小田急回数券に表紙の持参義務。「小田急チケット10」で使い勝手はどう変わる?

改善か改悪か

小田急が新たな企画回数券「小田急チケット10」を発売します。「表紙券」の持参を義務づけたのが大きな特徴です。利用者にはどのような影響が生じるのでしょうか。

広告

10回セットの回数券

小田急電鉄は、2020年4月1日より、企画回数券「小田急チケット10」を発売すると発表しました。10回分セットの回数券で、有効期間は2か月です。

レギュラー、オフピーク、ホリデーの3種類を設定します。レギュラーは終日利用可能、オフピークは平日10~16時と土休日・年末年始の終日、ホリデーは土休日・年末年始の終日に利用可能です。

「小田急チケット10」は1枚づつ使えますが、利用時には「表紙券」を持参することが条件です。複数人で使う場合は、一人が表紙券を持っていれば同時利用可能です。

払い戻しは、全券片未使用時(表紙券含む)に限り、発売価格から220円の手数料を差し引いた額を払いもどします。

これまでの11枚綴りの回数乗車券(回数券)は2020年3月31日を以て発売を終了します。障害者および通学割引の回数乗車券は、特殊割引回数乗車券として引き続き販売します。

小田急チケット10
画像:小田急電鉄プレスリリース
広告

2%程度の値下げ

「小田急チケット10」は、1枚当たりの価格がこれまでの回数券よりおおむね安く設定されています。

割引率は区間により異なりますが、130円区間を例に取ると、1枚当たり118円が115円になり、約2.5%の値下げとなります。370円区間の場合、1枚当たり336円だったのが343円となり、約2%の値下げです。

一部、割引率の変わらない区間もあります。

小田急チケット10
画像:小田急電鉄プレスリリース

金券ショップ対策

「小田急チケット10」は、回数券を少しばかり値下げするかわりに、有効期間が短縮され、表紙券を持参しなければならなくなったというのが、大きな変更点です。ただ、磁気券なので自動改札は表紙券なしでも通過可能で、表紙券の持参義務にどこまで実効性があるかは不透明です。

小田急では、「ご利用の際に、表紙を確認させていただくことがあります」としていますが、現実問題として、自動改札を通れるなら、表紙券の持参確認を徹底することは不可能に思えます。ならば、個人購入の利用者が煩雑になることはなさそうです。

一方で、形式的に表紙券の持参義務を課すことで、金券ショップはバラ売りをしにくくなるでしょう。そう考えると、建前と本音を使い分けた、芸の細かい金券ショップ対策に思えます。

小田急チケット10
画像:小田急電鉄プレスリリース
広告

金券ショップユーザーには改悪

ということで、回数券を駅で購入して、毎週のように日常利用している人には、2%程度であっても値下げは嬉しいことですし、大きな利便性の悪化はなさそうです。10枚綴りなら5往復で使い切れますので、週1回の利用でも有効期間が2か月あれば十分でしょう。

一方で、2週間に1度利用する程度の人には、2か月の有効期間はちょっと短いかもしれません。また、家族でシェアして使っていた家庭では、表紙券の持参義務は、形式的であっても面倒に感じられるかもしれません。

金券ショップを頻繁に利用している人からみると、ばら売り回数券が入手がしづらくなる可能性が高くなりそう。となると、改悪に感じられるでしょう。

もう少し広い目で見ると、近年のICカードの普及にともない、磁気券回数券の改革が、鉄道各社で少しずつ進んでいます。将来的に、回数券がなくなったりしないことを願いたいところです。(鎌倉淳)

広告