屋久島空港で滑走路の延伸計画が進められています。3月には、空港の施設変更に関する公聴会が開催されることになりました。内容を詳しく見ていきましょう。
屋久島空港の現状
屋久島空港は、鹿児島県屋久島町に位置する空港で、屋久島への空の玄関口です。屋久島は、島の約2割が世界自然遺産に登録されており、国内外から多くの観光客を集めています。
しかし、現在の屋久島空港の滑走路の長さは1,500メートルにとどまり、発着できる航空機の種類や便数に制限があります。
とくに、ジェット機が就航できないことから、多くの来島者が鹿児島空港を経由し、プロペラ機に乗り換えて移動せざるをえないといった課題があります。
延伸の目的と背景
屋久島空港の滑走路延伸は、こうした課題を解決するために、ジェット機が離着陸できるようにすることが最大の目的です。ジェット機の離発着ができるようになれば、とくに羽田空港からの直行便の設定が可能になり、首都圏からの来島客数が増えることが期待されます。
近年は、屋久島を訪れる外国人旅行客が増えていることから、ジェット機就航が可能となることで、海外からのチャーター便就航も期待できます。
国土交通省の個別公共事業評価書によれば、屋久島への来島者が増えることで、「観光消費の増大、関連産業の雇用機会の拡大、地域所得の増大が期待される」としています。
観光業は屋久島の経済の重要な柱であり、観光客の増加は地元経済の活性化につながるというわけです。
貨物利用についても、農水産物や加工品の輸送がしやすくなり、農水産業の振興発展につながるとしています。
延伸の具体的な内容
屋久島空港の滑走路延伸計画は、現在の滑走路の長さを1,500メートルから2,000メートルに延ばすものです。具体的には、北西側に180メートル、南東側に320メートルを延伸します。
あわせて、エプロンやターミナルビルも拡張します。
エプロンについては、ジェット機駐機のため1バースを拡張します。ターミナルについては、現在の空港ターミナルビルの約3倍程度の建築が可能となる敷地を計画します。ただし、ターミナルビルの増築内容については、現時点では明らかではありません。
そのほか、航空機のための給油敷地を確保します。さらに、滑走路延長にあわせて、滑走路中心線灯やローカライザーなどの照明・無線施設を整備します。これにより、悪天候による視界不良や夜間着陸時の安全性が向上します。
延伸の効果
国土交通省の資料によれば、滑走路の延伸が実現し、羽田線を開設した場合、年間13万人程度の利用者が見込まれます。
1日あたりでは350人程度、片道あたりなら180人程度ですので、B737クラスの小型ジェット機が、1日1~2往復程度運行することを想定しているようです。
2000メートル滑走路が完成すれば、エアバスA300、ボーイングB767といった、中型ジェット機も離着陸可能ですので、利用者が多ければ、こうした大きめの機材が使用される可能性もあるでしょう。
個別公共事業評価書によれば、総事業費は169億円で、費用便益比は1.8となっています。
おもな便益としては、「屋久島~関東間の旅行時間の短縮」「屋久島~関東間の旅行費用の低減」「無線施設等の整備による既存路線(鹿児島,福岡,伊丹路線)の欠航便の減少」などが織り込まれています。
完成はいつ?
屋久島空港滑走路延伸の事業期間は、2033年度までを見込んでいます。予定通りにすすめば、あと8年後には、羽田~屋久島の直行便が開設されることになるでしょう。
滑走路延伸により、具体的に、どれほどの便数が設定されるのかは未決定です。おそらくは、JAL、ANA両社に、羽田空港発着枠が1枠ずつ与えられ、それぞれが180席クラスの機材を投入して運航を開始するのでしょう。
ただ、屋久島は宿泊施設が限られています。開発の規制も厳しいので、今後、大型ホテルが続々建設されることもないでしょう。また、縄文杉へのトレッキングルートを筆頭に、観光客を受け入れすぎても捌けないといった課題もあります。
国土交通省では、屋久島空港の施設変更に関する公聴会を2025年3月4日に開催します。観光開発と環境保護のバランスを取りながら、事業を進めて欲しいところです。(鎌倉淳)