稚内・サハリン航路存続のため新会社を設立へ。稚内市長が表明。ハートランドフェリーは撤退

存続が危ぶまれていた稚内とサハリン・コルサコフを結ぶフェリー航路について、稚内市の工藤広市長が、新たな運航会社を設立して航路を存続する考えを表明しました。現在運航しているハートランドフェリーは2015年度限りで撤退する意向を表明しており、2016年度以降の運航を新会社が引き継ぎます。

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旅客輸送のピークは2006年度

サハリン航路は「日ロフェリー」とも呼ばれ、稚内とコルサコフの間約160kmを約5時間半で結びます。戦前は「稚泊航路」と呼ばれたルートです。現在の日ロフェリーは1995年に開設され、夏季のみ運航、2015年は6月9日~9月18日にかけて28往復します。

旅客輸送のピークは2006年度で、同年は6681人を運びましたが、2014年度は4438人となっています。貨物については2005年がピークで7025トン、それが2014年には906トンにまで落ち込んでいます。

もともと赤字航路で稚内市が補助金を出してきましたが、旅客・貨物の輸送の落ち込みを受けて、2010年にハートランドフェリーが撤退を示唆。稚内市が2011年度から5年間、同航路に最大年5,000万円を補助することを決定し、運航が継続されてきました。この補助制度は2015年度で終了しますが、ハートランドフェリーは補助金の拡大がなければ運航を継続できないとして、撤退の意向を表明しています。そのため、サハリン航路そのものが廃止されるのでは、と危ぶまれてきました。

写真:稚内市写真:稚内市

第三セクターで新会社設立か

これに対し、稚内市は、航路存続へ向け国や北海道へ補助金拡大の支援を要請してきました。しかし、色よい返事はもらえず、新会社設立へ方針転換したものです。

工藤市長は、6月16日に開会した稚内市議会の所信表明で、サハリン航路について「定期航路の存続に全力をあげて取り組む」と述べました。その後の全員協議会では「運航主体として運航会社を設立しなければならない」としたうえで、「遅くとも9月の(ハートランドフェリー)運航終了までに最善を尽くす」との方針を示したとのことです。

運航のための新会社は「市と経済界が出資して官民で進める」とし、第三セクターの形を取る方向性を示しましたが、詳細は未定です。船体については、ハートランドフェリーが運航中の貨客船「アインス宗谷」を買い取る協議を進めているそうです。

運航期間を夏季以外に拡大へ

運航を新会社へ移管した後は、運航体制や運航期間も見直し、現在の夏季3ヶ月以外の時期にも運航する構想です。そのため、サハリンからの観光客誘致に力を入れる一方、貨物輸送も増やすため、稚内からの農産物輸出、サハリンからの海産物輸入にも力を入れる方針です。

読売新聞によりますと、工藤市長は「航路は稚内市の将来にとって欠かせない。(戦後)やっと実現した航路であり、いったん閉ざすと(ロシアが)近くて遠い国になる。道北の町にメリットがある形態となるよう検討したい」と述べたということです。

ちなみに、2015年度のサハリン定期航路の第一便は6月9日に稚内を出航しました。この日の便に乗船したのは、日本人が27人とロシア人含むその他外国人7人の34人だけでした。オフシーズンの6月上旬とはいえ、やや少ない気がします。存続方針が出されたことは喜ばしいですが、これを機会に利用者の拡大を図りたいところでしょう。

2015年サハリン航路ダイヤ

2015年度のサハリン航路のダイヤは以下の通りです。北海道とサハリンの時差は1時間です。

稚 内 発   9:00 → コルサコフ着 15:30
コルサコフ発 10:00 → 稚 内 着 14:30

札幌からのバス「はまなす号」を利用すると、以下のように接続します。

札幌大通23:00→05:30稚内港09:00→コルサコフ15:30
コルサコフ10:00→14:30稚内港16:40→22:30札幌大通

帰路は、稚内16:49発特急「スーパー宗谷4号」も利用可能です。その場合の札幌着は21:55です。

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