JR北海道の釧網本線を世界遺産に登録しようという運動が動き出しました。同線は風光明媚な景勝路線として知られますが、輸送量は少なく将来の存続は不透明です。世界遺産登録が実現すれば、その価値は上がりそうですが、実現可能なのでしょうか。
民間有志が運動開始
日本経済新聞2016年2月19日付北海道版によりますと、釧網本線を世界遺産に登録しようという運動を開始したのは、「釧網本線世界遺産登録推進会議」。北海道鉄道観光資源研究会、MOTレール倶楽部、釧路臨港鉄道の会といった鉄道愛好家らで作る団体など民間有志約160人により、2016年2月18日に発足しました。9月をメドにNPO法人に移行する予定だそうです。
釧網本線は、北海道の東釧路~網走間166.2kmを結ぶ路線です。沿線に複数の国立公園や世界自然遺産があり、ジオ(地球科学)を学ぶことができるとともに、鉱山開発など近代化の歴史にも触れられます。そこで、文化と自然の複合資産として登録を目指すそうです。
「世界遺産鉄道」は世界に7つ
日本では、これまで世界遺産に登録された鉄道はありませんので、釧網本線が登録されれば、日本では初めてとなります。一方、鉄道が世界遺産に登録された例は、これまで世界で7つあります。インドのダージリンヒマラヤ鉄道とニルギリ山岳鉄道、カールカー=シムラー鉄道、オーストリアのゼメリング鉄道、スイスのレーティッシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線などです。
世界遺産に登録されるには、「顕著な普遍的価値」が求められます。これらの鉄道路線と比べて、釧網本線の持つ「普遍的価値」がどの程度なのかは、何ともいえません。ただ、これまでの世界遺産鉄道が山岳鉄道主体だったのに対し、釧網本線は海岸沿いや湿地エリアを走るので、そうした意味で新しさはありそうです。
釧網本線の2014年の輸送密度は1日1kmあたり466人。年間で16億円の赤字を出し、営業係数は594円です。現時点で廃線の動きはありませんが、このままの輸送量が続けば将来の存続は不透明と言わざるをえません。
しかし、世界遺産登録となれば、風向きも変わるでしょう。実現へ向けて、応援したいところです。(鎌倉淳)