜緑地(コスモスクエア)~北港北(舞洲)間を、それにつながる地下鉄と位置づけました。 背景として、大阪市のオリンピック誘致がありました。1991年に、大阪市は2008年オリンピックの招致を開始。夢洲を選手村予定地とし、舞洲を会場予定地とする計画で、アクセス路線として地下鉄中央線を大阪港からコスモスクエアを経て、夢洲、舞洲まで延ばすという構想になったのです。 コスモスクエア~中ふ頭間については、ニュートラムの延伸とされました。1997年12月に、大阪港~コスモスクエア間の地下鉄と、コスモスクエア~中ふ頭間のニュートラムが開業。ただし、このときの事業主体は、いずれも第三セクターの「大阪港トランスポートシステム(OTS社)」で、大阪市営ではありませんでした。 1998年には、「北港テクノポート線」の計画は新桜島までに拡大されます。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の誘致が決まったことを受けたもので、新桜島駅はUSJの北側に隣接する位置に予定されました。新桜島駅には、JR桜島線の延伸が想定されていて、JRが桜島~新桜島間に約1kmの新線を建設する計画となっていました。 OTS社は、2000年7月19日にコスモスクエア~夢洲~舞洲~新桜島間7.5kmの第一種鉄道事業者の許可を申請。建設費は1870億円です。2000年度着工、招致を目指すオリンピックが開催される2008年の開業を目標としていました。実際に2000年10月に、コスモスクエア~新桜島間の事業許可を取得し、咲洲と夢洲と結ぶ道路併用の「夢洲トンネル」(現夢咲トンネル)の着工に漕ぎ着けます。 ところが、2001年のIOC総会で大阪はオリンピック招致に失敗。しかし、トンネル工事はそのまま続き、道路部だけ2009年に開通することになります。一方、オリンピックが実現しなかったことで夢洲の開発は頓挫し、アクセスとなる地下鉄も不要になり、北港テクノポート線計画は凍結されてしまいます。2004年10月8日に策定された近畿地方交通審議会答申第8号では、北港テクノポート線は「事業中路線」の扱いで、特記されませんでした。 この答申第8号では「中期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として京阪中之島線を中之島駅から西九条駅を経て新桜島および夢洲方面へ延伸する案が示されました。下記は建設中の夢洲トンネルの概要図で、北港テクノポート線は新桜島駅から先へ伸びています。この時点では、すでにJR桜島線への直通ではなく、京阪中之島線への乗り入れを想定していたようです。 一方、大阪港~コスモスクエア~中ふ頭の運営を担っていたOTS社は、開業後、たちまち経営難に陥ってしまいました。2005年7月には、大阪港~コスモスクエア~中ふ頭間の運営を大阪市交通局に移管。これにより、大阪港~コスモスクエア間が大阪市営地下鉄中央線に編入されました。 凍結されていた北港テクノポート線計画が再び動き出したのは、2014年ごろからです。夢洲において統合型リゾート(IR)の誘致が決まり、さらに2025年の万国博覧会の大阪招致を目指すことが決まったため、コスモスクエア~夢洲間について、アクセス路線として延伸が再検討されることになったのです。民営化した大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)も中期経営計画で、中央線の夢洲延伸について2024年度の開業を目標と設定しました。 そして、2018年には、実際に2025年万博の開催地が大阪で決定したため、中央線の夢洲延伸が正式に決まったのです。 これにより、大阪メトロ中央線は、2024年度までにコスモスクエア~夢洲間3.2kmの延伸が行われることになりました。整備事業者はOTSで、大阪メトロは運行を担う第二種鉄道事業者となります。 北港テクノポート線という枠組みで考えると、夢洲~舞洲~新桜島間の延伸計画が残ります。この区間については、現時点で建設に向けて決定したことはありません。JR西日本が桜島線延伸による建設に意欲をみせ、中期経営計画に盛り込まれた時期もありましたが、新型コロナ化で雲散霧消し、現在は同社の経営計画に記載はありません。 森之宮新駅については、2022年12月に大阪メトロが公表しました。森之宮検車場周辺では再開発が予定されていて、そのアクセス線となります。 留置線に出入りするための側線を営業路線にするため、線路設備や信号設備を強化します。こうした準備を経て、2028年春に新駅が開業する見通しです。 大阪メトロ中央線延伸のデータ 大阪メトロ中央線延伸データ 営業構想事業者 大阪市高速電気軌道(大阪メトロ) ...
京阪中之島線延伸

