小田急が2022年3月12日ダイヤ改正の概要を発表しました。VSEの運行を廃止し、「はこね号」を減便するほか、急行なども削減します。発表内容を読み解いていきましょう。
VSE定期運行終了へ
小田急の2022年3月ダイヤ改正で最も驚かされたのは、特急ロマンスカー・VSE50000形の定期運行終了です。真っ白な車体に広々とした展望席を設け、ロマンスカーのなかでも別格の存在感を示してきたVSE。2005年に運転開始した車両ですから、車齢は17年にすぎず、引退にはやや早い気がします。
小田急は運行終了の理由として車両の経年劣化や主要機器の更新困難を挙げていますが、それに加えてホームドアに対応しづらいことも問題だったのでしょう。VSEは連節車で1両あたりの車両長が短く、ドア位置が他の車両と大きく異なるからです。
小田急は2022年度以降にホームドアの設置を本格化しますので、そのまえにVSE引退という流れになったとみられます。ダイヤ改正後は、イベント列車などでの運行をおこない、2023年秋頃に完全引退する予定です。
「はこね号」大削減
VSEの引退にあわせて、ダイヤ改正では特急ロマンスカーの運行本数が見直されます。
大きく削減されるのは、新宿~箱根湯本間の「はこね号」と「スーパーはこね号」。平日1日上下45本を30本に削減。土休日も51本から39本に減らします。
一方、新宿~小田原などで運転される「さがみ号」は平日12本を15本に、土休日は5本から12本に増やします。新宿~片瀬江ノ島の「えのしま号」は平日3本から4本に、土休日は11本から14本に増便します。
新宿~御殿場の「ふじさん号」は、平日6本は変わらず、土休日は8本から6本に減便します。
平日日中時間帯の特急の所要時間は短縮し、海老名→新宿では現行46分が38分になります。海老名以西では、伊勢原、秦野に停車する列車を増やします。
「モーニングウェイ」増発
平日朝の特急ロマンスカーについては、「モーニングウェイ号」を3本増発。町田駅に停車する列車を増やします。
夕夜間の特急ロマンスカーについては、17時以降に出発する下り「はこね号」(2本)や「さがみ号」(1本)を、全て「ホームウェイ号」とします。
また、平日「メトロホームウェイ号」の運転時刻を1時間繰り上げます。22時以降に新宿を出発する「ホームウェイ号」を6本(土休日5本)から3本に削減します。
新宿発の小田原方面「ホームウェイ号」は海老名に、千代田線から入線する「メトロホームウェイ号」は成城学園前に全て停車します。
日中の急行削減
特急以外のダイヤについては、6~7時台に運転する小田原・新松田発相模大野行き急行を5本減便します。かわりに、本厚木始発としていた各駅停車と通勤準急各1本を秦野・伊勢原始発として運転区間を拡大します。
日中時間帯では、毎時3本設定されている新宿発新松田行き急行を町田発小田原行き急行(新松田~小田原間各停)に置き換えます。新宿~町田間の運行を取りやめるということです。
かわりに、メトロ千代田線から入線する準急を急行として、向ヶ丘遊園まで運転します。つまり、新宿~代々木上原間と向が丘遊園~町田間で急行が毎時3本削減され、代々木上原~向が丘遊園間で毎時3本の準急が削減されることになります。
毎時3本運転されている新宿発唐木田行き急行は存続しますが、多摩線内は各駅停車となります。そのぶん、毎時6本の多摩線内各駅停車は3本に削減されます。多摩線内の速達サービスが日中時間帯はなくなります。
日中時間帯の運転本数は、以下のように変わります。
夕夜は10分間隔に
夕・夜は、18時~21時頃に新宿を出発する各駅停車を毎時8本から6本に変更します。メトロ千代田線から直通する列車も8本から6本に変更し、種別を準急に統一します。10分間隔のダイヤになるようです。
新宿発江ノ島線方面の急行を快速急行に、多摩線方面の快速急行を急行に変更し、一部運転本数を見直します。
夕夜に経堂を通過していた急行が、終日経堂に停まるようになります。経堂・成城学園前における準急・各駅停車との接続を改善します。
詳細がはっきりしませんが、夕夜はダイヤの整理が行われそうです。
土休日
土休日は、終日にわたり、平日日中と概ね同じダイヤで運行しますが、利用の多い時間帯は平日より増やします。
具体的には、新宿~町田間・多摩線で、10時~12時頃までの上りと、16時~19時頃までの下りを、毎時3本運転します。
また、藤沢~片瀬江ノ島間で、9時~12時頃と16時~18時頃に、毎時1本を運転します。
藤沢~片瀬江ノ島系統分離
藤沢~片瀬江ノ島間は、特急列車を除き、原則として各駅停車による折返運転のみに変更します。このため、新宿~片瀬江ノ島間の快速急行のような列車は、新宿~藤沢間の運転となります。藤沢駅では、各駅停車の発着番線を変更します。
要は、藤沢~片瀬江ノ島間と藤沢以北とを、系統分離するわけです。運行定時性の向上と車両運用の効率化を目的としているそうですが、小田急沿線から江ノ島に行くのに不便になるのは間違いありません。
寂しい改正
以上が、2022年3月小田急ダイヤ改正の概要です。2018年の複々線化の完成で充実した運転本数を、わずか4年で大削減することになり、利用者も関係者も残念でしょう。
VSEの削減はホームドア整備という側面があるものの、それが箱根特急の運転本数削減につながっているあたりに、厳しさを感じさせます。
新型コロナウイルス感染症による利用者減という現実に対応するために、やむを得ない減便であることは理解できます。とはいえ、寂しさを覚えずにはいられません。(鎌倉淳)