航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が未曾有の高値圏に突入しています。JAL、ANAとも2022年6月発券分から大幅に引き上げ、ヨーロッパ往復は7万円以上となります。
基準価格が1.4倍に
JALとANAは、国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、2022年6-7月発券分で大幅に引き上げることを発表しました。
燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。
JALによりますと、6-7月発券分では、基準となるシンガポールケロシンの直近2ヶ月の市況価格が122.40米ドルで、同期間の為替平均が117.02円。これを乗じた1バレルあたりの金額は14,323円となりました。前回の基準金額は10,253円でしたので、約1.4倍に急騰したことになります。
JALの新サーチャージ金額
これにより、JALでは6月1日発券分から燃油サーチャージの価格を引き上げます。ひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが20,200円から36,800円に、ハワイ、インドなどが12,700円から23,600円に、タイ・シンガポールなどが9,800円から19,600円になります。
これは片道金額なので、往復で北米・欧州・オセアニアなどが73,600円に、インド・ハワイなどが47,200円に、タイ、シンガポールなどが39,200円になります。アメリカやヨーロッパには、サーチャージだけで往復7万円以上がかかることになります。
路線 | 4-5月 | 6-7月 |
---|---|---|
北米・欧州・中東・オセアニア | 20,200 | 36,800 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 12,700 | 23,600 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ | 9,800 | 19,600 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル | 5,800 | 12,700 |
東アジア(韓国、モンゴルを除く) | 5,200 | 9,900 |
韓国 | 1,800 | 4,100 |
※片道あたり、発券日基準
ANAの新サーチャージ金額
ANAも同様で、6月1日発券分から燃油サーチャージを引き上げます。
日本から北米・欧州・オセアニアなどが19,900円から37,400円に、ハワイ・インドなどが12,500円から23,800円に、タイ・シンガポールなどが9,700円から20,400円となります。
路線 | 4-5月 | 6-7月 |
---|---|---|
北米・欧州・中東・オセアニア | 19,900 | 37,400 |
ハワイ・インド・インドネシア | 12,500 | 23,800 |
タイ・シンガポール・マレーシア・ミャンマー・カンボジア | 9,700 | 20,400 |
ベトナム・グアム・フィリピン | 5,700 | 12,500 |
東アジア(韓国を除く) | 5,200 | 11,400 |
韓国 | 1,800 | 4,100 |
※片道あたり、発券日基準
ロンドン往復の最安値は?
いうまでもありませんが、運賃本体は別途です。試みに、JALの東京~ロンドン線を検索してみると、6月頃の運賃の最低価格は片道75,000円。日によっては片道255,000円という金額も見受けられます。サーチャージを含めると、最安値で往復22万円程度、日によっては58万円以上となります。念のためですがエコノミークラスの価格です。
欧州路線はロシア上空を避けるために飛行距離が伸びており、それが運賃にも反映されているようです。もちろん、空港利用料等は別途です。
適用条件表の上限を突破へ
燃油サーチャージの金額は、1バレル当たりの基準金額に基づいて、あらかじめ適用条件表が公開されています。今回の14,000円台は、適用条件表では「14,000円~15,000円」のゾーンに該当します。このゾーンは、JAL、ANAともホームページで表示されている適用条件表の最高水準です。
そして、4月に入り、シンガポールケロシンの相場は高止まりし、為替水準は大幅に円安に振れています。直近のシンガポールケロシンの相場は160米ドル程度で、為替は1ドル127円を上回っています。この金額で計算すれば、基準金額は20,000円を超え、適用条件表の天井を大きく突破します。
適用条件表の上限を超えた場合の燃油サーチャージ額がいくらになるのかは定かではありません。上限以上に価格が上がらないならいいのですが、そうではなく、青天井に上昇していくのであれば、8-9月発券分のサーチャージ額は途方もない金額になるでしょう。
8-9月分は往復12万円超えも
北米・欧州方面を例に取ると、JAL、ANAいずれの適用条件表でも、基準金額が1万円あがるごとにサーチャージ金額が4,000円程度上昇しています。基準金額が20,000円台となれば、片道当たりのサーチャージが60,000円程度になる理屈です。往復では12万円です。
新型コロナウイルスの影響で海外旅行ができないので、あまり関心を呼んでいないようですが、燃油の高騰と円安で、燃油サーチャージ金額は未曾有の高値圏に突入しています。コロナ禍が終わって海外旅行を計画したら、びっくり仰天という事態になっているかもしれません。(鎌倉淳)