東北新幹線・盛岡~新青森間で320km/h運転へ。北海道新幹線はどうなる?

東京~札幌4時間半へ

JR東日本が、東北新幹線・盛岡~新青森間で最高速度320km/h運転を開始する方針を固めました。実現すれば、整備新幹線で初めてのスピードアップです。同じ整備新幹線の北海道新幹線も気になりますが、今後どう変わるのでしょうか。

広告

整備新幹線区間の制限

東北新幹線の盛岡~新青森間は、いわゆる整備新幹線として建設されました。鉄道建設・運輸施設整備支援機構が線路設備を建設・保有し、JR東日本が運行を担っています。整備新幹線区間は最高速度が260km/hと定められていて、たとえそれ以上で走れる車両であっても、最高速度は抑えられています。

そのため、東北新幹線の盛岡~新青森間も、最高速度は260km/hです。大宮~宇都宮間は275km/h、宇都宮~盛岡間は320km/hですので、新しく作られた区間のほうが、昔に作られた区間より最高速度が遅いという現象が起きています。

騒音への配慮が求められた東京~大宮間は110km/hで、荒川橋梁以北の約12kmの区間について、最大130km/hに引き上げる工事が進められています。

E5系
写真:JR東日本

次世代新幹線試験車両

一方、JR東日本は、2030年度に予定されている北海道新幹線札幌延伸時までに、最高速度360km/hでの営業運転実現を目指していて、次世代新幹線試験車両「ALFA-X」を開発中です。しかし、現状のルールでは、仮に360km/h運転可能な車両の開発に成功しても、整備新幹線区間となる盛岡以北では、260km/hを超えることはできません。

これについて、朝日新聞2018年1月14日付は、「JR東日本は東北新幹線の区間(盛岡―新青森)について騒音対策を施し、320キロ運転を実現する方針を固めた」と報じました。実現すれば、整備新幹線で初めての最高速度向上となります。同紙によると、「約200億円を投じ、防音壁のかさ上げや吸音板の設置などを進め、おおむね5年以内の完成をめざす」としています。

東北新幹線と直通する北海道新幹線では、青函トンネル区間の最高速度を160km/hに向上させることを予定しており、2019年3月ダイヤ改正で、東京~新函館北斗間を3時間58分で走る列車が登場します。

これにくわえて、盛岡~新青森間の320km/h運転が実現すれば、所要時間はさらに6分縮まります。あわせて東京~新函館北斗間は最短で3時間52分前後となる計算です。

広告

札幌延伸時の所要時間は?

この速度向上の真の目的は、東京~新函館北斗間の時間短縮というよりは、北海道新幹線の札幌開業時の時間短縮でしょう。

では、2030年度に北海道新幹線の札幌延伸が実現した場合、東京~札幌間の所要時間はどうなるのでしょうか。

北海道新幹線も整備新幹線なので、最高速度260km/hで建設されています。新函館北斗~札幌間は、長万部、新小樽の2駅停車で約1時間4分との試算です(2012年国交省整備新幹線小委員会資料)。両駅通過のノンストップなら56分程度と見込まれます。

そのため、盛岡~新青森間で320km/h運転が実現したとしても、北海道新幹線の最高速度が変わらなければ、東京~札幌間は最短4時間48分前後という計算になります。5時間弱ということで、対飛行機の競争では厳しい数字です。

北海道新幹線の所要時間
収支採算性及び投資効果に関する詳細資料(平成24年国交省)

北海道新幹線も高速化したら?

では、北海道新幹線も320km/h運転にしたら、どの程度の所要時間になるのでしょうか。別の国土交通省資料によると、盛岡~札幌間を全線で320km/h運転した場合に、4時間33分という数字が出ています。

北海道新幹線の速度向上させた場合
「収支採算性及び投資効果の確認」に関する詳細資料(平成24年国交省)

これにくわえて、ALFA-Xの開発が成功し、宇都宮~新青森間を360km/hで運転した場合を考えてみましょう。これによる時短効果がどの程度かは明らかではありませんが、仮に20分とすると、東京~札幌間で4時間13分という計算になります。新函館北斗~札幌間をノンストップにすると、4時間5分でしょうか。

この数字を達成するには、青函トンネル区間の速度向上が必要なので、貨物列車との共用問題を解決する必要があります。解決できない場合として、青函区間を160km/h運転、それ以外の北海道新幹線区間を320km/h運転、宇都宮~新青森を360km/h運転とすると、東京~札幌の所要時間は4時間20~30分程度となりそうです。

上記の数字は手堅く見積もっているので、実際はもう少し早くできる可能性もあります。北海道新幹線区間でも360km/h運転をすれば、さらに時間短縮が可能でしょう。青函トンネル区間の問題が解決されない限り、東京~札幌間の4時間切りは難しそうですが、それに近づけることはできそうです。

広告

誰が費用を負担するのか

いまのところ、北海道新幹線は最高速度260km/hの設計となっています。これを速度向上させる場合、誰がその費用を負担するか、という問題があります。

東北新幹線の盛岡~新青森間の高速化費用をJR東日本が負担するなら、北海道新幹線区間の費用はJR北海道が負担しなければならない理屈です。しかし、現在のJR北海道に、その余力はなさそうです。

とはいえ、JRにとっても、利用者にとっても、高速化には大きなメリットがあり、挑戦する価値があるように感じられます。北海道新幹線の320km/h以上での運転についても、これを機会に議論がスタートすることを願いたいところです。(鎌倉淳)

広告
前の記事フィンエアーが新千歳~ヘルシンキ線を開設へ。北海道・欧州直行便は定着するか?
次の記事ANAがモスクワ、ウラジオストク線参入へ。ロシアの旅はいかが?