JR西日本が、「サイコロきっぷ」を発売します。旅の行き先がサイコロの出目で決まるという企画です。使いこなし方を研究してみましょう。
5,000円で博多往復も
「サイコロきっぷ」は、JR西日本のアプリ上でサイコロを振って、出た目によって行き先が決まるというきっぷ。発地は大阪市内で、着地(行き先)は白浜、餘部、東舞鶴、倉敷、芦原温泉、尾道、博多の7箇所です。出現確率は尾道が5/36、博多が1/36で、それ以外は1/6です。
価格はエントリー料が4,500円、きっぷが500円の計5,000円。専用サイトでエントリーをすると、メールアドレスにURLが届きます。それをクリックし、アプリでサイコロを振ると、行き先が決定します。
エントリー料の払い戻しはできませんので、「サイコロの振り直し」はできず、自分の好まぬ行き先だったとしても受け入れるほかありません。
有効期間3日間
エントリー完了からきっぷ購入まで、最大10日間かかります。大阪市内から目的地への往復には新幹線・特急の指定席が利用できます。
利用期間は7/29~10/31の連続する3日間。夏休みから秋にかけて発売されますので、青春18きっぷや秋の乗り放題パスと組み合わせて利用することも可能です。
「サイコロきっぷ」はe5489でのみ購入可能で、購入時に列車の予約も済ませます。きっぷの受け取り前なら列車の変更は28回まで可能です。ただし、乗り遅れた場合に後続列車の自由席に乗ったりすることはできません(運賃のみ有効)。
有効期間は3日間です。3日間のうちに、大阪から上記の各駅まで往復しなければなりません。
「サイコロきっぷ」概要
サイコロきっぷの概要は以下の通りです。
■「サイコロきっぷ」概要
○エントリー期間
7/19(火)〜9/30(金)
※1人2回までエントリー可能。
※2回目のエントリーは1回目のサイコロきっぷ購入後に可能。
○発売期間
7/29(金)~10/29(土)
※利用開始日の1ヶ月前から当日まで発売
○利用期間
7/29(金)~10/31(月)の連続する3日間
※10月29日利用開始分まで発売
○価格
エントリー料 4,500円、きっぷ500円
「行き先不明のガチャきっぷ」
以上が、サイコロきっぷの概要です。「サイコロ」というネーミングが楽しさを演出しますが、要は7つの候補地が示されている「行き先不明のガチャ」きっぷです。LCCピーチが販売して好評を博した「旅くじ」にも似ています。
利用期間が長めに設定されていて、予約変更も実質自由など、行き先以外の制約は厳しくありません。それでいて割引率は高いという、お得なきっぷです。
各方面の割引率は以下の通りです。
おおむね50~60%割引です。博多だけが82%割引と破格ですが、前出のように出現確率が1/36、すなわち2.7%にとどまりますので、例外的な「当たり」という位置づけになっています。2回エントリーして、2回とも同着地だった場合は、2回目の行き先を博多に変更することができます。
ということで、当記事では、鉄道やバスを乗り歩きながら観光もする旅行者に向けて、「サイコロきっぷ」を行き先別に活用する方法を研究してみます。設定された目的地に滞在するだけでも十分楽しめますが、そこから別のフリーきっぷを組み合わせて乗り歩けないか、という話です。
芦原温泉
芦原温泉へは、特急「サンダーバード」が利用できます。途中、福井駅で途中下車も可能です。特急利用は片道1区間だけなので、福井駅で途中下車した場合、福井~芦原温泉間は普通列車を利用します。
組み合わせたいきっぷの第一候補は、北陸おでかけパス(1日2,580円)でしょうか。大阪~芦原温泉間を特急で一気に移動して、北陸エリアを乗り放題できます。
北陸お出かけパスのフリーエリアは以下の通りです。遠く直江津まで行くことができます。土休日のみ有効、3日前まで発売(ネット購入可)なので、その点ご注意ください。
