「スカイレール」2023年末に廃止。世界唯一の交通システムが姿を消す

システムが広がらず

広島市の新交通システム「スカイレール」が、2023年末を以て廃止されることが正式発表されました。

【6/15追記】廃止は2024年4月末に延期されました。
「スカイレール」廃止は2024年4月末に。実際に乗ってみたら…

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瀬野駅で山陽線と接続

スカイレールは山陽本線瀬野駅に隣接するみどり口からみどり中央までの1.3kmを結ぶ新交通システムです。山上に開発された住宅地と、山麓に位置する鉄道駅を結ぶ路線で、1998年に開業しました。

現在は日中15分間隔、ラッシュ時7~8分間隔で、1日あたり平均約90便、土休日は約70便を運行しています。

運行するのはスカイレールサービスという積水ハウス系列の会社です。同社は、スカイレールを、2023年12月末を以て廃止する方針を発表しました。

廃止後は、代替交通として電気自動車を使った路線バスを、2023年11月より運行します。

スカイレール

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ロープ駆動式懸垂型交通システム

スカイレールは、「ロープ駆動式懸垂型交通システム」という、世界唯一の方式で運行されている路線です。

日本交通計画協会を中心とした官民共同研究をベースに、神戸製鋼所と三菱重工業が共同開発した新交通システムです。

懸垂式モノレールとロープウェイを組み合わせたような仕組みが特徴で、鋼桁のレールにぶら下がったゴンドラ車両を、駅間ではワイヤロープで引っ張り、駅構内ではリニアモーターで駆動して運転します。

スカイレール
画像:ロープ駆動式懸垂型交通システム
“スカイレール”の開発(三菱重工捜報 Vol.34 No.6より

いわゆる新交通システム(AGT)に比べると、建設費が3分の1と低価格。輸送力は毎時2200人で、これもAGTの3分の1程度です。つまり、AGTほどの輸送力を必要としないエリアに向いているシステムです。

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急勾配に強く

このシステムは、省スペースで建設でき、低騒音で住宅地にも導入しやすいというメリットがあります。半径30mの急カーブにも対応可能で、270パーミルの急勾配を登り切れる登坂性能も売り物でした。

こうした特性から、導入空間が限られた都市内での輸送手段や、高低差のある場所間の移動手段に適しているとされ、最初に導入されたのが、広島のスカイレールです。同線では、最大223パーミルという急勾配に索道が引かれています。

スカイレール
画像:ロープ駆動式懸垂型交通システム
“スカイレール”の開発(三菱重工捜報 Vol.34 No.6より

しかし、その後、スカイレール以外に導入されることなく、システムとして普及することはありませんでした。結果として、スカイレールは「世界唯一の交通システム」として希少価値があったものの、設備更新や部品調達にコストがかかる状況に陥りました。

同社では、今後、設備を更新して路線を維持するには大幅な運賃値上げをする必要があるとして、それを避けるために廃止を決めたそうです。

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年間1億円近い赤字

2019年度の鉄道統計年報によりますと、スカイレールサービスの平均通過数量(輸送密度)は1,456人キロです。数字としては「ローカル線」レベルですが、各地のケーブルカー、ロープウェイと比較すればそれほど低い数字ではありません。ニュータウン交通という点で似た形態の山万の1,092を上回っています。

しかし、年間の軌道旅客収入は5,800万円程度で、9,900万円の営業赤字を計上しています。この旅客収入で設備更新費用をまかなうのは困難でしょう。

輸送量や距離からすれば、バス代替が容易です。運賃を値上げしてスカイレールを維持するよりは、バス転換のほうが住民の利益になるという判断に至ったのでしょう。

代替バスでは、住宅団地内に16カ所の停留所を設けるとのことで、住民の利便性が向上する側面もありそうです。

世界唯一の交通システムが姿を消すまであと1年。体験されたい方はお早めに。(鎌倉淳)

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