つくばエクスプレス東京駅・土浦延伸

東京~秋葉原、つくば~土浦

つくばエクスプレス(TX)は、現在、秋葉原駅が起点ですが、これを東京駅まで延伸する計画があります。さらに、臨海地下鉄へ乗り入れて、銀座から晴海を経て、有明・東京ビッグサイトまで直通運転する構想もあります。

2016年国土交通省交通政策審議会答申198号に「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として盛り込まれました。

また、終点つくばから土浦駅までの延伸計画もあります。いずれも開業予定時期は未定です。

つくばエクスプレス東京駅延伸の概要

つくばエクスプレスは計画段階では「常磐新線」と言われ、東京駅が起点とされました。しかし、東京駅まで乗り入れるとなると難工事でお金がかかりすぎるため、秋葉原駅を起点として建設され、現在に至っています。東京駅まで延伸する構想は今も残っています。

現在の計画では、つくばエクスプレス東京駅は、都心部・臨海地域地下鉄(東京駅~新銀座~有明・東京ビッグサイト、未開業)の東京駅と共用する構想です。実現すれば、つくばエクスプレスは、秋葉原から東京駅八重洲口まで延伸し、そこから臨海地下鉄に乗り入れて、銀座、晴海を経て臨海副都心の有明までつながることになります。

臨海地下鉄は事業計画が公表され、東京駅の位置は呉服橋付近が想定されていることが明らかになっています。ここに乗り入れるとすれば、つくばエクスプレスの東京駅も呉服橋付近となります。

ただし、いまのところ、つくばエクスプレスの東京駅延伸については、公表された事項はありません。駅位置やルートも未定です。したがって、つくばエクスプレスの東京駅延伸の事業化、着工時期などは見通せません。

2016年に交通政策審議会が公表した「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」によれば、東京~秋葉原間の想定輸送密度は61,600~65,100人/日。総事業費は1,400億円とされました。費用便益比は1.2で、累積資金収支は21~23年で黒字に転換します。

つくばエクスプレス東京駅延伸
画像:国土地理院地図を加工

 

つくばエクスプレス土浦延伸の概要

つくばエクスプレスにはつくば~土浦間の延伸計画もあります。2023年3月に公表された調査結果によりますと、つくば~土浦間は直線距離で約8.4km。詳細なルートは検討されておらず、途中駅などの情報はありません。

開通すれば、土浦~東京間が約65分で結ばれます。1日あたり8,600人の利用を見込み、輸送密度は7,800人/日を想定します。概算事業費は1,400億円です。費用便益比は0.6で、採算性は年間3億円の赤字です。

つくばエクスプレス土浦延伸
画像:国土地理院地図を加工

 

東京8号線の直通構想

つくばエクスプレスの延伸ではありませんが、東京8号線という計画路線が、つくばエクスプレスに乗り入れる構想があります。八潮~越谷レイクタウン~野田市間に新線を建設し、八潮駅でつくばエクスプレスに接続します。

実現すれば、つくばエクスプレスの「野田支線」といった位置づけになります。詳細は「東京8号線」の項目をご覧ください。

つくばエクスプレス延伸の沿革

つくばエクスプレスの原型は「常磐新線」です。1985年7月の運輸政策審議会第7号答申では、「2000年までに整備すべき路線」として、東京駅を起点に北千住を経由して守谷町南部までが盛り込まれました。さらに将来は筑波研究学園都市までの路線延長を検討する、とされました。これが「常磐新線」です。

その後、1988年11月の常磐新線整備検討委員会「基本フレーム」取りまとめでは、秋葉原~筑波研究学園都市間を第1期工事とすることが決まりました。第2期線としていた守谷町~筑波研究学園都市間が第1期区間に格上げされた一方で、秋葉原~東京駅間は先送りとなっています。

1994年に秋葉原~筑波研究学園都市間を着工。同区間は2005年に開業しました。

東京駅延伸については、2000年1月の運輸政策審議会第18号答申で、「今後整備について検討すべき路線」の一つとして、東京~秋葉原間が盛り込まれました。2005年度から2006年度にかけて、『運輸政策審議会第18号答申の鉄道・運輸機構等によるフォローアップ調査』が行われ、東京駅の位置や需要調査などが実施されました。

