浮かんでは消えている鉄道路線構想はいくつもありますが、「浅草線短絡新線構想」もその一つ。成田空港から京成線が、羽田空港から京急線が、それぞれ東京駅に乗り入れるというものです。
調査費2億5000万円を計上
当初は、都営浅草線の宝町付近からの分岐などが検討されましたが、それでは時短効果がほとんどないということでお蔵入り。そのかわりに、押上から泉岳寺まで11kmの新線を敷設するという構想が浮上してきました。これを「浅草線短絡新線」または「都心直結線」といいます。
2013年予算の概算要求で、国土交通省が調査費として2億5000万円を計上し、新聞・テレビでも大きく報じられました。
新東京駅~成田空港36分
構想では、東京駅前の地下に新東京駅を造り、羽田空港まで18分、成田空港へ36分でつなぎます。新東京駅は、JR東京駅の皇居側を南北に伸びる「丸の内仲通り」の地下に造る案が有力。都営地下鉄浅草線の押上駅と泉岳寺駅の間(約11キロメートル)に新たなバイパス路線を地下に通す構想で、用地買収の要らない「大深度」に建設されるようです。
路線の詳細は決まっていません。押上駅は新設。泉岳寺駅は現在のものを活用するようです。途中駅はなし。また、京急品川駅は別の構想で大改造が検討されていますが、都心直結線ができるならそれに対応したものになるでしょう。
羽田・成田アクセスばかりが強調されますが、国土交通省の調査結果を読むと、通勤通学路線としての活用にも重点が置かれています。となると、京急や京成の主力列車が乗り入れる可能性は少なくありません。両社にとって、東京駅乗り入れは「悲願」といってもいいくらいで、京急からは快特が、京成からは本線特急が乗り入れる可能性も高いです。実現すれば、京成の「船橋逸走」、京急の「横浜逸走」が緩和され、沿線住民の利便性アップは間違いありません。
「1面2線」で足りるのか?
ただ、現在の計画で気になるのは、新東京駅の容量の低さ。調査結果概要を見るとホームは1面2線で計画されています。スカイライナーの他に京急や京成の主力列車が乗り入れるとなれば、1面2線では容量不足は明らかです。丸の内仲通りの道路幅との関連もあるのでしょうが、路線の運用を考えれば2層にしてでも2面4線を建設して欲しいところです。
また、京急空港線や成田スカイアクセス線の線路容量の問題もあります。京急空港線にはスカイライナーを新たに乗り入れる容量はなさそうなので、スカイライナーの羽田乗り入れは期待薄。また、蒲蒲線構想もありますが、もしそれも建設するなら、さらに空港線の容量も足りません。スカイアクセス線は、成田湯川以東は単線ですので、これを解消しなければ増発は困難です。
「都心直結線」の総事業費は、現在の見積もりで「3700億円+α」。さらに新東京駅を2面4線にすれば事業費は膨れあがるでしょう。3700億円でも巨額なのに、それ以上ともなれば、実現に赤信号がつきます。しかし、ケチって中途半端なものを作るのはやめてほしいところ。どうせ作るなら、予算をきちんと積んで、乗り入れ先の整備も含め、いいものを作って欲しいですね。