「座席未指定券」の買い方、使い方、料金を徹底解説。JR特急で導入進む

メリット、デメリットも

JRの特急列車で「座席未指定券」というきっぷが広く販売されるようになりました。その買い方、使い方、料金、メリット、デメリットなど、基本ルールをわかりやすく解説しましょう。

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座席未指定券とは

JRの在来線特急では、全車指定席で運行する列車が増えています。全車指定席の列車には自由席が連結されていません。そのため、自由席特急券では乗車できません。

代わりに導入されたのが「座席未指定券」です。座席未指定券は普通車指定席の空席を利用できる特急券です。

全車指定席の特急列車が満席でも、座席未指定券を持っていれば乗車でき、空席があれば座ることもできます。ただし、その座席の指定席券を持っている旅客が現れたら、席を譲らなければなりません。

満席の場合は、席に座ることはできません。デッキや通路で立って過ごすことになります。

E353系

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座席未指定券の価格

座席未指定券の価格は指定席特急券と同じです。自由席特急券は指定席特急券より安いですが、座席未指定券は同額です。

またJR東日本では、事前購入より車内購入の価格が高く設定されています(一部区間を除く)。車内で座席未指定券を購入する場合、通常料金(事前料金)に260円を加算した車内料金が適用されます。

【JR東日本の座席未指定券の特急料金】
50kmまで 760円
100kmまで 1,020円
150kmまで 1,580円
200kmまで 2,240円
300kmまで 2,550円
400kmまで 2,900円
※車内購入の場合は260円増し

【JR北海道の座席未指定券の特急料金】
25kmまで 850円
50kmまで 1,160円
100kmまで 1,680円
150kmまで 2,360円
200kmまで 2,730円
300kmまで 2,950円
400kmまで 3,170円

指定席特急券は、チケットレスで購入すれば100円~200円程度の割引がありますが、座席未指定券はチケットレス発券ができないため、割引もありません。

そのため、指定席に空席がある場合に、あえて座席未指定券を購入して乗る意味は、ほとんどありません。指定席が満席だったり、指定席券を買う時間がなく飛び乗ったりするときに、やむを得ず購入するチケットといえます。

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自由席特急券との違い

座席未指定券は、特急列車の自由席を廃止して全車指定席化する際に導入されたチケットです。そのため、自由席特急券代わりのように思われますが、実際には異質のものです。

座席未指定券も自由席特急券も着席保証をしていない点は同じですが、自由席にはある程度の人数分の空席が確保されています。それに対し、座席未指定券の利用者には、空席の確保が全くありません。

特急列車には立席特急券というチケットもあります。指定席が満席の際に、デッキなどで立つことを前提として発売するものです。

指定席車両に立って乗れるという点で、立席特急券は座席未指定券と似ています。しかし、立席特急券は空席があっても着席できず、価格は指定席特急券より安く設定されています(自由席特急券と同額)。空席に座った場合は、指定席券との差額(530円)を請求されることがあります。

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座席未指定券と自由席特急券、立席特急券の違い

座席未指定券と自由席特急券、立席特急券との違いを簡単にまとめると、以下のとおりです。

・自由席特急券は、「普通車自由席車両」の空席に座ることができる。席を確保したら、他の旅客が来ても席を譲る必要はない。

・座席未指定券は「普通車指定席車両」の空席に座ることができる。ただし、その座席の指定席券を持った旅客が現れたら、席を譲らなければならない。

・立席特急券は「普通車指定席車両」のデッキや通路に立つことができる。着席は原則としてできない。

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座席指定と変更

座席未指定券を先に購入した後、空席があれば、無料で座席指定を受けることもできます。

この場合、特急券の「変更」には該当しません。指定席特急券の変更(列車などの変更)は1回までというルールがありますが、座席未指定券で座席指定をしてもらった場合、この回数にカウントされません。