このときの調査では、東京駅の位置は丸の内側仲通り地下、丸の内線東京駅と三田線大手町駅の中間を想定していました。

つくばエクスプレス東京駅
画像:運輸政策審議会答申第18号フォローアップ調査結果

つくばエクスプレス東京駅
画像:運輸政策審議会答申第18号フォローアップ調査結果

 
この調査では、秋葉原~東京駅間約2kmを大深度トンネルでつなぎ、建設期間約6年、概算事業費1,000億円と想定しました。東京駅は1面2線の島式ホームとされ、秋葉原~東京駅間に駅は設けられない計画でした。

しかし、この計画はまったく進みませんでした。巨額の建設費のほか、丸ノ内仲通り地下に駅を設けても、JR線との連絡が不便で利用者が伸び悩むと懸念されたことが影響したようです。


 
その後、東京都が2015年7月10日に発表した『広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫』では、つくばエクスプレス東京駅延伸は「整備について検討すべき路線」とされました。

これを受けて、2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』では、都心・臨海部地下鉄構想とつくばエクスプレス延伸との一体整備および直通運転が「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として盛り込まれました。

これにより、つくばエクスプレスの東京駅延伸は、臨海地下鉄構想との一体整備が検討されることになりました。臨海地下鉄は2022年に東京都が事業計画を発表。東京駅を八重洲口に置く方針を明らかにしました。ただし、つくばエクスプレスの東京駅延伸には大きな進展がみられません。

一方、茨城県内の延伸については、2022年度に茨城県が予算を計上して調査を開始。2023年に『TX県内延伸に関する提言書』が公表されました。調査では、筑波山、水戸、茨城空港、土浦の4方面が延伸先候補として挙げられ、このうち費用便益比や収支採算性で優位な土浦方面が選定されました。

つくばエクスプレス延伸データ

つくばエクスプレス延伸データ
営業構想事業者 首都圏新都市鉄道
整備構想事業者 未定
路線名 未定
区間・駅 東京~秋葉原
つくば~土浦
距離 約2km(東京~秋葉原)
約8.4km(つくば~土浦)
想定輸送密度 61,600~65,100人(東京~秋葉原)
7,800人(つくば~土浦)
総事業費 1,400億円(東京~秋葉原)
1,400億円(つくば~土浦)
費用便益比 1.2(東京~秋葉原)
0.6(つくば~土浦)
累積資金収支黒字転換年 21~23年(東京~秋葉原)
年3億円の赤字(つくば~土浦)
種別 未定
種類 普通鉄道
軌間 1,067mm
電化方式 直流1500V(東京~秋葉原)
交流20,000V(つくば~土浦。予想)
単線・複線 複線
開業予定時期 未定
備考

※データはおもに東京~秋葉原間は『鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果』(2016年)、つくば~土浦間は『つくばエクスプレス(TX)県内延伸調査の結果について』(2022年)より

つくばエクスプレス延伸の今後の見通し

つくばエクスプレスの東京駅延伸は、常磐新線の構想段階から計画されていたことです。そのため、実現に向けた機運は盛り上がっているのですが、事業性がカベになっていました。

東京駅に乗り入れるには、かなり深い位置にトンネルを掘らなければならないため、工事費がかかります。しかし、できあがっても東京駅が深すぎて不便で、利用が伸び悩むのでは、という懸念がありました。

そうした懸念から、つくばエクスプレスだけの延伸は難しいと見て、臨海地下鉄との一体整備案が出されました。これならば、東京駅を臨海地下鉄と共用できるうえ、つくばエクスプレスから銀座や臨海副都心への需要掘り起こしにも使えます。東京駅位置も、呉服橋付近が想定されていて、新幹線との乗り換えに便利です。

この計画変更により、つくばエクスプレスの東京駅延伸の可能性は高まったといえるでしょう。

一方、土浦延伸については緒についたばかりです。採算的に厳しく、実現は定かではありません。

ただ、沿線自治体の茨城県は、東京駅延伸と土浦駅延伸をセットで検討するよう求める姿勢を示しています。そうなると、他の沿線自治体の賛同を得るのは難しく、すべての延伸が停滞してしまう可能性もあります。

つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市交通は、東京、埼玉、千葉、茨城の4都県が大株主です。延伸には、これらの自治体が合意し、建設費を負担することが前提となりますが、熱意には自治体間で温度差があります。その合意形成には時間がかかりそうです。