ゆいレール「普天間延伸」検討の意味。基礎調査に着手、実現性は?

BRT、LRTも調査

ゆいレールの普天間方面への延伸が検討されています。沖縄県が基礎調査に着手しましたが、実現性はあるのでしょうか。

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基礎調査に着手

ゆいレール(沖縄都市モノレール)は、那覇空港~てだこ浦西間の約17kmを結ぶモノレール路線です。2019年に首里~てだこ浦西間が開業し、現在の営業区間となりました。

沖縄県では、さらに宜野湾市普天間方面への延伸について可能性を探っていて、今年度から基礎調査に着手しました。想定される事業費や利用者数、費用便益比などについて検討します。

この調査は、計画中の沖縄鉄軌道(那覇~名護間)と接続するフィーダー交通の実現可能性を探る調査としておこなわれています。そのため、沖縄鉄軌道の実現を前提としています。

ゆいレール

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二つの想定ルート

調査業務の仕様書によりますと、想定しているルートは二つ。「てだこ浦西駅~真栄原~普天間」(ルート1)と、「古島駅~国道330号経由~真栄原~普天間」(ルート2)です。いずれも、普天間駅は基地返還後の跡地の再開発地区に設ける想定で、計画中の沖縄鉄軌道と接続します。

詳細なルートは未定ですが、ルート1は、現在の終点のてだこ浦西駅から琉球大学方面へ進み、西へ転じて、真栄原を経由して普天間に入る形になるのでしょうか。

ルート2は、古島で分岐し、そのまま330号に沿って北上し、普天間に入る形になりそうです。

下図はルートのイメージです。普天間駅の位置を含め、すべて筆者による仮定です。

ゆいレール延伸
画像:地理院地図を加工

 
2つのルート案のうち、ルート2は沖縄鉄軌道の330号ルートと重なります。そのため、ルート2の場合、沖縄鉄軌道は国道58号(海沿い)ルートという仮定になるのでしょう。

ルート1は、沖縄鉄軌道が330号ルートを採用した場合の仮定になるとみられます。

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BRT、LRTは25ルート検討

調査はモノレールだけでなく、BRTやLRTについてもおこなわれます。BRT、LRTについては、鉄軌道の想定駅から近隣市町村を円滑に移動するためのフィーダー交通として、候補となり得るルートを25路線程度抽出し、利用者数や事業費、採算性などを調査します。

25のルートのうち、すでに3ルートは決まっていて、ルート1が「那覇駅~那覇市国場~国道329号~与那原MICE」、ルート2が「名護駅~北部テーマパーク~海洋博記念公園」、ルート3が「北谷駅~嘉手納町~読谷村」となっています。

この3ルートを含めて、BRTやLRTのルート候補を25路線抽出し、調査するというものです。

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沖縄鉄軌道の費用便益比

モノレール、BRT、LRTのいずれも、沖縄鉄軌道のフィーダー交通としての調査です。その目的は、フィーダー交通を整備することで、沖縄鉄軌道の費用便益比を高めることです。

沖縄鉄軌道計画のルートはほぼ固まっていて、採算性については整備新幹線に準じた補助金を獲得することでクリアしようとしています。残るハードルは費用便益比で、沖縄県の調査では、観光客数が年間1350万人を超えるという仮定で「1」を超えるとしていますが、国の調査では「1」に達していません。

沖縄県の狙いは、フィーダー交通を整備し、沖縄鉄軌道と接続するネットワークを構築し、鉄軌道の便益を高めることのようです。そのため、調査業務には、沖縄鉄軌道計画の便益部分について、効果が高い項目があれば提案することも含まれています。

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深刻な渋滞解消を

ゆいレールの延伸については、2018年度と2021年度に調査がおこなわれ、5ルートが検討されましたが、いずれも費用便益比、採算性とも基準を満たすには至らない結果となっています。

過去の調査結果から推測すると、今回の調査の2ルートで、基準を満たせるだけの便益や採算性を得られるかといえば、厳しそうです。また、鉄軌道のフィーダー交通という位置づけの調査のため、延伸がにわかに実現することもなさそう。

ただ、那覇近郊の深刻な渋滞を考えれば、軌道系交通機関の早急な充実を期待したいところです。(鎌倉淳)

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