大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸

大正~鶴町

大阪メトロ長堀鶴見緑地線は、大正駅から門真南駅まで15.0kmを結ぶ路線で、地下鉄7号線とも呼ばれます。1990年に京橋駅~鶴見緑地駅間が開業。1996年に心斎橋駅まで、1997年に大正駅、門真南まで、それぞれ延伸しました。

さらに、大正駅から鶴町まで5.5kmを延伸する計画が残されています。

大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸の概要

大阪メトロ長堀鶴見緑地線の延伸計画区間は、大正~鶴町の5.5kmです。大正駅から大正通を南下し、大運橋で西に折れ、鶴町4丁目付近に至ります。

延伸区間では、大正駅含め全7駅が予定されています。大正駅~大正区役所付近までが地下構造、鶴町4丁目までは高架構造が想定されています。終点近くの鶴浜に車庫用地が確保してありますが、既設の鶴見検車場で対応可能なため、仮に開通しても車庫が作られない可能性が高そうです。

現状の長堀鶴見緑地線線で使われているリニアモーター駆動式中量規模地下鉄が導入され、ワンマン運転の4両編成が朝ラッシュ時3分~3分40秒間隔、夕ラッシュ時が3分30秒間隔、昼間が7分間隔で運転されます。

大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸
画像:「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について(2014年)

 

2014年に公表された「『大阪市交通事業の設置等に関する条例』に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について」によりますと、2017年度着工、2025年度開業として、開業5年後の輸送人員が1日あたり34,694人、輸送密度が15,802人キロと見込んでいます。開業15年後には、輸送人員が1日あたり30,494人に減るとの想定も示されました。

延伸にかかる総事業費は1190億円と見込まれています。収支予測は厳しく、開業40年目の累積欠損は764億円にのぼり、30年の費用便益比は1.26というものでした。費用対効果はB/Cが1を上回りますが、「収支採算性は累積欠損を解消できない」としています。

事業化のためには、利用者の増加や加算運賃が必要との結論で、建設に後ろ向きの表現となりました。

大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸の沿革

長堀鶴見緑地線の建設計画は、1982年2月の「大阪を中心とする鉄道網整備構想について」(大阪府・大阪市)において、構想路線に位置づけられたのが最初です。

1989年5月の運輸政策審議会第10号答申では、鶴町~大正間が「2005年までに整備に着手することが適当である区間」とされ、大正~長堀通~京橋~鶴見緑地間が「2005年までに整備することが適当である区間」とされています。大正~鶴見緑地間は、答申期限より早く1997年に開業しています。

しかし、鶴町~大正間の整備は進みませんでした。2004年10月の近畿地方交通審議会答申第8号で「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」と位置づけられたものの、具体的な事業化計画にまで至っていません。

2011年に市長に就任した橋下徹は、大阪市営地下鉄の計画路線4路線について検討するために、2013年に大阪市鉄道ネットワーク審議会を設置。2014年に「『大阪市交通事業の設置等に関する条例』に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について」というとりまとめを答申しました。

長堀鶴見緑地線の鶴町延伸に関して「収支採算性は累積欠損を解消できないことから、事業化のためには、例えば約1割の需要増と新線区間の加算運賃に加え、毎年の運営費補助の導入が必要である」としています。他の未着手3路線とあわせて「事業化はきわめて厳しい」と表現し、事業化への道筋は立っていません。

大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸データ

大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸データ
営業構想事業者 大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)
整備構想事業者 未定
路線名 長堀鶴見緑地線
区間・駅 大正~鶴町
距離 5.5km
想定輸送密度 15,802人キロ
総事業費 1190億円(民営)
費用便益比 1.26(民営)
累積資金収支黒字転換年 発散
種別 未定
種類 普通鉄道
軌間 1435mm
電化方式 直流1500V
単線・複線 複線
開業予定時期 未定
備考

※データは『「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について』より

大阪メトロ長堀鶴見緑地線延伸の今後の見通し

2014年に公表された大阪市鉄道ネットワーク審議会の答申によりますと、大阪市の地下鉄未着手路線4線で、もっとも費用対効果が高いのが、長堀鶴見緑地線の大正~鶴町延伸です。

コスト削減をしないで建設する「基本ケース」でも、費用便益比が1.21となっており、今里筋線の延伸よりも数字は良好でした。大正区役所付近から南を高架にするなどの工夫で建設コストを削減すれば、費用便益比は1.92と高くなります。

それでも、40年後の累積欠損は522億円に達するという試算になっており、黒字化は容易ではありません。将来的な人口減少を勘案すれば、採算を取るのは難しく、延伸は凍結されたままです。

2020年には鶴浜の車庫用地が商業・業務機能や交流機能などが導入できるように地区計画が変更となりました。こうしたことからも、長堀鶴見緑地線の鶴町延伸の実現は見通せません。