JR北海道は、石勝線夕張支線について、2019年3月31日限りで廃止することを正式発表しました。地元自治体の夕張市と合意しました。JR北海道が「単独で維持困難」としている13線区で、初めての路線廃止決定です。
JR社長と夕張市長が覚書に署名
石勝線夕張支線は、新夕張~夕張間16.1㎞を結ぶローカル線です。経営難のJR北海道が「単独で維持困難」としている13線区の一つで、地元夕張市は早くから廃線に同意していました。
2018年3月23日に、JR北の島田修社長と夕張市の鈴木直道市長が廃線の覚書に署名し、廃止が正式決定しました。
廃止日は2019年4月1日。その前日の3月31日限りで夕張支線は姿を消すことになります。
JRが7億5000万円を拠出
JR北海道と、夕張市の合意内容は以下の通りです。
1. 鉄道事業廃止日は2019年4月1日。
2. JR北海道は、鉄道事業廃止後、夕張市において持続可能な交通体系を再構築するために必要な費用として、7億5000万円を拠出する。
3. JR北海道は、夕張市が南清水沢地区に整備を進めている拠点複合施設に必要とな
る用地を一部譲渡する。
新夕張駅を改修
現在の夕張支線は、1日5往復の普通列車が走るのみ。輸送密度は 80人キロで、年間収入1000万円の収入に対し、費用が1億7600万円もかかっています。差し引き、年間の赤字額は1億6600万円に上ります。
廃止後はバス転換され、1日10往復程度が運転されます。バスは石勝線新夕張駅を起点に、南清水沢、夕鉄本社ターミナル、夕張駅付近を経て、夕張市石炭博物館への乗り入れを検討します。
代替バスの起点となる新夕張駅では、鉄道とバスの乗換利便性の向上を図るため改修が行われ、2017年10月1日から駅前広場にバスが乗り入れられるようになりました。
乗り換えの際に、駅舎内の待合室でバスを待つことができるようになり、バス・タクシー乗り場に駅舎から続く上家を新設し、降雨・降雪の際でも使いやすくなっています。
南清水沢に交通拠点
南清水沢には、、交通結節機能を果たす拠点複合施設が2019年度に設けられる予定です。拠点施設には、路線バスが乗り入れるロータリーと、待合スペースが整備され、屋内でバスを待つことができます。ここから、デマンド交通で夕張市内の交通ネットワークを構築していきます。施設内には、多目的ホールや図書スペース、学習スペースも設けられます。
夕張市には、札幌からの高速バス「ゆうばり号」も乗り入れています。代替バスが、新夕張駅での石勝線との接続と、夕鉄本社ターミナルでの「ゆうばり号」の接続を取ることも考慮されます。
夕張市は、「維持困難路線リスト」の公表前の2016年8月に夕張支線の廃止を受け入れる姿勢を示し、市内交通の整備について、JRと綿密な協議を重ねてきました。それだけに、廃線に向けた準備は整っており、夕張の公共交通全体の利便性は、これまでよりも上がりそうな印象です。
残る「維持13線区」の状況は?
さて、JR北海道が2016年11月に公表した「維持困難13線区」は以下の通りです。
・札沼線(北海道医療大学~新十津川)
・根室線(富良野~落合)
・留萌線(深川~留萌)
・宗谷線(名寄~稚内)
・根室線(釧路~根室)
・根室線(滝川~富良野)
・室蘭線(沼ノ端~岩見沢)
・釧網線(東釧路~網走)
・日高線(苫小牧~鵡川)
・石北線(新旭川~網走)
・富良野線(富良野~旭川)
・石勝線夕張支線(新夕張~夕張)
・日高線(鵡川~様似)
これらの線区のうち、廃止が決まったのは石勝線夕張支線が初めてです。残る線区のうち、まもなく方向性が決まりそうなのが札沼線の北海道医療大学~新十津川間(札沼北線)です。
札沼北線では、JR北海道と沿線4自治体が個別協議に入っており、2018年夏までには結論が出そうです。利用状況から存続は難しく、結論の1年後となる2019年9月末頃までに廃止される可能性が高そうです。
有識者会議が方向性
それ以外の路線については、北海道の有識者会議が、2018年2月に、存続への優先順位について方向性を示しています。
それによると、宗谷線(名寄~稚内)、石北線(新旭川~網走)、釧網線(東釧路~網走)、根室線(釧路~根室)、富良野線(富良野~旭川)の5線区は、存続の可能性が高いと言えます。
一方、留萌線(深川~留萌)、日高線(鵡川~様似)、根室線(富良野~新得)の3線区は存続が難しいとみられます。
残る室蘭線(沼ノ端~岩見沢)、日高線(苫小牧~鵡川)、根室線(滝川~富良野)の3線区は今後の議論に委ねられるでしょう。(鎌倉淳)