「神戸須磨シーワールド」が2024年6月1日にオープンします。須磨海浜水族園を建て替えてリニューアルした施設です。新水族館の詳細を見て行きましょう。
須磨海浜水族園をリニューアル
須磨海浜公園は2019年に再整備方針が決定し、サンケイビルを代表企業とする「神戸須磨Parks+Resorts共同事業体」が運営を担うことに決まりました。
その目玉施設が、「神戸須磨シーワールド」です。サンケイビルが千葉県の鴨川シーワールドも運営していることから、ネーミングをあわせました。
神戸須磨シーワールドの目玉は、鴨川での飼育技術を活かしたシャチの展示です。日本国内でシャチを展示している水族館は、鴨川シーワールドと名古屋港水族館のみ。神戸須磨シーワールドは、西日本で唯一のシャチを展示する水族館となります。
須磨海浜公園再整備の概要
最初に、須磨海浜公園全体の再整備の全体像を見ていきましょう。平面図は以下の通りです。
水族館施設は、既存のバス回転場付近に立地します。水族館の中心に広場を据え、左右に展示棟を配置するレイアウトです。
展示棟は、広場の東側にシャチ棟を、西側にイルカ棟と魚類・アシカ・ペンギン棟を配置します。シャチ棟の前にエントランス棟があり、イルカ棟の前にレストラン棟を設けます。
水族館の東側には「神戸須磨シーワールドホテル」を配置。水族館西側には「松の杜ビレッジ」というにぎわい施設をつくり、公園西端には「コミュニティ広場」という3000平米の多目的広場を設けます。
シャチ棟
では、水族館の展示計画を見ていきましょう。
目玉はなんと言っても、シャチ棟です。「オルカスタジアム」で、西日本で唯一となるシャチのパフォーマンスを実施します。
メインプールのほか、サブプール、ブリーディングプール、メディカルプールを備えた広々としたスタジアムです。
シャチを見ながら食事ができる「オルカレストラン」や、カフェ併設の「オルカテラス」もオープン。シャチに関する教育ゾーンとして「オルカラボ」も設けます。
イルカ棟
イルカ棟にも大規模なスタジアムを設けます。イルカのスピーディーな運動能力を発揮できるパフォーマンスを実施。独自の演出手法を用いた「スペシャル・ナイトパフォーマンス」もおこないます。
イルカと直接触れあえる「ドルフィンビーチ」も設けます。他の水族館にはあまりない施設になりそうです。
イルカプールの総水量は2,349立方メートルで、12頭を飼育します。既存施設が1,190立方メートルで8頭だったことから、1頭あたりの水量は3割増となります。
1階にはイルカの生態を間近で観察できる「ドルフィンホール」を設けます。イルカを観察しながら休憩できるスペースです。
近海・淡水展示
魚類・アシカ・ペンギン棟は、1~3階が魚類展示エリア、3~4階が海獣類・ペンギン展示エリアとなります。
エントランスは3階です。右手から入ると、六甲水系や瀬戸内海の生態系を展示する「ローカルライフ」が始まります。いわゆる近海・淡水展示です。
3階平面図
館内に順路は設けませんが、赤い点線が主要動線です。「ローカルライフ」は、瀬戸内海の自然や神戸・須磨の原風景に想いを馳せる空間となります。
3階には海獣コーナーもありますが、それは後回しにして2階に降ります。2階にもローカルライフの展示が続いていて、干潟の生物などがあります。
2階平面図
遠海展示
2階ではローカルライフが終わると、「クラゲライフ」、さらに太平洋の「コーラルライフ」と続きます。いわゆる遠海展示です。
コーラルライフでは、ヤシやアダンなどの植栽や擬岩を配して、サンゴ環礁の自然を再現します。カラフルな熱帯魚類も紹介します。
コーラルライフには、メインとなる「沖合水槽」を設けます。水量は700トンです。近年の水族館は1,000トン以上の大水槽を備えることが多く、大阪・海遊館の大水槽は5,400トンもありますので、それに比べると小ぶりです。
メイン水槽の周囲にはスロープを螺旋状に配し、砂浜から水中、海底へと下る水中散歩をするような演出です。散歩をしながら、「コーラルライフ」は1階に続きます。
