通勤・通学でいつも混雑している首都圏では、1日どれくらいの人が鉄道を利用しているのでしょうか。JR東日本が公表している路線別・区間別の平均通過人員(輸送密度)から見てみましょう。
JR東日本・2015年度区間別輸送密度ランキング
輸送密度は1日1kmあたりの旅客数を示し、鉄道利用者数の目安として用いられています。国鉄時代には輸送密度が4,000を下回ると、「特定地方交通線」として廃止対象になりました。
以下は、JR東日本の資料を基にした、首都圏エリアの2015年度区間別輸送密度ランキングをご紹介します。単位は1日1kmあたり利用者数(人)です。まずは、1位から10位まで。
1~10位
1位 山手線 品川~田端 1,097,093
2位 埼京線 池袋~赤羽 732,145
3位 中央本線 神田~高尾 675,734
4位 東海道本線 東京~大船、品川~鶴見など 647,306
5位 東北本線 東京~大宮(王子経由、尾久経由)、赤羽~大宮(武蔵浦和経由) 609,361
6位 総武本線 東京~千葉、錦糸町~御茶ノ水 423,522
7位 常磐線 日暮里~取手 358,122
8位 横浜線 東神奈川~八王子 229,481
9位 南武線 川崎~立川 202,040
10位 東海道本線 大船~小田原 199,513
上位を占めたのは、山手線のほか、埼京線、中央線、東海道線など、都心から放射状に延びる路線です。
埼京線が2位となりましたが、抽出区間が池袋~赤羽間と短いことが影響しているとみられます。大宮までの区間で計ればもう少し低い数字になるとみられますが、赤羽~大宮間は東北本線でカウントされています。
放射路線5方面の輸送密度は、中央、東海道、東北がほぼ互角、やや減って総武、常磐が続く、という印象でしょうか。
放射路線に続いて、横浜線、南武線といった、郊外の外郭路線が9位、10位に入りました。
ちなみに、JR西日本の在来線区間別輸送密度は、大阪~神戸の385,499(2014年度)です。関西エリアの最混雑区間は、総武・常磐線と同水準といえます。
11~20位
11位 高崎線 大宮~熊谷 199,142
12位 根岸線 横浜~大船 177,117
13位 京葉線 東京~蘇我、市川塩浜~南船橋(西船橋経由) 172,076
14位 横須賀線 大船~逗子 130,078
15位 青梅線 立川~青梅 124,595
16位 武蔵野線 鶴見~西船橋 111,401
17位 総武本線 千葉~佐倉 103,387
18位 東北本線 大宮~宇都宮 94,762
19位 川越線 大宮~川越 88,083
20位 外房線 千葉~茂原 87,006
10位台では、東海道線の大船以遠や東北・高崎線など、放射路線の中距離区間が登場します。高崎線大宮~熊谷が19万台に対し、東北線の大宮~宇都宮間は9万台と少ないですが、これは区間の区切り方の問題でしょう。東北線を大宮~小山で区切ったら、高崎線大宮~熊谷に匹敵する数字になったとみられます。
やや意外なのが、京葉線。東京からの放射路線で混雑するイメージがありますが、輸送密度では根岸線レベルです。
21~30位
21位 常磐線 取手~勝田 61,306
22位 内房線 蘇我~君津 57,222
23位 高崎線 熊谷~高崎 46,555
24位 東海道本線 小田原~熱海 41,692
25位 成田線 佐倉~成田 41,552
26位 上越線 高崎~新前橋 38,749
27位 中央本線 高尾~甲府 37,385
28位 相模線 茅ヶ崎~橋本 28,176
29位 横須賀線 逗子~久里浜 26,911
30位 五日市線 拝島~武蔵五日市 26,115
20位台は、東京の通勤圏の最遠部が多く、急激に輸送密度が低くなります。とはいえ、相模線や横須賀線逗子以南、五日市線でも2万台の輸送密度があり、首都圏の需要の強さが垣間見えます。
参考までに、JR北海道でもっとも輸送密度が高い区間は、白石~苫小牧で45,345です。高崎線の熊谷~高崎程度となります。JR四国でもっとも輸送密度が高い区間は、高松~多度津で、23,923。五日市線を下回ります。
31~40位
31位 成田線 成田~成田空港 22,522
32位 八高線 八王子~高麗川 20,555
33位 川越線 川越~高麗川 19,371
34位 成田線 成田~我孫子 18,216
35位 伊東線 熱海~伊東 16,903
36位 東北本線 宇都宮~黒磯 15,413
37位 両毛線 桐生~新前橋 15,130
38位 上越線 新前橋~渋川 14,326
39位 鶴見線 鶴見~扇町、浅野~海芝浦、武蔵白石~大川 14,194
40位 総武本線 佐倉~銚子 11,574
30位台は、千葉、茨城、栃木、群馬エリアの郊外路線が増えていきます。「都会のローカル線」とも呼ばれる鶴見線は14,000台。多いか少ないかは見方が分かれそうです。
41~50位
41位 両毛線 小山~桐生 8,921
42位 東金線 大網~成東 8,628
43位 成田線 成田~佐原 8,521
44位 日光線 宇都宮~鹿沼 8,231
45位 水戸線 小山~友部 7,088
46位 南武線 尻手~浜川崎 6,638
47位 水郡線 水戸~常陸大宮 5,621
48位 外房線 茂原~安房鴨川 5,494
49位 信越本線 高崎~横川 4,545
50位 青梅線 青梅~奥多摩 4,188
40位台になると、輸送密度が1万人を割り込み、地方路線の雰囲気が漂います。南武線の尻手~浜川崎間の6,638が異彩を放っています。
最近、減便された青梅線の青梅~奥多摩間は4,000台と、特定地方交通線寸前の数字です。
51位~
51位 日光線 鹿沼~日光 4,131
52位 上越線 渋川~水上 3,850
53位 内房線 君津~安房鴨川 3,254
54位 成田線 佐原~松岸 3,187
55位 吾妻線 渋川~長野原草津口 3,043
56位 八高線 高麗川~倉賀野 3,010
57位 水郡線 上菅谷~常陸太田 2,688
58位 久留里線 木更津~久留里 1,694
59位 烏山線 宝積寺~烏山 1,462
60位 鹿島線 香取~鹿島サッカースタジアム 1,228
61位 水郡線 常陸大宮~常陸大子 1,021
62位 吾妻線 長野原草津口~大前 436
63位 久留里線 久留里~上総亀山 145
52位以下が輸送密度4,000を割り込んでおり、いわゆる「特定地方交通線」レベルの輸送量です。
気になるのは、内房線君津~安房鴨川や鹿島線です。沿線人口からすればもっと乗ってもいい区間でしょうが、高速バスに客を奪われているのでしょう。かつて運行されていた特急も廃止されています。
首都圏エリア最下位は、久留里線久留里~上総亀山間の145。北海道の過疎路線に匹敵する輸送量の低さでした。(鎌倉淳)