他にも、福井鉄道・えちぜん鉄道共通1日フリーきっぷ(1日1,400円)、芦原温泉宿泊フリーきっぷ(2日2,000円)などと組み合わせるのもいいでしょう。
餘部
餘部へは、福知山線特急「こうのとり」か、播但線特急「はまかぜ」が利用できます。餘部には特急が停まらないので、城崎温泉または香住から餘部までは普通列車の利用になります。
途中、城崎温泉で途中下車も可能です。というか、餘部周辺にはあまり宿がないので、城崎温泉か香住が事実上の目的地という印象もあります。香住で途中下車した場合は、前途無効(香住~餘部間無効)となります。
城崎エリアから鳥取方面へ抜けられるフリーきっぷはありませんが、土休日に城崎や香住に宿泊して、周辺を観光する場合は、「夢但馬周遊バスたじまわる」の1日乗車券(500円)と組み合わせると便利そうです。
往復で異なるルートを選べるので、「こうのとり」と「はまかぜ」を片道ずつ利用すると楽しみが増えそうです。
東舞鶴
東舞鶴へは、京都から山陰線特急「まいづる」を利用します。途中、西舞鶴駅で途中下車することができます。
西舞鶴から、京都丹後鉄道のフリーきっぷを活用すると楽しめそうです。いまなら「もうひとつの京都 周遊パス 海の京都エリア」が丹鉄全線のほか、丹後海陸交通のバスなどに乗車でき、天橋立周辺の観光に便利です。1日券が2,200円、2日券が3,000円です。
東舞鶴から小浜線の青郷まで別運賃240円を払えば、上述「北陸おでかけパス」(1日2,580円)につなぐことも可能です。
白浜
白浜へは、紀勢線特急「くろしお」を利用します。南紀方面は現地で接続できそうな鉄道フリーきっぷはなく、明光バスの「白浜とくとくフリー乗車券」(1日1,100円など)があるくらいです。
青春18きっぷなどと組み合わせる方法もありますが、新宮方面へ向かってしまうと、そのまま三重県方面に抜けたくなるのが人情で、「サイコロきっぷ」を往復で活用しづらくなります。そうした意味で、白浜は、鉄道やバスを乗り歩くには、やや中途半端な行き先です。
したがって、白浜エリアに宿泊して楽しむ観光がメインの使い方になるでしょう。白浜は、どちらかといえばファミリーやグループ向けの観光地ですので、一人旅で「白浜」が当たってしまうと、ちょっと使いにくいかもしれません。
倉敷
倉敷へは、岡山まで山陽新幹線を利用します。「のぞみ」「みずほ」も利用できます。岡山では途中下車もできます。
岡山エリアでは、「setowa」のフリーパスが設定されています。「setowa岡山ワイドパス」(4,200円)なら、有効期間が3日間ですので、「サイコロきっぷ」との相性は抜群です。岡山周辺エリアの鉄道・バス乗り歩きがはかどりそうです。もちろん、倉敷で観光地巡りをするのよさそうです。
尾道
尾道へは、山陽新幹線を利用します。山陽新幹線は福山まで利用できます。「のぞみ」「みずほ」も利用できます。
尾道から先は「setowa広島ワイドパス」(3日間、4,600円)や「setowa広島イーストパス」(2日間、3,600円)が使えますので、「サイコロきっぷ」とあわせて広島エリアの乗り回りができそうです。
下図は、「setowa広島ワイドパス」のフリーエリアです。
博多
博多へは、山陽新幹線を利用します。「のぞみ」「みずほ」も利用できます。5,000円のサイコロきっぷで、博多まで新幹線で往復できるのなら、あとは何をしてもお得です。
「旅名人の九州満喫きっぷ」(3日間11,000円)などで、九州旅行を楽しむのもよさそうです。
他の楽しみ方も
とにもかくにも往復5,000円、片道2,500円相当で、新幹線・特急を使った往復旅行ができるのでどこが行き先になってもお得なきっぷに違いありません。
ここでは現地のフリーきっぷと組み合わせる旅行法を提案してみましたが、もちろんその他の楽しみ方もあるでしょう。
早めにエントリーすれば、行き先が決まってから出発まで十分な時間があります。工夫次第で、夏休みにお得で充実した旅ができそうです。(鎌倉淳)