JR北海道が単独では維持困難とする留萌線について、一部区間の存続の場合、地元自治体の負担額が年3億円になることが明らかになりました。
留萌市は廃止に同意
JR留萌線は、深川~留萌間50.1kmを結ぶローカル線で、JR北海道が単独では維持困難として廃止を求めています。2020年8月には、沿線4市町のうち留萌市が市内区間の廃線に同意。沼田、秩父別、深川の3市町が深川市~沼田町間の部分存続を求める姿勢を示していました。
JRと沿線自治体は、この問題を話し合う会合を2020年10月1日に開催。会合は非公開で行われましたが、各社報道によりますと、自治体が深川~恵比島間の存続を求めたのに対し、JRは、深川~石狩沼田間を維持すれば年間約3億円の赤字が生じるとし、自治体が負担するよう提案しました。恵比島まで存続なら3億円以上になります。
さらに、JRは一部区間廃止による終着駅の変更で踏切工事などの費用が4000万円かかるとし、その負担も自治体に求めました。自治体側は今後、持ち帰って検討します。
200人を上回るか
留萌線の2018年度の輸送密度は137ですが、自治体側からは、深川~石狩沼田間に限れば、輸送密度が1日200人を上回るのではないか、という指摘も出たそうです。
JRは廃止の目安として200人を示してきた経緯もあり、上回るなら「単独で維持困難」の根拠に論点が広がる可能性があります。指摘を受け、JRは区間の輸送密度について調査する方針を示しました。
ただ、個別区間の輸送密度で切り取ると、他の区間も含めきりがないため、JRが部分的な数字だけで廃止方針を変更することはなさそうです。
自治体には厳しい金額
留萌線は2018年度に6億6000万円の営業損失を出しています。自治体が存続を求める深川~恵比島間の距離は20.7kmで、全体の約4割。それを維持するために年3億円の負担を自治体に求めるというのは、理解できる範囲の数字です。折り返し地点の変更による改修工事費用が4000万円というのも、高いとまではいえません。
ただ、年間3億円を3つの自治体で負担しようとするならば、年1億円。国も道も、この区間の赤字に関して補助する姿勢を見せていませんが、仮に北海道が補助したとしても5,000万円、国が足並みを揃えたとしても2,500万円です。地方の基礎自治体には厳しい金額です。
恵比島折り返し?
自治体側の姿勢には疑問を感じる部分もあります。たとえば、存続を求める区間が「深川~恵比島」と明らかにされましたが、恵比島駅の1日の乗車人員は1.8人(2014年~2018年の平均)、その手前の真布駅は2.0人(同)に過ぎません。
真剣に存続を検討するなら、石狩沼田~恵比島間は含めずに、深川~石狩沼田間のみに絞るべきでしょう。恵比島駅は沼田町の北限駅なので「一部存続区間」に含まれたようですが、1日に2人しか利用しない駅まで路線を維持する必要性は感じられません。こうした提案をしていては、協議の引き延ばしを図っているだけと思われても仕方ありません。
地方ローカル線の存続には、地元自治体が鉄路の維持を真剣に考えなければならない時代です。留萌線に関しても、部分存続を目指すなら、もう少し前向きな提案を聞きたいところです。