東京都が、都内の鉄道路線の事業化に向けた基金を創設すると発表しました。対象となるのは6路線。東京都が、優先して建設する鉄道新線を、明確にした形です。
交通審議会答申掲載の6路線
基金の名称は「鉄道新線建設等準備基金」。都が47%保有する東京メトロ株の配当の累計約620億円を2018年度に積み立て、2019年度以降も年数十億円の配当を繰り入れます。
この基金の対象となったのは、2016年に発表された交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」に掲載された線区。都では、そのなかから、事業化に向けて検討などを進めるべきとされた6路線を選び、さらに検討を深めていくとしています。
対象の路線は、以下の通りです。
・羽田空港アクセス線(田町駅付近など―羽田空港)
・新空港線(蒲田―京急蒲田)
・有楽町線(豊洲―住吉)
・大江戸線(光が丘―大泉学園町)
・多摩都市モノレール(上北台-箱根ヶ崎)
・多摩都市モノレール(多摩センタ-町田)
都心直結線は「落選」
交通政策審議会第198号では、他にも、つくばエクスプレスの延伸や臨海地下鉄、品川地下鉄、都心直結線、大江戸線の東所沢延伸、多摩都市モノレールの八王子延伸、半蔵門線の野田・松戸延伸、エイトライナー、メトロセブンなども盛り込まれていますが、そうした路線は、今回の検討対象に選ばれていません。
要するに、東京都として、実現可能性の高い鉄道新線とみなしているのが今回選んだ6路線である、と明確にしたことになります。
都では、2018年度予算で「鉄道等の交通ネットワーク整備」に関する調査費として、前年度の2倍以上の8400万円を計上。鉄道新線の建設へ意欲を見せました。
箱根ヶ崎延伸に意気込み
ただ、6路線の事業化への進み具合には濃淡があります。
多摩都市モノレールでは、箱根ヶ崎延伸は導入空間となる道路整備が進んでおり、事業化に向けて大きなハードルはなくなってきています。東京都の予算案説明資料にも「都が事業主体となる多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸を含め」とわざわざ明記しており、都の意気込みが感じられます。
一方、同じ多摩都市モノレールでも、町田方面への延伸は、道路計画すらできていない区間が残っており、事業化には相当の時間がかかりそうです。
6路線がすべて建設されるという保証があるわけでもなく、都は「事業化に向けた検討の深度化を図っていく」段階としています。
とはいえ、東京都内の鉄道新線の優先区間が明確化され、調査費も倍増したことで、建設に向け弾みが着くのは間違いなさそう。作るのであれば、早めの実現を期待したいところです。(鎌倉淳)