「ライドシェア」解禁の概要。2024年4月実施、白タクは取り締まり強化へ

「デジタル行財政改革中間とりまとめ」を読み解く

「ライドシェア」が2024年4月に条件付きで解禁されます。タクシー会社が車両不足の地域や時間帯に限って運行できるようにするものです。二種免許の外国語試験の導入や、白タク取り締まり強化の方針も示されました。概要をみてみましょう。

広告

デジタル行財政改革会議

政府のデジタル行財政改革会議は、2024年12月20日の会合で、「デジタル行財政改革中間とりまとめ(案)」を公表しました。

出席した岸田文雄首相は、「全国各地で深刻となっている地域交通の課題を踏まえ、新たな運送サービスを24年4月から開始する」と宣言。とりまとめでは「不足している移動の足を地域の自家用車自家用車や⼀般ドライバーを活かしたライドシェアにより補う」と明記され、ライドシェアを解禁する方針が示されました。

ライドシェア解禁
画像:デジタル行財政改革中間とりまとめ(案)


 

地域の自家用車やドライバーを活用

「デジタル行財政改革中間とりまとめ(案)」では、交通の課題について、「人口減少、高齢化、過疎化が進む中、タクシー・バス等のドライバーのなり手不足が深刻化」しているとし、「タクシー・ドライバーは15年の間に約40%減少。都市部においても、時間帯によってタクシーがつかまらない」という現状を指摘しました。

さらに、インバウンドが2023年10月に252万人に達し、単月でコロナ前を上回った状況を挙げ、「観光地において地域住民の移動に影響」が出ている状況も問題視。「タクシーの供給回復に加え、地域の自家用車やドライバーの活用が急務の課題」としました。

広告

4つの方針

こうした状況を背景に、「とりまとめ」では、タクシー不足に対応する新たな方針として、以下の項目を明らかにしました。

・タクシー・ドライバーの確保のための規制緩和(2種免許の要件緩和、地理試験の廃止等)を行う。

・不足している移動の足を地域の自家用車や⼀般ドライバーを活かしたライドシェアにより補うこととし、すみやかにタクシー事業者の運行管理の下での新たな仕組みを創設し、2024年4月から開始する。

・地域公共交通会議等の協議において地方自治体の長が判断できるよう制度の改善を図るなど、自家用有償旅客運送制度を2023年内から大幅に改善する。

・タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024年6月に向けて議論を進めていく。

広告

事業者、地域、時間帯を限定

2024年4月からライドシェアを行えるのはタクシー事業者のみです。運賃はタクシーと同じとし、ダイナミックプライシング(変動価格制)は採用しません。

地域や時間帯も限定します。タクシー配車アプリのマッチング率などのデータを使い、客観的な基準を定めます。データでタクシーが不足する地域や時間帯を特定した上で、それを超えれば運行を認める方向です。

ライドシェア配車アプリデータ
画像:デジタル行財政改革中間とりまとめ(案)

配車アプリ導入が進んでいない地域では、無線配車の状況や関係者へのヒヤリングで不足状況を分析し、不足している地域や時間帯で運行を認めます。

都市部では朝の通勤時間帯や雨天時、鉄道の運休時、大型イベントの開催時などを想定します。観光地では観光客が多い時期や時間帯などが考えられます。

車両整備や運行管理、ドライバー教育、運送責任はタクシー会社が負います。安全性確保や事故時の補償に関する懸念を踏まえた措置です。雇用関係については雇用契約に限らず検討し、労働条件など担い手確保に必要な要素を考慮します。

広告

二種免許を外国語で

このほか、「とりまとめ」で示された方針のうち、「タクシー・ドライバーの確保のための規制緩和」では、タクシー運転手登録の際に課されている地理試験を2023年度中に廃止します。運転手に義務付けられる10日間の研修要件も見直します。

さらに、外国人のドライバーへの積極的な採用を可能とするべく、2024年4月以降に行う第二種免許試験を20言語に多言語化して実施することを可能とします。あわせて、「違法な白タクの取締りを強化する」ことも明記しました。

外国語での二種免許試験解禁は、外国人タクシードライバーを増やすための施策とも受け止められますが、需要の高いインバウンド送迎にも対応できます。

横行するインバウンド向け白タクの摘発を強化する一方で、外国人の二種免許ドライバーを増やし、インバウンド送迎を合法的に実施しやすくする側面もあるでしょう。

広告

自家用有償旅客運行も緩和

「自家用有償旅客運送」も見直します。自家用有償旅客運行は、交通空白地において、自治体やNPO法人に限定して有料の送迎を認めている制度です。

交通空白地の要件は、「半径1km以内にバス停・駅がない地域であって、タクシーが恒常的に30分以内に配車されない地域」などとされていますが、新たな方針ではタクシーが不足する夜間など、「時間による空白」の概念も取り込みます。

実施主体については、自治体やNPOだけでなく、受託により株式会社も参加できることを明確化します。観光地においては、宿泊施設が共同で車両を活用することを促進します。

対価の目安については、これまでのタクシー運賃の約半額から、約8割に引き上げます。一定のダイナミックプライシングを導入し、タクシーとの共同運営の仕組みも構築します。

「交通空白地の判断」や「運賃」などについて地域公共交通会議などでの調整が困難になった場合は、首長が判断できるように見直します。

このほか、道路運送法の許可・登録の対象外の運送(無償運送)について、アプリを通じたドライバーへの謝礼の支払いが認められることも明確化します。これは、いわゆる「割り勘相乗りアプリ」を念頭に置いた措置のようです。

広告

議論はこれから本格化?

簡単にまとめると、タクシー不足に対する当面の措置として、ライドシェアの一部解禁と、自家用有償旅客運送の柔軟化で対応することになります。

タクシー事業者以外のライドシェアについては、2024年6月に向けて法制度の策定について議論を進めていくことが明記されています。したがって、ライドシェアをめぐる議論が本格化するのは、むしろこれからかもしれません。

旅行者としては、旅先でタクシーが捕まらず動きがとれなくなる状況が、早く解消されることを願いたいところです。(鎌倉淳)

広告
前の記事多摩モノレール「町田延伸」へ動き出す。まちづくり構想の素案を公表
次の記事「バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅」第18弾は12/27放送。鈴木蘭々、水野真紀が登場!