北海道・稚内市とロシアのサハリン・コルサコフ(旧大泊)を結ぶサハリン航路で、運航継続のため新会社が設立され、4月~12月のほぼ通年運航が計画されていることがわかりました。稚内市が新会社の事業計画を市議会に提出して、その内容が明らかになりました。
ハートランドフェリー撤退の受け皿に
サハリン航路は「日ロフェリー」とも呼ばれ、稚内とコルサコフの間約160kmを約5時間半で結びます。戦前は「稚泊航路」と呼ばれたルートです。現在はハートランドフェリーが運航していますが、採算が取れないとして、2015年度限りで撤退する意向を表明しています。その運航を第三セクターの新会社が引き継ぎます。
日本経済新聞北海道版10月2日付によりますと、稚内市と民間企業が出資する第三セクターを資本金3億円で設立、運航は船舶管理会社に委託します。ハートランドフェリーが保有する船体「アインス宗谷」を4億1000万円で買い取り、2016年度から運航開始します。購入費用は北海道や稚内市が助成します。
2015年度は6月~9月の4ヶ月間のみの運航で、年28往復でしたが、これを4月~12月に拡大、年75往復を検討しています(2016年度は6~12月の50往復)。乗客確保のため、ロシア人向けに72時間のビザを免除する仕組みも検討しているようで、船内や稚内市内の免税店の充実も図ります。こうしたことで、旅客を2015年度の4,401人から5年後に7,500人に増やすとしています。
写真:稚内市
貨物を15倍に増やせるか?
それだけではとても採算はとれないので、貨物の利用増に力を入れます。道北の農産物の輸出や、サハリンの水産物の輸入をしやすくするため設備や体制を整え、192トンの貨物取扱量を6年後に3,000トンに増やす計画です。15倍増です。
旅客についてはともかく、貨物については「そんなに増えるの?」という意見もあるでしょう。それでも工藤広稚内市長は、「収支は厳しいが、運航継続は可能だと判断した」と強調したそうです。
稚内市の強い思い
率直な感想をいえば、「運航継続のために計画の帳尻を合わせた」感は否めません。それでも工藤市長が運航継続にこだわるのは、「戦後やっと実現した航路であり、いったん閉ざすと再開が難しくなる」という強い思いがあるからのようです。
サハリン航路は戦前の稚泊航路の流れを汲みます。稚内市民にとって、採算面だけで切り捨てられない側面があるのは、部外者にも何となく理解できます。そして日ロ間の国境を結ぶ大切なルートであるのも事実です。新会社での成功を祈りたいところです。(鎌倉淳)