手元にあった米ドルのトラベラーズチェック(TC)を、都内の銀行で日本円に両替したら、なんと50分もかかりました。ただそれだけの話なのですが、両替に50分というのは、海外でも経験したことがないので、ちょっと書いておきます。興味のある方だけお読みください。
日本国内でのTCの販売は、2014年3月末を以て終了しました。それについては、「日本国内でのトラベラーズチェックの販売が2014年4月1日に完全終了」という記事にしています。
筆者も手元に古いアメリカンエクスプレスの米ドルTCが残っていたので、早めに使ってしまおうと思っていたのですが、海外旅行に行くと、両替はついクレジットカードで済ませてしまいます。そこで、もう日本で両替してしまおう、ということで、都心部のメガバンクの支店へ持ち込みました。1,000ドルほどです。
窓口嬢は目を丸くして
TCの両替をしたい、と若い窓口嬢に伝えると目を丸くしていました。もののたとえではなく、本当に目を丸くして、手に取り、しげしげと眺めた後、「両替できるか確認しますので、お待ちください」とのこと。どこかへ電話をし、上司に確認し、を繰り返し、ようやく30分ほど経ってから呼ばれ、「1枚だけサインをしていただけますか?」。
TC使用の基本ルールとして、サインは両替時に、両替商の目の前で行わなければなりません。あらかじめサインしたTCは両替してくれなくなります。そのため、「サインを求めるなら、このTCは両替してくれるのですね」と確認すると、「少々お待ちください」とまた電話。
結局、別の紙にサインをし、窓口嬢がそのサインとTCのサインを照合し(といっても見るだけ)、さらに電話で偽造を見抜くポイントを教わりチェックし、一つ一つのTC番号が事故になっていないことを確認して、ようやく両替可能になりました。日本円の現金になるまで、50分かかりました。
もし自分が外国人観光客で、米ドルのTCを日本で使おうとして、銀行に持ち込んで、こんな目にあったら大変だなあ、と思わずにいられません。でも、たぶん、もうTCを銀行に持ち込む外国人観光客などいないのでしょう。十数年前は、それなりにいたようですが。
対応してくださった窓口嬢に尋ねると、TCを見るのも初めてで、もちろん使ったこともないとのこと。ならば、サインは両替時に目の前で、という基本ルールを理解していないのは仕方ありません。つい半年ほど前まで、いちおう日本国内でも販売されていた商品ですが、本当に売れてなかったのでしょう。
日本は両替時になぜ本人確認しないのか
ということで、TCの両替をする方はお早めに。今はこうして、普通の店舗でも時間を掛けて対応してくださいましたが、いずれ特定の店舗でしか扱ってくれなくなるのは間違いありません。TCは本当に「化石」になってしまったようです。
ひとつ疑問に思ったのは、TCについていろいろチェックをしたわりに、筆者本人の身元確認がなかったことです。海外でTCを両替するときは、ほとんどの場合、パスポートの提示を求められ、顔写真を確認され、その番号を控えられます。日本でも免許証確認くらいすればいいのに。
外貨両替による犯罪を予防したいなら、TCや紙幣のチェックをするよりも、本人確認のほうがよほど大事ではないか、と思います。でも、昔から日本では両替時に本人確認はありませんね、そういえば。ニッポンの小さな不思議です。
それにしても、銀行の窓口は1日6時間しか開いていません。そのうちの50分を、こんな対応に使っていただき、銀行の方にはありがとうございました。