山形新幹線「つばさ」自由席廃止の概要。全車指定席化で料金はこう変わる!

E8系投入見据え

山形新幹線「つばさ」が2022年春に自由席を廃止し、全車指定席とします。指定席料金は値下げしますが、自由席利用者にとっては値上げとなります。概要を見てみましょう。

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混雑が著しく

山形新幹線「つばさ」は東京~山形~新庄間を結ぶ列車です。東京~福島間はフル規格新幹線の東北新幹線を走り、福島~新庄間は在来線の奥羽線を走ります。新幹線と在来線とを直通運行する「新在直通」の草分けで、福島~新庄間は「ミニ新幹線」とも呼ばれています。

現在の「つばさ」はE3系7両編成で、うち2両が自由席。これについて、JR東日本は、2022年春に自由席を廃止し、全車指定席に変更すると発表しました。

JR東日本は「つばさ」全車指定席化の背景として、最繁忙期を中心に混雑が著しいことを挙げています。「自由席に座るために長時間並ぶ不便さ」「始発駅に近い方が座れるという不公平感」「当日まで席の確保が不確実」といった課題に対処するということです。

また、2021年6月に「えきねっと」がリニューアルしたことが契機である旨の説明もしています。指定席予約サービスが拡充され、チケットを買いやすくなったのを受けて、全車指定席化に踏み切るということです。

E3系山形新幹線つばさ
画像:JR東日本プレスリリース

特急料金も改定

全車指定席化と同時に、ミニ新幹線の特急料金などの改定も実施します。

現在、新幹線区間と在来線区間を直通利用する場合、特急料金は新幹線特急料金と在来線用A特急料金の約3割引相当(幹在特)を合算しています。このうち幹在特を廃止し、在来線部分に新たな特急料金制度を導入します。

座席指定料金についても改定し、新幹線区間(通常期530円)と在来線区間(同380円)の合算をやめ、一律の料金(同530円)とします。

山形新幹線新料金
画像:JR東日本プレスリリース

これにより、改定後の料金は、新幹線・在来線直通利用の指定席は100円~150円の値下げ、自由席は760円~810円の値上げとなります。在来線単独利用(福島~新庄間のみ利用)は、指定席・自由席とも現在と同額から最大280円の値下げとなります。

山形新幹線新料金
画像:JR東日本プレスリリース

山形新幹線新料金
画像:JR東日本プレスリリース

ミニ新幹線の料金改定は秋田新幹線にも適用され、在来線部分の指定席料金が100円安くなります。

秋田新幹線新料金
画像:JR東日本プレスリリース

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特定特急料金を設定

山形新幹線の在来線区間(福島~新庄間)のみを利用する場合、自由席廃止の救済措置として、新たに特定特急料金を設定します。特定特急料金は通常期の指定席特急料金から530円引きで、普通車指定席の空席を利用できます。これは秋田新幹線と同じ仕組みです。

また、在来線区間を利用できる「つばさ定期券」については、普通車指定席の空席利用という形で継続発売します。価格は、新たな特急料金適用により値下げとなります。

山形発7時1分発新庄行き『つばさ171号』の普通車自由席を利用できる「つばさモーニング特急券」は、全車指定席化により廃止されます。普通車自由席を利用する「タッチでGo!新幹線」は、福島駅をまたがった新在直通利用ができなくなります。

E8系導入見据え

以上が、山形新幹線「つばさ」の全車指定席化と料金変更の概要です。全車指定席にするかわりに指定席料金を若干値下げするという内容で、近年、「あずさ」「ひたち」などで導入された新たな特急料金制度導入時と似ています。

山形新幹線では、2024年に新型車両のE8系を投入する予定もあり、全車指定席化はE8系運行開始を見据えたものとみることもできます。E8系で「あずさ」「ひたち」のような座席上方ランプが設置されるかが、今後の注目点となりそうです。

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冷静な受け止め

山形新幹線の自由席については、JR東日本が挙げた「混雑、不便、不確実、不公平」といった課題は確かにあり、上り「つばさ」自由席の立ち客が、福島駅で併結する「やまびこ」自由席に駆け込む「福島ダッシュ」などという言葉まで生まれていました。

そのため、SNSの反応をみても、自由席廃止を「やむを得ない」と冷静に受け止める声が目立ち、自由席利用者にとっての値上げを問題視する意見を上回っているように感じられます。

異論があるとすれば、JR東日本が全車指定席化の契機として「えきねっと」のリニューアルを挙げたことでしょうか。「えきねっと」が使いやすくなったから自由席廃止、という理屈は、さすがに理解を得られにくいように思えます。

新幹線の自由席は、思い立ったときに飛び乗れる便利さがあるので、それがなくなるのは残念です。ただ、近年は自由席よりも指定席が好まれる傾向が強まっているのも確かで、自由席の利用状況を考えると、やむなしというところでしょうか。(鎌倉淳)

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