スカイマークが事実上の「羽田LCC」に。新ダイヤ・新価格で主要4路線に経営資源を集中へ。

スカイマークが2014年の冬季ダイヤと運賃価格を発表しました。ダイヤに関しては、不採算路線の大幅縮小と、主要4路線への集中がポイントです。運賃はバーゲン型を廃止し、LCCと同様の空席連動型を主力に据えました。

路線については、成田空港からの3路線を廃止し、成田空港から全面撤退します。スカイマークの成田路線は、格安航空会社(LCC)対策と、国際線進出への発着枠確保が目的で維持されてきました。しかし、A380問題で国際線進出を当面断念したため、同空港の拠点化の必要がなくなりました。

広告

米子路線も減便

昨年から拠点化を行っていた米子に関しては、羽田線と札幌線の2路線を、直行便から神戸経由便に再編します。直行便として残るのは神戸線と那覇線のみで、スカイマークの米子発着便は1日8往復16便から同3往復6便に激減します。

米子発着便は、全体に羽田路線以外は搭乗率が30~40%台で伸び悩んでいましたので、経営危機がなくても再編は免れなかったでしょう。羽田~米子便の搭乗率は60%~70%でまずまずでしたが、より利益の見込める路線に転用する目的での廃止のようです。今後は神戸乗り継ぎで羽田へのアクセスが維持されます。

そのほか、茨城~中部線も廃止になりますが、これは送り込みの意味合いの強い路線でしたので、廃止自体にはあまりインパクトはありません。

スカイマーク

地方路線を縮小し、幹線に集中へ

羽田~米子線運休により浮いた2つの発着枠は、羽田~福岡線と神戸線に1往復ずつ転用します。福岡線は1日11往復、神戸線は1日7往復に増便となります。福岡線は、1往復を除いてA330-300型機となり、ほとんどの便が「グリーンシート」になります。

ダイヤを見る限り、地方路線を縮小し、羽田発着の主要4路線(札幌、神戸、福岡、沖縄)に集中投資をする方向性が見て取れます。これはスカイマークが好業績を上げていた2011年頃のスタイルです。スカイマークは好業績を背景に2011年以降、地方路線に積極展開し、LCCとの競合もあって全体の搭乗率を落としてきました。そこで、今回のダイヤでは、いわば原点回帰に大きく舵を切ったと言えるでしょう。

地方路線を縮小すると、次回の羽田発着枠配分に影響が出るとみられます。ただ、当面はそれどころではなく、全体の搭乗率を上げるのが先決、ということかもしれません。

スカイマークは羽田に36の発着枠を持っています。ここだけに経営資源を集中すれば、少なくとも年間500億円規模の売り上げと約50億円の営業利益を容易に確保できるといわれています。そのため、地方路線の戦線を縮小していけば、スカイマークの業績改善そのものは難しくないとみられます。成田の赤字は年間50億円規模に達するようですので、撤退は経営改善に大きく貢献するでしょう。

次の焦点は、主要4路線以外で残る唯一の羽田路線である鹿児島線です。羽田~鹿児島線は60%台の搭乗率ですが、この4往復を維持するかどうか、という点になるとみられます。主要4路線の搭乗率が好調なら、鹿児島を撤退して枠を振り向けるという選択肢は十分ありうるでしょう。

空席連動型運賃に全面移行

一方、価格では普通運賃を値上げして、割引運賃を空席連動型中心に全面移行しました。いわゆるLCCスタイルに移行したわけで、スカイマークは事実上の「羽田LCC」になったともいえます。ただし、手数料を支払えばキャンセルは可能で、従来のLCCのような「キャンセル不能運賃」はありません。また、変更が可能な「フリーフレックス」も設定しています。一方、バーゲン型運賃は廃止しました。若者向け運賃の「スカイメイト」と、シニア向け運賃の「シニアメイト」は維持します。

従来のカウントダウン型運賃に比べれば、空席連動型運賃のほうが、より効率的に販売できると判断したのかもしれません。価格水準はたとえば羽田~札幌の最低運賃が8,500円で、現在のスカイバーゲンと大きな差はありません。

ただ、実勢価格がどうなるかは、運用をみてみないとわかりません。全体的には、A380問題にくわえ、近年の燃油費の高騰がありますので、値下げになることはないでしょう。またA330型機路線については、座席単価を高くしなければ採算がとりにくいのはいうまでもありません。

成田・関空LCCの運賃にも影響か

かつてのスカイマークは「普通運賃で大手航空会社より4割安い」を標榜していましたが、新しい普通運賃では、「3割5分くらい安い」になっています。沖縄路線に関しては「2割5分くらい安い」にまで価格差が縮小しています。長距離路線ほど運航経費に占める燃油費の割合が高いためとみられます。変更自由な普通運賃が安いのがスカイマークの魅力の一つですから、その魅力が薄れるのは残念です。

また、「高くなるならLCCに乗るよ」という声も聞こえてきそうですが、スカイマークの成田撤退と、羽田便、神戸便の値上げは、当然LCCの価格にも影響を及ぼします。成田・関空のLCC国内路線も、現在の価格で採算が取れているわけではありません。したがって、スカイマークが値上げすれば、当然成田・関空発着のLCC価格も値上がり傾向になるでしょう。

 「格安航空会社」の企業経営テクニック

広告