鉄道軌道整備法はこう変わる。黒字鉄道会社への災害復旧補助が可能に

条文の中身を見てみよう

災害で被災した鉄道の復旧支援を拡大する鉄道軌道整備法改正案が、本国会で成立する見通しとなりました。2018年5月31日の衆院本会議で可決され、参院での審議を経て、6月中旬にも成立する見通しです。

広告

JR上場会社にも適用可能

現行の鉄道軌道整備法では、災害により不通になった鉄道路線の復旧事業について、鉄道会社の経営が赤字である場合に限り、国が補助することができます。そのため、JR上場4社のような黒字会社のローカル線が被災した場合に、復旧が進まないという問題点がありました。

改正案は、激甚災害など特に大規模な災害があった場合の補助制度を追加し、黒字の鉄道会社に対して適用可能とするものです。復旧費用が被害を受けた鉄道路線の年間収入以上であること、被害を受けた鉄道路線が過去3年間赤字であることなどを要件に、災害復旧事業にかかる費用の一部を補助することができるようにします。

只見線
写真:福島県金山町ホームページ

鉄道軌道整備法改正案の中身

参院に送付された鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案で追加される条文は、以下の通りです(一部、記載省略しています)。

————————
第八条
5 政府は、前項に定めるもののほか、第三条第一項第四号に該当する鉄道に係る災害復旧事業が、次の各号のいずれにも該当するときは、予算の範囲内で、当該災害復旧事業に要する費用の一部を補助することができる。

一 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律第二条第一項に規定する激甚災害その他これに準ずる特に大規模の災害として国土交通省令で定めるものに係るものであること。

二 当該災害復旧事業の施行が、民生の安定上必要であること。

三 当該災害復旧事業に要する費用の額が、当該災害復旧事業に係る災害を受けた日の属する事業年度(次号において「基準事業年度」という。)の前事業年度末から遡り一年間における当該鉄道の運輸収入に政令で定める数を乗じて得た額以上であること。

四 基準事業年度の前事業年度末から遡り三年間における各年度に欠損を生じている鉄道に係るものであること。
————————

広告

要件をまとめると

簡単に要件をまとめると、以下のようになります。

・激甚災害やこれに準ずる特に大規模の災害に適用。
・「これに準ずる特に大規模の災害」は国土交通省令で定める。災害の規模などを勘案して、発生後に国土交通大臣が指定。
・復旧費用≧被害を受けた路線の年間収入×政令で定める数(1.0を想定)。
・被害を受けた路線が過去3年間赤字。

補助の割合は政令で規定され、現状の国4分の1、自治体4分の1、鉄道事業者2分の1の割合に変更はありません。

ただし、例外的に、「災害を受けた鉄道が存する地域における交通の状況、事業構造の変更による経営の改善その他の事情を勘案して国土交通大臣が特に必要があると認める場合に」限り、国と自治体の補助割合を3分の1にする方向です。

広告

2016年度以降の復旧事業にも遡及適用

この改正案は、成立後三カ月以内に施行されます。附則として、「鉄道事業者が平成二八年四月一日からこの法律の施行の日の前日までの間のいずれかの日から施行した災害復旧事業についても適用する」とされ、2016年度以降に着手した災害復旧工事にも遡及適用されることになりました。

そのため、この法律案が成立すれば、只見線や日田彦山線の復旧事業に適用される見込みです。

配当はご自由に

このほか、今回の改正案では、第一五条の二「配当の許可」において、追加された第八条第五項の補助が除外されました。簡単にいうと、補助を受けた鉄道会社は、政令で定める割合以上の配当を行う場合、国土交通大臣の許可が必要なのですが、今回追加された要件での補助の場合は、不要となります。

企業が補助金を受けながら配当を出す場合、間接的に国の補助金が配当に化ける、という理屈にもなります。そのため、一定金額以上の配当に国土交通大臣の許可が必要とされているようですが、今回定められた激甚災害復旧補助金に関しては、それは不要であるこということです。(鎌倉淳)

広告
前の記事新幹線車内のWi-Fiサービスが全国へ拡大中。2020年見据え導入進む
次の記事秋田新幹線「仙岩峠トンネル」と、山形新幹線「板谷峠トンネル」の違い