京阪中之島線九条延伸

京阪中之島線は、中之島~天満橋間の3.0kmを結ぶ路線です。中之島からさらに延伸し、九条、西九条、新桜島方面へ延伸する計画があります。 京阪中之島線延伸の概要 京阪中之島線は2008年10月に開業した、比較的新しい鉄道路線です。これを九条駅まで延伸し、大阪メトロや阪神なんば線と接続させる計画があります。 夢洲にIR(統合リゾート)できることを前提にしたもので、九条駅で中央線と接続し、京都と夢洲IRを1度の乗り換えでつなぐことを狙っています。 延伸計画の詳細は明らかではありません。途中駅を設けるかも不明です。中之島~九条間の直線距離は2km程度なので、途中駅を設けるほどの距離ではありませんが、新駅を作るとすれば、西区川口付近になるでしょう。 さらに、西九条や桜島方面への延伸計画もありますが、構想段階にとどまります。   京阪中之島線延伸の沿革 京阪中之島線の計画がオーソライズされたのは、1989年の運輸政策審議会答申第10号です。天満橋駅から渡辺橋を経て玉江橋(中之島)までの区間が、「2005年までに整備に着手することが適当である区間」とされました。この区間は、2003年5月に着工、2008年10月に完成しています。 開業前から中之島以西への延伸計画があり、2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として中之島駅から西九条駅を経て新桜島および夢洲方面へ延伸する案が示されています。(下の地図の10の路線) この案では、中之島駅から堂島川をくぐり、上船津橋北詰、中央市場北口、中央市場西口の交差点の地下を通り、西九条と千鳥橋を経て、桜島二丁目交差点の新桜島駅に至る約7.3kmの経路が想定されていました。西九条駅~千鳥橋駅間は阪神なんば線と並走することから、将来的に阪神なんば線への乗り入れも構想に入っていたようです。 しかし、2008年に開業した中之島線の利用状況が思わしくないこともあり、新桜島への延伸計画は進展しませんでした。   転機が訪れたのは、大阪府がIR(統合リゾート)誘致に本腰を入れ初めてからです。2014年に大阪府市IR立地準備会議が「夢洲への鉄道アクセスの技術的検討」について報告。そのなかで、中之島~新桜島~夢洲まで整備した場合、約11kmで3,500億円の概算事業費がかかると試算しました。(新桜島~夢洲間は北港テクノポート線)。   2017年7月には、京阪ホールディングスの加藤好文社長が、中之島駅から南西に進んで地下鉄中央線の九条駅につなげる構想を公表。2018年2月には、加藤社長らが、2024年に予定されている夢洲のIR開業に合わせて九条駅まで延伸し、その後、西九条駅まで延ばす構想を明らかにしました。 2018年11月に関西万博の夢洲での開催が決まると、大阪市営地下鉄中央線のコスモスクエア~夢洲間の延伸が決定的になり、中之島線を九条駅まで伸ばせば、夢洲へのアクセスが確保されるメドも立ちました。 2020年からの新型コロナ禍で停滞したものの、2023年4月に夢洲IRが国から正式認可。同年7月に、京阪も社内で検討委員会を立ち上げ、九条延伸へ向けた検討を本格化、2030年秋までの開業を目指す方針を明らかにしました。 ただこの時点では、IR事業者に解除権が残されていたため、2023年度末までに、結論をいったん先送りしました。IRが2024年9月に解除権を放棄する方針を示したことから、京阪中之島線延伸計画も再始動へ向け動き出しそうです。 なお、加藤社長は、中央線との直通運転も検討するとも発言していますが、給電方式が異なることや、九条駅での線路接続が技術的に困難なことから、実現性は低いと見られています。 京阪中之島線延伸のデータ 京阪中之島線延伸データ 営業構想事業者 京阪電鉄 整備構想事業者 未定 路線名 中之島線 区間・駅 中之島~九条 距離 約2km 想定利用者数 -- 総事業費 -- 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 未定 種類 普通鉄道 軌間 1,435mm 電化方式 直流1500V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 -- 京阪中之島線延伸の今後の見通し 京阪中之島線の既存区間の利用者は、想定の2割程度と低迷しています。なにわ筋線が開業し、中之島駅ができれば、京阪中之島線の利用者の一部がなにわ筋線に流出するとみられており、さらに利用者が減る可能性も指摘されています。 こうした状況から、京阪電鉄としては、中之島線の利用者を増やすため、「西側のアクセス」を早急に確保したいと考えているようです。九条駅へ延伸案は、中之島駅から2kmあまりと近く、道路下の空間を線路用地に使えるため、早く、安く作れそうです。 とはいえ、京阪電鉄が自力で作ることはできず、上下分離のスキームにより、行政の補助金を受ける必要があります。 開業時期は2030年度とされていましたが、判断先送りの影響もあって見通せません。費用便益比などの数字も明確でなく、本当に着工できるのかも定かではありません。実現する場合でも、早くても2030年代前半になるでしょう。 【参考資料アーカイブ】 『夢洲への鉄道アクセスの技術的検討について』(2014年、大阪府)[PDF]

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