座席未指定券を導入している列車

座席未指定券を導入している列車は、JR東日本とJR北海道の全車指定席の在来線特急です。具体的には、以下の列車です。

【JR東日本】
・踊り子、湘南(東海道線)
・あずさ、かいじ、富士回遊、はちおうじ、おうめ(中央線)
・あかぎ(高崎線)
・ひたち、ときわ(常磐線)
・成田エクスプレス(総武線)
・しおさい、わかしお、さざなみ(総武、内房、外房線)

【JR北海道】
・北斗、すずらん(室蘭線)
・おおぞら、とかち(石勝・根室線)

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座席上方ランプ

座席未指定券を導入している列車のうち、東海道線、中央線、常磐線特急には「座席上方ランプ」が設置されています。

【座席上方ランプを設置している列車】
・踊り子、湘南(東海道線)
・あずさ、かいじ、富士回遊、はちおうじ、おうめ(中央線)
・ひたち、ときわ(常磐線)

座席上方ランプ
画像:JR東日本プレスリリース

座席上方ランプは、その座席が指定席として発売済み(予約済み)かどうかを示すマークです。赤色点灯の場合は「現在予約区間外」、黄色点灯の場合は「もうすぐ予約区間」、緑色点灯の場合は「予約区間(他の旅客が利用中)」という意味です。

画像:JR東日本プレスリリース

予約区間(緑色)では、指定席券を持った他の旅客がその席を使用します。したがって、座席未指定券が使えるのは、赤色と黄色点灯中の座席だけです。

黄色の場合は、次の停車駅で指定席券保持者が乗車してくる可能性が高いです。その際には席を譲らなければなりません。

赤色でも、列車が進むにつれて「黄色、緑色」と変化していきますので、安心はできません。緑色になったら指定席券保有者が来ますので、席を譲らなければなりません。

「座席上方ランプ」のない列車では、どの座席が指定席券販売済みなのかわかりません。したがって、空席があっても、予約した旅客がいつ現れるかわかりません。

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座席未指定券の買い方

座席未指定券は、JR駅の窓口か指定席券売機で購入できます。

指定席券売機では「自由席」の行(右端)に「座席未指定券」というボタンが表示されています。

こちらはJR北海道の公式動画です。指定席券売機での買い方がわかります。JR東日本でも、基本的な操作は同じです。

インターネット列車予約の「えきねっと」では、座席未指定券を購入できません。列車が満席でも「座席未指定券ボタン」は表示されません。チケットレス乗車もできません。

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座席未指定券のメリット、デメリット

座席未指定券のメリットは、全車指定席の列車に座席指定なしで乗ることができる、という点です。空席があれば好きなところに座っていいので、自由度が高いのはメリットです。

特急列車が全区間満席で走っていることは滅多にありません。とくに末端に近い走行区間では空席が目立つことも多く、座席未指定券を買えば、好きな席を選んで座ることができます。

指定席券と違って座席の隣人も選べますから、「隣の人がちょっとアレ」でうろたえることもありません。

一方、特急列車の最混雑区間では、指定席が完全に埋まることも珍しくありません。その場合、座席未指定券では座ることができず、車内のデッキに立つことになります。これは明確なデメリットです。

車内がガラガラなら、好きな座席に座り放題ですが、それでも指定席券保持者がやってきたら席を譲らなければなりません。そういう状況は落ち着かないもので、おちおち居眠りもできません。心理面でのデメリットといえます。

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座席未指定券の使いみちは?

座席未指定券が威力を発揮するのは、指定席が満席の際に、どうしてもその列車に乗りたい場合です。

特急列車の場合、満席表示であっても、席が全部埋まっているのは最混雑区間だけ、というケースが多いものです。首都圏の特急なら都心に近い区間が最混雑区間なので、指定席が満席の際、そこだけ小一時間立つつもりでいれば、使ってみるのもいいでしょう。

また、指定席では、隣にどんな人が座るかわからないから怖い、という方もいます。そういう方には、隣人を選ぶ、2席空いている席しか座らない、といった使い方ができますので、空席のある列車で座席未指定券を使うのもいいでしょう。(鎌倉淳)

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