「四季島」運行ルートは魅力的か。3泊4日で日光、函館、青森、燕など観光。ローカル線には乗り入れず

JR東日本は、新型豪華寝台列車「トランスイート四季島」について、運行ルートや料金体系などの詳細を発表しました。3泊4日と1泊2日の2コースがあり、3泊コースは東日本を一周して北海道にも上陸。1泊コースは長野から福島をまわります。

料金は最高で95万円に設定されたこのツアー。コース内容を検討してみましょう。

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10両編成の豪華リゾート列車

「四季島」はJR東日本が新造する10両編成のクルーズトレインです。6両の客室に17室を備え、定員はわずか34人。残る4両分はラウンジ、ダイニング、展望エリアになっています。

JR東日本の発表では、3泊4日コースの価格は、最も安いスイートで1人75万~77万円、デラックススイートが90万円、最高級の四季島スイートが95万円です。JR九州の「ななつ星in九州」の3 泊4日の最高額(85万円)を越え、日本最高額の鉄道列車となりました。

では、JR東日本が発表したルートを見てみましょう。発着はすべて上野駅です。

四季島

3泊4日コースは東日本1周

3泊4日コースは、上野→日光→(泊)→函館→伊達紋別/登別(泊)、東室蘭/洞爺→青森/リゾートしらかみ→弘前→(泊)→鶴岡→あつみ温泉→燕→上野とまわります。東日本を一周して、北海道にも足を伸ばすルートです。

1泊目と3泊目が車中泊、2泊目が旅館です。旅館はニセコと登別の選択で、ニセコが「ニセコ花園温泉 坐忘林」「ニセコ昆布温泉 鶴雅別荘 杢の抄」、登別が「滝乃家」です。いずれも憧れの宿として知られた存在で、タイプの異なる高級旅館を3つ用意した、という印象でしょうか。ニセコ泊が伊達紋別駅、洞爺駅利用、登別泊が登別駅、東室蘭駅利用です。

四季島3泊

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「リゾートしらかみ」は深浦往復?

3日目は青森観光の縄文コースと「リゾートしらかみ」に乗る五能線コースを選択します。縄文コースの場合は青森駅で下車して三内丸山遺跡を見学します。五能線コースの場合は、新函館北斗から新幹線で新青森にスキップし、五所川原~弘前間で「リゾートしらかみ」に乗車します。

この「リゾートしらかみ」の走行区間は明らかにされていませんが、五所川原を16時50分頃出て、弘前に21時30分頃戻るとしています。おそらくは「6号」のスジで深浦あたりまで行き、折り返し弘前に至る設定と推測します。車内で食事も供されるため、貸切で運行されるのでしょう。

朝5時すぎに水族館見学

4日目は鶴岡市の加茂水族館に寄ります。なんと早朝5時20分頃鶴岡駅に到着し、加茂水族館を見るという設定です。早朝に水族館を特別に開けてもらうのでしょうか。加茂水族館は、最近人気がでて非常に混雑しており、営業時間前に貸切で見られるのならば、豪華ツアーならではの特典といえそうです。

その後、6時頃にあつみ温泉駅に戻り、さらに、あつみ温泉に至り朝風呂を浴び、7時30分にあつみ温泉発。車内で朝食というコースです。この日は早朝から忙しいですね(すべて、車内滞在で過ごすことも可能)。

午前中に燕を観光して、夕方上野に帰着します。食事は合計車内6回、車外4回(リゾートしらかみ含む)です。

3日目はなぜ選択制か?

全体的に見て、3泊4日コースは定番観光地を押さえた王道ルートにみえます。日光や函館は旅行好きなら行ったことがある方が多いでしょうし、ニセコや登別の旅館も「一度は泊まりたい」として名があがる宿です。

3日目、縄文コースと五能線コースを選択制にした理由はわかりませんが、縄文コースでは3日目がやや単調な1日になってしまうため、新幹線と「リゾートしらかみ」を組み込んでメリハリを付ける形を選択肢に入れたのではないか、と推測します。

しかし、せっかくの青函トンネルを新幹線で通過するのももったいない話。そのため、「四季島」で青函トンネルを抜け青森を観光する選択肢も残したのではないでしょうか。

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1泊2日コースは3点豪華主義

1泊2日コースは上野を出て、中央線の塩山に至ります。常磐線、武蔵野線を経由するとみられます。塩山で山梨ワインと昼食を楽しんで、夕方まで滞在。車内で夕食を摂ったあと、姨捨駅に寄り夜景見学。ここには「夜景バー」が設置され、50分ほど滞在します。

姥捨駅から車中泊で、いきなり会津若松に至ります。しなの鉄道、えちごトキめき鉄道、信越線、磐越西線を経由するとみられます。会津若松で朝食、観光の後、車内で食事を取りつつ上野に戻ります。

1泊2日コースでは、塩山と会津若松に比較的長時間滞在し、途中の姥捨で休憩するという設定です。下車観光はこの3カ所のみで、「3点豪華主義」という印象です。食事は車内と車外が2回ずつです。

四季島1泊

関東甲信越、南東北をぐるりと回るルート

1泊2日コースの場合は、関東甲信越と南東北をぐるりと周遊するルートを検討した結果、中央線~磐越西線というコースになったのだと推測します。

観光ポイントとして塩山と会津若松の2カ所が選ばれた理由はよくわかりませんが、食事時間や施設との兼ね合いかも知れません。中央線を通るなら上諏訪温泉や松本城を入れてもいいのでは、という気もしますが、そんなこと言い出したら、候補なんていっぱいありますね。

四季島が走るのは幹線区間のみ

今回発表されたのは、この2コースのみ。2泊3日で鳴子温泉などをまわるコースの詳細は発表されませんでした。こちらは冬に設定されるコースなので、持ち越したのでしょう。

2コースのうち、3泊4日コースは、王道観光地と注目エリアを組み合わせたルートに見えます。安定感と最近の人気スポットのバランスを取り、鉄道旅行としてなかなか魅力的に仕上がっていると思います。今後、利用者の反応を見ながらさらに磨きをかけていくでしょう。

1泊2日コースは、時間が短いのでなんともいえません。中央線から磐越西線への夜行列車はおもしろそうですが、全体として鉄道旅行の魅力が盛り込まれているかというと、少し微妙な印象です。

いずれのコースでもやや残念なのは、今回のルートで四季島が走るのは幹線区間のみで、ローカル線には足を踏み入れないことです。10連が入れる区間となると限られるのでしょうが、東北のローカル線を走ったりするとさらに魅力が増えそうです。

札幌乗り入れも期待したいですが、今回のルート設定を見ると、北海道からの復路のバリエーションに苦慮した跡がうかがえます。函館~札幌を一つの旅行で在来線で往復すると、どうしても復路が単調になってしまいますから、難しいのかもしれません。(鎌倉淳)

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