浦和レッズが埼玉高速鉄道延伸めざしキックオフ。「埼玉スタジアム駅設置を!」

採算性に課題はあるけれど

埼玉高速鉄道の延伸について、浦和レッズが請願署名活動を開始しました。埼玉スタジアム駅の設置も目指しています。

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スタジアムで署名運動

浦和レッズは、公式ホームページで、2019年5月16日に「『地下鉄7号線(埼玉高速鉄道)延伸』及び『埼玉スタジアム駅等の設置』を要望する請願署名活動のお知らせ」と題する投稿を掲載しました。

埼玉スタジアムへのアクセス改善、近隣交通渋滞解消、利便性向上のために、「埼玉高速鉄道の延伸」と「埼玉スタジアム駅などの設置」を求める運動を開始したのです。

2019年5月17日(金)の湘南ベルマーレ戦から、2019年のシーズン全ホームゲームにおいて、スタジアムに署名ブースを設置。ファン・サポーターの協力を求めました。

埼玉高速鉄道延伸請願
画像:浦和レッズホームページより

国の基準を上回る

埼玉高速鉄道は、赤羽岩淵~浦和美園間を運行する第三セクター鉄道です。岩槻を経て蓮田までの延伸計画があり、2016年の交通審議会答申では「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」とされました。

2017年度には、さいたま市が「地下鉄7号線(埼玉高速鉄道)延伸協議会」を設置し、岩槻までの7.2kmの延伸について「先行整備区間」と位置づけ調査しました。途中に埼玉スタジアム駅(臨時)、中間駅の2駅を設ける計画です。

埼玉高速鉄道延伸計画
画像:さいたま市

埼玉高速鉄道延伸計画
画像:さいたま市

この調査の報告書では、浦和美園~岩槻間の建設費を860億円と見積もりました。採算性については、黒字化まで最短で18年、開業30年後の費用便益比は最高で1.1との結果が出ました。国が新線建設を補助する場合の目安である、「30年で黒字化、費用便益比1以上」という基準をクリアしています。

浦和レッズでは、この結果を踏まえ、埼玉県やさいたま市に、埼玉高速鉄道の延伸と、埼玉スタジアム駅の建設請願運動を開始したわけです。

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楽観的な前提

ただ、この試算は、沿線開発による人口増を前提としています。つまり、沿線開発をおこない人口が順調に増えた場合という、楽観的な前提に限って「黒字」と弾いているわけです。

報告書では、沿線開発による人口増を手堅く見積もった試算結果(すう勢ケース)も公表しており、黒字転換まで46年、30年間の費用便益比は0.8となっています。こちらは、国交省の補助基準を満たしません。

要するに、現段階で手堅く見積もったら、埼玉高速鉄道の岩槻延伸は「事業性なし」という判断になっているわけです。

直ちに事業化できない

実際、調査報告書でも「今回の試算結果で直ちに事業化できるものではない」と明記されています。

そのうえで、「延伸事業の課題も明確になり、今後深度化を行う上で関係者が同じ方向を目指して進んでいくことが肝要」というわかりにくい表現で、事業化への余地を残した書き方になっています。

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私的整理から5年

埼玉高速鉄道は、既存区間についても、輸送人員が想定を下回り、経営が行き詰まったという過去があります。2014年度に私的整理手法の一つである事業再生ADRの手続きを実施し、債務を圧縮したことで、ようやく経営を安定させました。ADRでは、埼玉高速鉄道の債務を自治体が肩代わりしています。

私的整理からまだ5年しか経っていない段階で、「多めに見積もった需要予測」を前提に延伸事業に踏み切れるのか。常識的に考えれば難しいといわざるを得ません。

状況を変えられるか

ただ、埼玉スタジアムの観客輸送に課題があり、鉄道延伸と埼玉スタジアム駅設置が特効薬であることも事実でしょう。

とくに、大宮~岩槻~埼玉スタジアムという鉄道動線ができれば、スタジアムの利便性は大きく高まります。

その点で浦和レッズは鉄道延伸の受益者と見込まれますし、当事者が請願運動を開始すれば大きな推進力となります。この動きが、状況を変えるきっかけになるのでしょうか。

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