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丘珠空港をどう活用するか。滑走路延伸など課題を整理

「丘珠空港の利活用に関する検討会議」報告書を読み解く

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札幌市や北海道、有識者などで構成する「丘珠空港の利活用に関する検討会議」が、最終報告をまとめました。報告書を基に、滑走路延伸やジェット機就航など、丘珠空港にまつわる課題を整理してみましょう。

防衛省が設置管理

丘珠空港は、JR札幌駅の北東約5kmに位置する空港です。正式名称は「札幌飛行場」で、防衛省が設置管理し、民間機も利用できる共用飛行場です。1942年(昭和17年)に陸軍航空隊が飛行場を設置したことに始まり、1961年(昭和36年)に公共用の指定を受けました。

札幌中心部から近いため、潜在的な利便性は高い空港ですが、滑走路長が1,500mと短いことや、施設規模が小さいこと、環境問題などから、現在は十分に利活用されているとはいえません。

2017年4月現在の定期航空路線としては、函館、釧路、利尻、三沢、静岡の5空港へ1日13往復が運航しているのみです。そのほか、防災や測量、報道、遊覧飛行などの業務に利用されています。

丘珠空港
画像:丘珠空港ウェブサイト

丘珠空港の制約要因

報告書では、丘珠空港特有の制約要因として以下の4つを挙げています。

1. 滑走路長の制約。1,500m滑走路のため、リージョナルジェット機やメディカルウイング(患者搬送用の固定翼機)が通年運航できない。
2. 発着枠の制約。自衛隊の訓練、地域への騒音、管制上の条件による。
3. 運用時間の制約。市街地に隣接していることから地域への騒音が生じるため。
4. 雪による制約。冬期の除雪対応や降雪時の低視程による。

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滑走路延伸はできるか

このうち、最大の問題点が滑走路長です。現状の1,500m滑走路では、通年運航できる機材はSAAB340BやATR42-600といったターボプロップ機(プロペラ機)に限られます。これを1,800m、2,000mと延ばすにつれ、離発着可能なジェット機材が増えていきます。

丘珠空港の滑走路延伸
画像:丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書

滑走路を1,800mに延伸した場合、DHC8-Q400、ERJ-170/175(ERJ-175は冬期のみ重量制限付き)といった、70席クラスのリージョナルジェット機が通年就航可能となります。概算事業費は約100億~400億円で、滑走路の延伸方向などで変動します。滑走路を両方向へ延伸する場合のみ、大規模な支障物件移転を避けられます。

丘珠空港1800m滑走路
画像:丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書

滑走路を2,000mに延伸した場合、DHC8-Q400、ERJ-170/175が通年就航可能になります。また、B737-800が重量制限付きで通年就航可能となります。しかし、LCC汎用機であるA320-200は通年運航できず、夏季のみです。

2,000m延伸の想定概算事業費は約250億~550億円。どの方向へ延伸する場合でも、大規模な支障物件移転が発生します。

丘珠空港滑走路2000m延伸
画像:丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書

運用時間拡大はできるか

2つめの制約要因である発着枠については、仮に空港施設を整備したとしても、自衛隊管理の空港である以上、自衛隊の訓練に大きな影響が出ないよう協議が必要となります。また、空港周辺地域での騒音環境基準を超えない便数としなければなりません。

3つめの運用時間に関しては、現在は07:30~20:30ですが、本格空港とするならば運用時間拡大が望まれます。1時間の延長でHAC(北海道エアシステム)の現体制では1往復の増便が可能となります。

運用時間拡大が実現すれば、日帰り出張が可能になるエリアが広がるため、出張行程の効率化などの効果が見込まれ、利用者増に貢献するでしょう。しかし、空港周辺地域に対する騒音の配慮や、空港管理者などの勤務体制の確保といった課題があります。

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除雪体制を強化できるか

4つめの雪の問題については、現在の除雪時間は平均約1時間30分かかっています(青森空港では約40分)。除雪時間を短縮・効率化するには、高性能除雪車(1台4,000万円程度)の導入や、除雪作業の一部委託化などが考えられます。

施設面では、進入灯を設置すれば、冬季の着陸時のやり直し回数の減少が期待できるとしています。

丘珠空港にはボーディングブリッジがありませんが、風雪対応として、ターミナルビルと航空機の間に可動式のエプロンルーフを設置することも検討できるとしています。

エプロンルーフ
画像:丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書

地下鉄延伸はできるか

丘珠空港は、市中心部から近いものの、軌道系交通機関がないため、アクセスに難があります。札幌市中心部からの空港アクセスバスは夏季のみで、渋滞の生じやすい冬季は地下鉄東豊線栄町駅の発着となっています。そのほか、路線バスが、栄町駅、麻生駅、中央バスターミナルから発着するのみです。

仮に地下鉄栄町駅から丘珠空港までの1.5kmを新交通システムで接続する場合、概算単価は1kmあたり約50億~90億円と見積もられています。地下鉄を延伸する場合は、1kmあたり約260億円とされます。東豊線を丘珠空港に到達させるには、線形の問題もあり500億円程度はかかりそうです。

地下鉄栄町駅から空港までの移動時間短縮のため、現在「つどーむ」がある付近にターミナルビルを移転するという構想もあります。この場合、約1.5kmあった距離が約400m短縮されます。整備費用として、約23億円必要となります。

こうした課題や制約を前提として、報告書では、丘珠空港の利活用の方向性をさまざまな角度から探っています。

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道内航空ネットワークの拠点空港にする

丘珠空港は観光利用が少なく、ビジネスや医療関係者、通院、帰省等の生活利用が大半を占めるという特徴があります。そのため、生活路線として、道内路線の拡大と運航本数の増加を目指す、という活用方法がまず考えられます。