1階平面図
イベントコーナーでの企画展示では、実験コーナーや、タッチングプールを設置。タッチングプールでは、エイやサメなどに触れたり、給餌ができます。
アザラシ、アシカ、ウミガメ
1階からエスカレーターで再び3階にのぼると、海獣コーナーに出ます。
アザラシ、アシカ、ウミガメの水槽が並びます。
3階平面図
さらに、最上階の4階に上がると、それぞれの陸場も見られます。
4階平面図
ペンギンは、マゼランペンギンを展示。草原の丘の地中に巣穴を設け、ペンギンが本来暮らす環境を再現します。広い水槽を備えるほか、ペンギンの住処に足を踏み入れて間近で観察できるコーナーも設けます。
「タートルビーチ」では、岩山をのぼるスロープに沿ってウミガメのプールを設けます。
9割を継続展示
全体として、須磨海浜水族園での展示生物682種18,599点のうち、522種、17,000点を神戸須磨シーパラダイスで継続展示します。種の継続割合は77%、点の継続割合は91%です。
継続展示指定生物のなかで、オーストラリアハイギョ、パイユー、ロングノーズガー、ピラルク、チョウザメなどは、水族館の1階外向きに設ける「須磨コレクション」にて無料展示します。
ホテルも設置
水族館の東側には「神戸須磨シーワールドホテル」を配置します。神戸須磨シーワールドのオフィシャルホテルという位置づけです。
客室総数は80室。客室はスタンダードとプレミアムに大別され、計9タイプです。
最高級のプレミアムルーム「シーワールドアクア」は水槽付き、66平米の広さです。1室2名で利用する場合、1名料金66,500円からです。
イルカとふれ合えるプール「ドルフィンラグーン」をホテルに常設します。間近でイルカを観察し、イルカの生態を学ぶことができる体験コンテンツを用意しています。
宿泊者限定サービスとして、ナイトアクアリウムのイベント体験なども予定しています。
また、宿泊者は「神戸須磨シーワールド」が入館無料となります。専用の入館チケットで、チェックイン日からチェックアウト日まで、「神戸須磨シーワールド」に何度でも入館できます。
ビュッフェレストランなど、宿泊者以外も利用できる施設も設けます。運営は鴨川シーワールドホテルと同じグランビスタホテル&リゾートです。
ホテルの予約開始は、3月13日11時00分です。
松の杜ヴィレッジ
水族館西側には「松の杜ヴィレッジ」というにぎわい施設が、2023年9月にオープンしています。
にぎわい施設のA棟には、ムラサキスポーツ、スターバックス、BREAD FLAVOR(カフェレストラン)が入っています。
にぎわい施設のB棟とC棟は海沿いにあり、B棟にはレッドロブスター、C棟にはバーベキューカフェレストランYURT CAFE&BBQ PARKが入っています。
入館料
神戸須磨シーワールドの入館料は、日によって異なる変動制です。通常期は大人(高校生以上)3,100円、幼児・小中学生1,800円、シニア2,500円です。
大人は閑散期2,900円、ピーク時3,700円と変動幅が大きいですが、幼児・小中学生は閑散期1,700円、それ以外(ピーク時含む)1,800円と、変動幅は小さくなっています。
なお、神戸市内の小中学生は年1回500円、幼児は年1回無料で入場できます。
年間パスポートは大人11,000円、小中学生6,500円、シニア9,000円です。
旧須磨海浜水族園の料金が大人1,300円、小中学生800円、幼児500円でしたので、それに比べると大幅な値上げとなります。
シャチを展示している鴨川シーワールド(大人3,300円)と同水準で、海遊館(大人2,700円)に比べてもやや高額です。ただ、近年のインフレで類似施設の値上げも相次いでいることから、そこまでの高値感はないかもしれません。
シャチ、イルカと二つのパフォーマンスを擁するうえに、魚類や海獣展示も充実させるとなると、この程度の入館料になるのでしょう。(鎌倉淳)