東海道新幹線「S Work車両」を使いたい? テレワーク向け、車内通話が可能に

お互い我慢する空間?

東海道新幹線「のぞみ」全列車に「S Work車両」が設置されます。テレワーク向けの客室で、通話やウェブが会議OK。JR東海の新サービスは、定着するのでしょうか。

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「S Work車両」

JR東海は、東海道新幹線「のぞみ」の7号車をテレワーク向けの車両とすることを発表しました。「S Work車両」と名付け、客室での携帯通話やウェブ会議を解禁。ビジネスパーソンが車内で仕事をしやすくします。

N700Sで運行する列車では、さらにサービスを追加。「S Wi-Fi for Biz」という新しいWi-Fiサービスを導入します。「S Wi-Fi for Biz」は、従来の車内Wi-Fiに比べ通信容量を2倍にし、利用時間の制限をなくします。

そのほか、N700S車両では、ビジネスサポートツールも無料で貸し出します。パソコン画面ののぞき見防止の簡易ついたてやUSB充電器、小型マウスなどが用意されます。

これにより、「のぞみ」7号車では、気兼ねなくパソコンのキーボードを叩いたり、高速Wi-Fiにつないでウェブ会議をしたり、といった作業が可能になります。

N700Sは全座席にコンセントを装備しているほか、「S Work車両」では、USB充電器の貸し出しがあるので、バッテリーの心配もありません。

SWork車両
画像:JR東海

「ビジネスブース」も試験導入

「S-Work車両」はEXサービス専用商品とし、エクスプレス予約またはスマートEX会員のみ利用できます。駅の窓口や券売機で、この車両の指定券を買うことはできません。価格は通常のEXサービスの普通車指定席の価格と同額です。

サービス開始は2021年10月1日。N700S の新Wi-Fiやビジネスサポートツールの貸し出しは10月以降順次開始します。

さらに2022年4月以降には、N700S車両で「ビジネスブース」を試験的に導入します。7号車と8号車の間にある喫煙ルームを改造して新設。ビジネスブースは、打ち合わせなどの目的で、一時的に利用することができます。

これに先立ち、東海道・山陽新幹線(16両編成)では、7~8号車間の喫煙ルームを廃止します。

Sworkビジネスブース
N700Sビジネスブース(イメージ)画像:JR東海プレスリリース
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駅にビジネスコーナー

「S-Work車両」のほかにも、JR東海では、東海道新幹線利用者のビジネス環境を整えていきます。東京駅、名古屋駅、新大阪駅の一部の待合室に、無料の半個室タイプのビジネスコーナーとコンセントポールを整備。2021年9月以降、順次整備していきます。

ビジネスコーナーは東京駅と名古屋駅が5席、新大阪駅が4席。コンセントポールは、東京駅が3箇所、名古屋駅と新大阪駅が5箇所です。

SWorkビジネスブース
ビジネスコーナー(イメージ)。画像:JR東海プレスリリース
コンセントポール
画像:JR東海プレスリリース

ワークスペースも

駅周辺でのワークスペースの確保もすすめます。個室型のワークボックスを東京駅、名古屋駅、京都駅、新大阪駅に各2台設置します。一人で作業をしたり、ウェブ会議をするのに使えます。

また、東京駅直結の丸ノ内中央ビル内に、オフィス型のワークラウンジを設置します。複数人での打ち合わせが可能です。これらもEX会員向けのサービスで、2021年12月以降、整備していきます。

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通話解禁

簡単にいうと、JR東海が、東海道新幹線の列車内と主要駅周辺にワークスペースを整えていくわけです。オンラインミーティングの普及で出張需要が減っていくなか、ビジネスパーソンが仕事をしながら移動しやすい環境を整えることで、利用者を増やしていこうという取り組みとみられます。

客室内通話などができるビジネス向け車両は、JR東日本が東北新幹線で、JR九州が九州新幹線で、それぞれ「リモートワーク推奨車両」として試験的に導入したことがあります。本格導入は東海道・山陽新幹線が初めてです。

なかでも注目点は、新幹線客室内での通話解禁でしょう。新幹線の乗車時間は1~3時間に及びますので、その間に客室内で通話できないのは不便、デッキでは落ち着いて通話できない、という声は以前からありました。そうした要望に応えるサービスといえます。

また、パソコン作業は、これまでの新幹線車内で禁止はされていませんが、打鍵音が大きくならないよう、周囲に遠慮しなければなりませんでした。「S Work車両」では、遠慮なくパソコンを打ちまくれるので、その点を歓迎する人も多そうです。

お互い我慢する空間

「S Work車両」について、JR東海は、「ビジネスという同じ目的でご利用になるお客様同士、気兼ねなく仕事を進めていただくことを想定」しており、「パソコンの打鍵音、携帯電話、Webミーティングの通話音等、仕事を進めるうえでの最低限の作業音はお客様同士相互に許容いただいたうえでご利用ください」と断りを入れています。

逆にいえば、「S Work車両」は、客室内での通話やウェブ会議を、お互いに我慢する空間ということになります。そうした空間を使いたいと思う利用者がどの程度いるのかわかりませんが、少なくとも新幹線車内で仕事をしたいという需要は少なからず存在するでしょう。

気になるのは、この車両ができてしまったことで、一般車両でパソコンを使いづらくならないか、という点です。将来的に、「パソコンを利用の方は7号車をご利用下さい」なんてことにならなければ良いのですが。(鎌倉淳)

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