具体的には、女満別線、中標津線、稚内線の再就航と、現路線の運航本数拡大を目指すことになります。現在、札幌発着の道内路線の多くが新千歳空港に就航していますが、道内・道外路線を乗り継ぐ割合は少ないため、道内路線を丘珠空港が担う余地があるとしています。

道内路線を丘珠空港に集約することは、滑走路延長をしないでも実現できそうです。ただ、新千歳空港に集約しているANAを丘珠に戻すことが可能なのか疑問ですし、丘珠の運用時間拡大や、発着集中時間帯の整理、格納庫の増設などが必要となり、簡単な話ではありません。

道外や国外とを結ぶ都市型空港にする

道外路線や国際線を通年で運航させるというのは、丘珠空港の大きな夢といえます。しかし、そのためには滑走路延長が求められ、ハードルは低くありません。

仮に2,000m滑走路ができたとしても、B737-800やA320-200の発着に制約がある状況では、就航先は限られるでしょう。とくに、期待されるLCCの就航は、汎用機であるA320型機に離発着の制約が残る限り、難しいように思えます。

報告書では、道外路線の本命として、東北新幹線のルートから外れる山形や秋田を挙げています。こうした空港への就航なら、リージョナル機で可能なので、ハード面での実現性はあるでしょう。ただ、十分な需要があるかは別の話です。

国際線についてはどうでしょうか。国際線を就航させるは、国内線との動線分離、出入国管理施設などが必要になりますが、丘珠空港にはスペースの余裕が乏しいですし、運用コストもかかります。滑走路長の短さや機材の関係からも、就航可能な路線は限られるため、現実的ではなさそうです。

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道内医療を支える空港にする

丘珠空港は、医師派遣や通院の利用者の割合が多いとされます。報告書では、この特徴を活かすため、医師派遣で翌日の診察に間に合う夜間便の運航や、患者の多い離島路線の維持存続が重要となる、としています。

このほか、ドクターヘリ(救急搬送)、メディカルウイング(都市部病院までの搬送)を運用することで、地域医療体制の充実が図られるとも記されています。

医療対応を充実させるには、格納庫の整備や、除雪体制の強化のほか、バリアフリー化も求められます。そのため、制限区域内へのエレベーターや、エプロンルーフの整備を提言しています。また、1,800m滑走路が実現すれば、機材の選択肢が増え、メディカルウィングが活用しやすくなります。

防災機能を持つ空港にする

丘珠空港は自衛隊との共用空港のため、防災機能を充実させるという方向性もあります。現在、陸上自衛隊北部方面航空隊、北海道防災航空室、北海道警察航空隊が、丘珠に拠点を置いています。

報告書では、これにくわえ、石狩に拠点を持つ札幌市消防航空隊を丘珠空港へ配備し集約することを提言しています。

防災機能の強化には、格納庫の確保、空港ビルや滑走路の耐震性の向上が必要になります。また、通信環境の整備や大規模災害発生時の24時間運用も考慮しなければなりません。前述の医療拠点としての整備とあわせて検討されるべき課題といえます。

丘珠空港空撮図
画像:丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書

ビジネスジェット機利用に対応する空港にする

丘珠空港は、発着が混雑しておらず、クルマによる都心アクセス性が高いことから、ビジネスジェット機を積極的に受け入れる案もあります。

そのためには、駐機場、格納庫、専用ラウンジなどのハード整備、専用の地上運航支援事業者によるソフト面の受け入れ体制の構築が必要になります。

富裕層の観光利用などで経済効果が見込めるものの、丘珠空港には現状で専用施設が全くないうえに、スペースも限られるという制約があります。また、現状の滑走路長では、冬季はビジネスジェット機といえども離発着が困難です。

報道・測量等で利用する小型航空機基地空港にする

丘珠空港は、報道や、各種施設の維持・点検などの業務を目的とする小型航空機の拠点として利用されています。報告書では、この強みを活かして、さらなる企業誘致も提言されています。

市街地中心部からの近さが強みですが、駐機スペースや格納庫が限られることが課題となります。

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ポイントは滑走路延伸

長々と書きましたが、報告書の最大のポイントは、やはり滑走路延伸でしょう。

2,000m滑走路を整備するには、大規模な物件移転が必要になりますが、実現したとしてもB737-800やA320-200の就航には支障があります。いっぽう、1,800m滑走路でも70席クラスのリージョナルジェット機が就航できますし、大規模な物件移転が生じないのであれば、自ずから1,800mが結論として見えてくると思います。

ただ、その場合も、騒音を危惧する周辺住民の理解が得られるかは微妙で、政治家や行政が真剣に取り組まなければ、実現は難しそうです。

また、航空路線が増えれば、格納庫の整備や駐機スペースの拡大が求められますが、空港面積の制約という課題が待ち受けます。

空港アクセスは整備できるか

滑走路延長をしない場合は、医療や防災拠点としての整備をしつつ、道内便の充実を図るくらいしか方策はなさそうです。この場合、旅客機については、これまでと大差ない形になると推察します。

空港アクセスの改善については、空港機能がどの程度、強化されるかがポイントになりそうです。

地下鉄の延伸は、線形的にも費用面でもハードルが高く、新交通システムの整備も難しそうです。空港の旅客ターミナルを地下鉄駅寄りに移転させて、動く歩道付きの地下道でつなぐくらいが、現実的な最善手に思えます。

潜在的な利便性の高さを持っている丘珠空港ですが、こうして制約や課題を見ていくと、そのポテンシャルを活かしきるのは、なかなか難しいと感じずにはいられません。(鎌倉淳)


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