京阪中之島線九条延伸

中之島~九条

京阪中之島線は、中之島~天満橋間の3.0kmを結ぶ路線です。中之島からさらに延伸し、九条、西九条、新桜島方面へ延伸する計画があります。

京阪中之島線延伸の概要

京阪中之島線は2008年10月に開業した、比較的新しい鉄道路線です。これを九条駅まで延伸し、大阪メトロや阪神なんば線と接続させる計画があります。

夢洲にIR(統合リゾート)できることを前提にしたもので、九条駅で中央線と接続し、京都と夢洲IRを1度の乗り換えでつなぐことを狙っています。

延伸計画の詳細は明らかではありません。途中駅を設けるかも不明です。中之島~九条間の直線距離は2km程度なので、途中駅を設けるほどの距離ではありませんが、新駅を作るとすれば、西区川口付近になるでしょう。

さらに、西九条や桜島方面への延伸計画もありますが、構想段階にとどまります。

京阪中之島線延伸
画像:国土地理院地図を加工

 

京阪中之島線延伸の沿革

京阪中之島線の計画がオーソライズされたのは、1989年の運輸政策審議会答申第10号です。天満橋駅から渡辺橋を経て玉江橋(中之島)までの区間が、「2005年までに整備に着手することが適当である区間」とされました。この区間は、2003年5月に着工、2008年10月に完成しています。

開業前から中之島以西への延伸計画があり、2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として中之島駅から西九条駅を経て新桜島および夢洲方面へ延伸する案が示されています。(下の地図の10の路線)

2004年の近畿地方交通審議会答申第8号
画像:近畿地方交通審議会答申第8号

この案では、中之島駅から堂島川をくぐり、上船津橋北詰、中央市場北口、中央市場西口の交差点の地下を通り、西九条と千鳥橋を経て、桜島二丁目交差点の新桜島駅に至る約7.3kmの経路が想定されていました。西九条駅~千鳥橋駅間は阪神なんば線と並走することから、将来的に阪神なんば線への乗り入れも構想に入っていたようです。

しかし、2008年に開業した中之島線の利用状況が思わしくないこともあり、新桜島への延伸計画は進展しませんでした。


 
転機が訪れたのは、大阪府がIR(統合リゾート)誘致に本腰を入れ初めてからです。2014年に大阪府市IR立地準備会議が「夢洲への鉄道アクセスの技術的検討」について報告。そのなかで、中之島~新桜島~夢洲まで整備した場合、約11kmで3,500億円の概算事業費がかかると試算しました。(新桜島~夢洲間は北港テクノポート線)。

夢洲アクセス京阪中之島線延伸
画像:「夢洲への鉄道アクセスの技術的検討について」(大阪府、2014年)

 

2017年7月には、京阪ホールディングスの加藤好文社長が、中之島駅から南西に進んで地下鉄中央線の九条駅につなげる構想を公表。2018年2月には、加藤社長らが、2024年に予定されている夢洲のIR開業に合わせて九条駅まで延伸し、その後、西九条駅まで延ばす構想を明らかにしました。

2018年11月に関西万博の夢洲での開催が決まると、大阪市営地下鉄中央線のコスモスクエア~夢洲間の延伸が決定的になり、中之島線を九条駅まで伸ばせば、夢洲へのアクセスが確保されるメドも立ちました。

2020年からの新型コロナ禍で停滞したものの、2023年4月に夢洲IRが国から正式認可。同年7月に、京阪も社内で検討委員会を立ち上げ、九条延伸へ向けた検討を本格化、2030年秋までの開業を目指す方針を明らかにしました。

ただこの時点では、IR事業者に解除権が残されていたため、2023年度末までに、結論をいったん先送りしました。IRが2024年9月に解除権を放棄する方針を示したことから、京阪中之島線延伸計画も再始動へ向け動き出しそうです。

なお、加藤社長は、中央線との直通運転も検討するとも発言していますが、給電方式が異なることや、九条駅での線路接続が技術的に困難なことから、実現性は低いと見られています。

京阪中之島線延伸のデータ

京阪中之島線延伸データ
営業構想事業者 京阪電鉄
整備構想事業者 未定
路線名 中之島線
区間・駅 中之島~九条
距離 約2km
想定利用者数
総事業費
費用便益比
累積資金収支黒字転換年
種別 未定
種類 普通鉄道
軌間 1,435mm
電化方式 直流1500V
単線・複線 複線
開業予定時期 未定
備考

京阪中之島線延伸の今後の見通し

京阪中之島線の既存区間の利用者は、想定の2割程度と低迷しています。なにわ筋線が開業し、中之島駅ができれば、京阪中之島線の利用者の一部がなにわ筋線に流出するとみられており、さらに利用者が減る可能性も指摘されています。

こうした状況から、京阪電鉄としては、中之島線の利用者を増やすため、「西側のアクセス」を早急に確保したいと考えているようです。九条駅へ延伸案は、中之島駅から2kmあまりと近く、道路下の空間を線路用地に使えるため、早く、安く作れそうです。

とはいえ、京阪電鉄が自力で作ることはできず、上下分離のスキームにより、行政の補助金を受ける必要があります。

開業時期は2030年度とされていましたが、判断先送りの影響もあって見通せません。費用便益比などの数字も明確でなく、本当に着工できるのかも定かではありません。実現する場合でも、早くても2030年代前半になるでしょう。