私鉄各社が小児運賃の実質値下げを競っています。西武鉄道は、小児運賃を50円均一にすると発表しました。小児通学定期券も1ヶ月500円です。
通学定期券は500円均一
西武鉄道は、2026年3月の運賃改定にあわせて、小児IC運賃を50円均一にすると発表しました。小児通学定期運賃は1か月500円、小児通勤定期運賃は1か月1,000円です。さらに、西武全線が1か月乗り放題となる「小児全線フリー定期券」も1か月1,000円で発売します。
紙のきっぷ(磁気券)の場合、小児運賃は大人運賃の半額で、均一化の対象外です。一方、通学・通勤定期券の均一運賃は磁気券にも適用され、他社線連絡も可能です。
小児全線フリー定期券は小児用PASMO限定発売で、他社線連絡定期券にできません。
「習い事定期」は1,000円に
西武鉄道の現行の小児初乗り運賃は80円です。また、通学定期の初乗りは1,330円です。そのため新制度では、IC乗車の場合、区間にかかわらず、小児は値下げとなります。
なお、小児通勤定期券とは、通学証明書の不要な、任意の区間で設定できる小児用定期券を指しており、習い事などにも利用できます。
小田急が先鞭
小児運賃のIC均一化は、小田急電鉄が2022年に50円均一を打ち出して先鞭を付けました。京浜急行電鉄も75円均一で導入済みです。
東急も、土休日に小児100円で乗り放題になるきっぷを発売しているほか、2025年3月から、通学定期運賃を約30%値下げしました。東武では、東武カードで小児通学定期券を購入すると運賃全額相当分をポイント還元される「実質無料化」を実施しています。
京王は2025年の夏休みに、「京王トレインポイント」小児会員のポイント付与率を100%とし、小児運賃が実質無料となるキャンペーンを実施しています。このキャンペーンは期間限定ですが、将来的なサービス展開を見据えての実験的な施策に見受けられます。
人口減少を見据え
私鉄各社が小児運賃の実質値下げを進めるのは、少子化による将来の沿線人口減に備えたものです。子育て世代が暮らしやすいことをアピールして、沿線人口の減少を食い止めようというアイデアです。
小田急の場合、小児運賃が運輸収入に占める割合は、全体の1%以下にとどまるそうです。したがって、経営に与える影響は大きくありません。
いっぽうで、ファミリー層は、鉄道以外の消費額も大きいので、沿線住民が増えれば関連事業の増収につながります。私鉄の場合、とくに沿線で関連事業を広く展開しているので、トータルで見れば割にあう話なのでしょう。
もちろん、現役世代の負担を軽減するという大義名分もあります。そのため、小児運賃を定額に設定する動きは、私鉄各社で定着していきそうです。(鎌倉淳)